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名古屋地方裁判所 昭和44年(ワ)3334号 判決 1972年10月19日

目次

主文

事実《省略》

第一、当事者の求める裁判

一、二

第二、当事者の主張

(原告らの請求の原因)

一ないし六

(請求の原因に対する答弁、被告の主張)

一ないし八

(被告の主張に対する認否)

第三、証拠

理由

第一、当事者

一、(一)(二)

二、

第二、侵害行為

一、被告の行為

(一) 被告設立と操業の経過

1ないし11

(二) 被告工場の操業による公害の発生とその防除措置

1

2(1)ないし(4)

二、本件ばいじん・騒音・振動とその測定結果

(一) 1ないし3

(二) 1ないし3

三、因果関係

(一) 因果関係についての考え方

(二) 本件ばいじん汚染と被告工場の発生するばいじんとの因果関係

1ないし9

(三) 騒音、振動について

1ないし3

四、原告らの被害

(一) 総論

1ないし3

(二) 各論

1ないし3

五、

第三、違法性(受忍限度)

一、総論

(一) 受忍限度と公法上の基準

(二) 公法上の基準

1ないし3

(三) 本件ばいじん、騒音、振動の性質、人体への影響

1ないし3

(四) 原告ら被害居住地附近の状況

(五) 先住関係

二、各論

(一) ばいじんについて

1ないし3

(二) 騒音について

1ないし3

(三) 振動について

1、2

第四、責任

一、愛知県および名古屋市の公害対策担当部・課の概要

二、原告らの活動、特に被告との交渉の経過、県市の指導および被告の態度

(一) 昭和三六年二月(二号電気炉の稼動)から昭和三九年九月(ばい煙規制法の地域指定)まで

1ないし7

(二) 昭和三九年九月(ばい煙規制法による地域指定)から昭和四四年三月(公害防止対策協定の成立)まで

1ないし12

(三) 公害防止対策協定の趣旨

(三) 昭和四四年三月から現在まで

1ないし6

三、

四、結論

(一)ないし(三)

第五、損害

一なし三

第六、差止請求

一ないし七

第七、被告の主張に対する判断

一、家族および同居者の請求について

二、分割責任について

三、田中勝鉄工所との和解と本訴請求について

四、消滅時効について

第八、むすび

別紙

一、当事者目録

二、証拠目録<略>

別表

一、

二、被告の各公害発生施設<略>

三、本件被害地城におけるばいじん、騒音、振動の各測定結果<略>

S―1ないしS―6

N―1ないしN―11

V―1ないしV―3

四、電気炉による普通鋼生産時のばいじん組成<略>

五、<略>

六、本件ばいじん中に含有される重金属類<略>

七、原告らの蒙つた被害

別図

一、

二、<略>

三、<略>

主文

一、被告は

1原告福永九州男に対し金四七万五、〇〇〇円

2原告福永ミキに対し金四七万円

3原告福永勇に対し金四七万二、〇〇〇円

4原告坂内忠男に対し金五六万円

5原告坂内まつ江に対し金五六万円

6原告宇佐美仙次郎に対し金五五万七、〇〇〇円

7原告宇佐美文雄に対し金五五万七、〇〇〇円

8原告宇佐美美代子に対し金五五万七、〇〇〇円

9原告宇佐美あけみに対し金五六万二、〇〇〇円

10原告宇佐美忍に対し金四七万六、〇〇〇円

11原告土井一晃に対し金五二万二、〇〇〇円

12原告土井節子に対し金五二万二、〇〇〇円

13原告土井麻友美に対し金五二万二、〇〇〇円

14原告土井雅喜に対し金四七万円

15原告土井敏全に対し金四三万三、〇〇〇円

16原告土井茂に対し金二四万七、〇〇〇円

17原告土井へに対し金五二万二、〇〇〇円

18原告宇佐美由春に対し金三二万円

19原告宇佐美久子に対し金三一万八、〇〇〇円

20原告宇佐美幸治に対し金三二万円

21原告宇佐美浩に対し金三二万円

22原告小園尚雄に対し金二〇万三、〇〇〇円

23原告小園昭美に対し金一九万八、〇〇〇円

24原告小園誠司に対し金二〇万四、〇〇〇円

25原告久田竹治郎に対し金三一万八、〇〇〇円

26原告久田なかに対し金三二万円

27原告久田鎰雄に対し金三二万円

28原告久田栄子に対し金三一万八、〇〇〇円

29原告久田直美に対し金三一万八、〇〇〇円

30原告久田香織に対し金三一万四、〇〇〇円

31原告宇佐美義一に対し金三二万円

32原告宇佐美良一に対し金三二万円

33原告宇佐美政次郎に対し金二〇万八、〇〇〇円

34原告宇佐美清子に対し金二七万五、〇〇〇円

35原告宇佐美紀子に対し金二三万五、〇〇〇円

36原告宇佐美鎌吉に対し金三一万八、〇〇〇円

37原告字佐美ゆきに対し金三二万二、〇〇〇円

38原告宇佐美松男に対し金三二万二、〇〇〇円

39原告宇佐美定子に対し金三〇万四、〇〇〇円

40原告宇佐美勝行に対し金三二万二、〇〇〇円

41原告奥田幸弘に対し金三二万円

42原告奥田勝子に対し金三二万円

43原告奥田喜幸に対し金三一万六、〇〇〇円

44原告奥田美加子に対し金二五万七、〇〇〇円

45原告宇佐美鉐十郎に対し金三二万二、〇〇〇円

46原告宇佐美かぎに対し金三一万八、〇〇〇円

47原告宇佐美英雄に対し金三一万八、〇〇〇円

48原告宇佐美政義に対し金三二万円

49原告宇佐美峰子に対し金三一万八、〇〇〇円

50原告宇佐美淳史に対し金三二万円

51原告宇佐美千代子に対し金三一万八、〇〇〇円

52原告宇佐美鉞一に対し金三一万八、〇〇〇円

53原告宇佐美に対し金三一万八、〇〇〇円

54原告宇佐美浩一に対し金三一万八、〇〇〇円

55原告宇佐美佳代に対し金三一万八、〇〇〇円

56原告宇佐美ジャウに対し金三一万八、〇〇〇円

57原告佐藤善邦に対し金三一万八、〇〇〇円

58原告佐藤あやに対し金三一万八、〇〇〇円

59原告佐藤隆史に対し金三二万円

60原告佐藤政史に対し金三二万円

61原告佐藤清史に対し金三一万八、〇〇〇円

62原告佐藤くにに対し金三一万八、〇〇〇円

63原告大橋平数に対し金三一万八、〇〇〇円

64原告大橋峯子に対し金三二万円

65原告大橋洋子に対し金三二万円

66原告大橋陸平に対し金三二万二、〇〇〇円

67原告大橋喜美に対し金三一万四、〇〇〇円

68原告篠塚孝夫に対し金三〇万二、〇〇〇円

69原告篠塚照子に対し金三〇万円

70原告篠塚泰伸に対し金二四万六、〇〇〇円

71原告林幹夫に対し金三〇万円

72原告林千鶴子に対し金二九万八、〇〇〇円

73原告林誠に対し金三〇万二、〇〇〇円

74原告林つぎに対し金二九万八、〇〇〇円

75原告山田輝子に対し金二九万八、〇〇〇円

76原告山田祐治に対し金二九万八、〇〇〇円

77原告清水角蔵に対し金一〇万二、〇〇〇円

78原告清水千代に対し金二九万八、〇〇〇円

79原告稲森秀子に対し金二八万五、〇〇〇円

80原告毛利賢一に対し金三一万六、〇〇〇円

81原告毛利より子に対し金三一万八、〇〇〇円

82原告毛利正雄に対し金三一万六、〇〇〇円

83原告毛利宮子に対し金二三万四、〇〇〇円

84原告服部実に対し金三〇万四、〇〇〇円

85原告服部艶子に対し金三〇万四、〇〇〇円

86原告服部美津子に対し金三〇万六、〇〇〇円

87原告服部隆に対し金三〇万八、〇〇〇円

88原告奥田兼次郎に対し金三一万七、〇〇〇円

89原告奥田はる子に対し金三一万七、〇〇〇円

90原告奥田比呂子に対し金三一万七、〇〇〇円

91原告原薫に対し金三二万円

92原告原房子に対し金三二万二、〇〇〇円

93原告原清子に対し金三二万円

94原告原茂樹に対し金二八万五、〇〇〇円

95原告高橋末夫に対し金三万四、〇〇〇円

96原告高橋ふみよに対し金三万四、〇〇〇円

97原告高橋ひめに対し金二万円

98原告広内利夫に対し金三一万四、〇〇〇円

99原告広内ヒサ子に対し金三一万八、〇〇〇円

100原告広内雅弘に対し金三〇万六、〇〇〇円

101原告広内豊に対し金三〇万五、〇〇〇円

102原告小原貞雄に対し金三一万八、〇〇〇円

103原告小原節子に対し金三一万八、〇〇〇円

104原告小原信司に対し金二八万円

105原告小原哲之に対し金三一万八、〇〇〇円

106原告坂井田ちよに対し金二六万二、〇〇〇円

107原告坂井田節子に対し金二六万二、〇〇〇円

108原告坂井田一義に対し金二六万三、〇〇〇円

109原告坂井田明典に対し金二六万三、〇〇〇円

110原告木原利敦に対し金三二万二、〇〇〇円

111原告木原ナスエに対し金三一万八、〇〇〇円

112原告木原恵子に対し金三二万円

113原告高田勇一に対し金二二万三、〇〇〇円

114原告高田紀子に対し金二二万円

115原告平本勝也に対し金二五万二、〇〇〇円

116原告宇佐美源治に対し金一九万円

117原告宇佐美七男に対し金二二万六、〇〇〇円

118原告宇佐美昭子に対し金二二万六、〇〇〇円

119原告宇佐美仁克に対し金二二万三、〇〇〇円

120原告宇佐美裕子に対し金二〇万二、〇〇〇円

121原告宇佐美十一に対し金二二万五、〇〇〇円

122原告宇佐美正子に対し金二二万五、〇〇〇円

123原告宇佐美厚美に対し金二二万六、〇〇〇円

124原告宇佐美幸子に対し金二一万四、〇〇〇円

125原告宇佐美善三郎に対し金五万円

126原告宇佐美志やうに対し金一四万八、〇〇〇円

127原告笠原正照に対し金二二万五、〇〇〇円

182原告笠原鶴子に対し金二二万七、〇〇〇円

129原告宇佐美金義に対し金二二万四、〇〇〇円

130原告宇佐美とうに対し金二二万六、〇〇〇円

131原告宇佐美千恵子に対し金二二万四、〇〇〇円

132原告鬼頭清助に対し金二二万四、〇〇〇円

133原告鬼頭秋子に対し金二二万四、〇〇〇円

134原告鬼頭敬子に対し金二二万四、〇〇〇円

135原告鬼頭孝恵に対し金二二万四、〇〇〇円

136原告鬼頭克代に対し金二〇万二、〇〇〇円

137原告山盛実に対し金二二万四、〇〇〇円

138原告山盛重子に対し金二二万四、〇〇〇円

139原告山盛征逸に対し金二〇万三、〇〇〇円

140原告山盛みち子に対し金二一万六、〇〇〇円

141原告山盛賢司に対し金二二万四、〇〇〇円

142原告山盛均に対し金二二万六、〇〇〇円

143原告山盛せつに対し金二一万五、〇〇〇円

144原告清水豊に対し金二二万四、〇〇〇円

145原告清水喜美子に対し金二二万七、〇〇〇円

146原告清水武に対し金二二万七、〇〇〇円

147原告清水さち子に対し金二二万四、〇〇〇円

148原告佐藤春子に対し金二二万六、〇〇〇円

149原告佐藤節子に対し金二二万四、〇〇〇円

150原告佐藤明美に対し金二二万四、〇〇〇円

151原告戸松七五三一に対し金二二万六、〇〇〇円

152原告戸松千代子に対し金二二万四、〇〇〇円

153原告宇佐美弘に対し金二二万五、〇〇〇円

154原告宇佐美やえ子に対し金二二万五、〇〇〇円

155原告宇佐美佳代に対し金二二万八、〇〇〇円

156原告宇佐美義巌に対し金二二万五、〇〇〇円

157原告宇佐美すえのに対し金二二万五、〇〇〇円

158原告久田真一に対し金二二万四、〇〇〇円

159原告久田隆子に対し金二二万円

160原告久田幌に対し金二二万四、〇〇〇円

161原告久田久美子に対し金二二万円

162原告久田裕二に対し金二二万四、〇〇〇円

163原告久田峯興に対し金二二万四、〇〇〇円

164原告山本一夫に対し金二二万三、〇〇〇円

165原告山本志げ子に対し金二二万三、〇〇〇円

166原告山本武志に対し金二二万三、〇〇〇円

167原告磯部幹雄に対し金二二万七、〇〇〇円

168原告磯部つるえに対し金二二万七、〇〇〇円

169原告磯部栄に対し金二二万五、〇〇〇円

170原告磯部智枝に対し金二二万五、〇〇〇円

171原告磯部好作に対し金二二万七、〇〇〇円

172原告磯部なせに対し金二〇万二、〇〇〇円

173原告浅井銕次郎に対し金二二万四、〇〇〇円

174原告浅井と免に対し金二二万四、〇〇〇円

175原告宇佐美研雄に対し金二二万四、〇〇〇円

176原告宇佐美資子に対し金二二万四、〇〇〇円

177原告宇佐美賢次に対し金二二万三、〇〇〇円

178原告宇佐美笑子に対し金二二万六、〇〇〇円

179原告宇佐美知之に対し金二二万三、〇〇〇円

180原告宇佐美明に対し金二二万三、〇〇〇円

181原告宇佐美仁に対し金二二万三、〇〇〇円

182原告宇佐美了に対し金二二万六、〇〇〇円

183原告宇佐美えに対し金二二万三、〇〇〇円

184原告貴船一夫に対し金二二万二、〇〇〇円

185原告貴船笑子に対し金二二万二、〇〇〇円

186原告貴船誠に対し金二二万二、〇〇〇円

187原告貴船みゆきに対し金二二万二、〇〇〇円

188原告貴船修に対し金二二万二、〇〇〇円

189原告野口正夫に対し金二二万四、〇〇〇円

190原告野口フサに対し金二二万四、〇〇〇円

191原告野口正昭に対し金二二万四、〇〇〇円

192原告藤田なに対し金二二万四、〇〇〇円

193原告藤田喬に対し金二二万四、〇〇〇円

194原告藤田とよ子に対し金二二万六、〇〇〇円

195原告藤田文子に対し金二一万二、〇〇〇円

196原告藤田博美に対し金二二万六、〇〇〇円

197原告藤田直美に対し金二一万二、〇〇〇円

198原告法嶋真一に対し金二二万五、〇〇〇円

199原告法嶋鉄子に対し金二二万五、〇〇〇円

200原告法鳴真弓に対し金二二万五、〇〇〇円

201原告法嶋伸雄に対し金一九万五、〇〇〇円

202原告小沢得郎に対し金一九万八、〇〇〇円

203原告小沢典子に対し金二〇万二、〇〇〇円

204原告小沢一寿に対し金一九万六、〇〇〇円

205原告伊藤正に対し金二二万七、〇〇〇円

206原告伊藤スミ子に対し金二二万七、〇〇〇円

207原告伊藤佳高に対し金二二万七、〇〇〇円

208原告伊藤彰浩に対し金二二万七、〇〇〇円

209原告森岡四郎に対し金二二万四、〇〇〇円

210原告森岡ヒデに対し金二二万四、〇〇〇円

211原告森岡照子に対し金一九万二、〇〇〇円

212原告宇佐美捨秋に対し金二二万六、〇〇〇円

213原告宇佐美恵美子に対し金二二万六、〇〇〇円

214原告宇佐美はるに対し金二二万六、〇〇〇円

215原告宇佐美恵子に対し金一八万二、〇〇〇円

216原告山田兼光に対し金二三万円

217原告山田喜久子に対し金二三万円

218原告山田雪子に対し金二三万円

219原告山田武司に対し金二三万円

220原告前田慶治に対し金二二万六、〇〇〇円

221原告前田志子に対し金二二万八、〇〇〇円

222原告内山梅子に対し金二二万三、〇〇〇円

223原告伴修造に対し金二一万二、〇〇〇円

224原告伴京子に対し金二一万二、〇〇〇円

225原告伴英子に対し金二〇万二、〇〇〇円

226原告八神武一に対し金二二万七、〇〇〇円

227原告八神ほずみに対し金二二万二、〇〇〇円

228原告八神智江子に対し金二二万七、〇〇〇円

229原告八神直子に対し金二二万七、〇〇〇円

230原告八神武子に対し金二二万七、〇〇〇円

231原告後藤俊浩に対し金七万四、〇〇〇円

232原告後藤きみ江に対し金七万六、〇〇〇円

233原告後藤順子に対し金七万四、〇〇〇円

234原告後藤敏江に対し金七万四、〇〇〇円

235原告横山重雄に対し金七万六、〇〇〇円

236原告横山きよ子に対し金七万六、〇〇〇円

237原告横山いく子に対し金六万四、〇〇〇円

238原告横山錠治に対し金六万六、〇〇〇円

239原告横山登に対し金七万四、〇〇〇円

240原告佐藤与曾次郎に対し金七万六、〇〇〇円

241原告佐藤きみに対し金七万五、〇〇〇円

242原告佐藤正幸に対し金六万六、〇〇〇円

243原告佐藤定夫に対し金七万五、〇〇〇円

244原告佐藤秀雄に対し金七万五、〇〇〇円

245原告佐藤信行に対し金七万五、〇〇〇円

246原告新海富夫に対し金七万四、〇〇〇円

247原告新海トモエに対し金七万四、〇〇〇円

248原告新海健次に対し金七万四、〇〇〇円

249原告新海幸子に対し金七万四、〇〇〇円

250原告宇佐美健重に対し金六万五、〇〇〇円

251原告宇佐美きぬ子に対し金六万五、〇〇〇円

252原告宇佐美健一に対し金六万五、〇〇〇円

253原告宇佐美静枝に対し金六万円

254原告宇佐美夏枝に対し金六万五、〇〇〇円

255原告大矢捨次郎に対し金七万三、〇〇〇円

256原告大矢千恵子に対し金七万三、〇〇〇円

257原告大矢逸男に対し金七万三、〇〇〇円

258原告大矢敏男に対し金七万円

259原告大矢みさ子に対し金七万三、〇〇〇円

260原告佐藤章に対し金七万四、〇〇〇円

261原告佐藤則子に対し金七万四、〇〇〇円

262原告佐藤輝子に対し金七万四、〇〇〇円

263原告佐藤一明に対し金七万四、〇〇〇円

264原告佐藤きよ子に対し金七万四、〇〇〇円

265原告岸江すずえに対し金七万三、〇〇〇円

266原告岸江美鈴に対し金七万三、〇〇〇円

267原告森下靖人に対し金一五万円

268原告炭田しずえに対し金五五万七、〇〇〇円

269原告今枝史郎に対し金二七万二、〇〇〇円

270原告屋地幸実に対し金二二万八、〇〇〇円

271原告西村王己に対し金三三万五、〇〇〇円

272原告西尾信行に対し金一八万二、〇〇〇円

273原告宇佐美兼市に対し金二二万四、〇〇〇円

274原告高木優に対し金二三万五、〇〇〇円

275原告宇佐美てる子に対し金二二万六、〇〇〇円

276原告大野昇一に対し金五万五、〇〇〇円

277原告青井清司に対し金四万二、〇〇〇円

および右各金員に対する昭和四七年四月一四日以降支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同宇佐美仙次郎、同宇佐美文雄、同宇佐美美代子、同宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井一晃、同土井節子、同土井麻友美、同土井雅喜、同土井へ、同宇佐美由春、同宇佐美久子、同宇佐美幸治、同宇佐美浩、同久田竹治郎、同久田なか、同久田鎰雄、同久田栄子、同久田直美、同久田香識、同宇佐美義一、同宇佐美良一、同宇佐美鎌吉、宇佐美ゆき、同宇佐美松男、同宇佐美勝行、同奥田奉弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同奥田美加子、同宇佐美鉐十郎、同宇佐美かぎ、同宇佐美英雄、同宇佐美政義、同宇佐美峰子、同宇佐美淳史、同宇佐美千代子、同宇佐美鉞一、同宇佐美、同宇佐美浩一、同宇佐美佳代、同宇佐美ジヤウ、同佐藤善邦、同佐藤あや、同佐藤隆史、同佐藤政史、同佐藤清史、同佐藤くに、同大橋平数、同大橋峯子、同大橋洋子、同大橋隆平、同大橋喜美、同篠原孝夫、同篠塚照子、同篠塚泰伸、同林幹夫、同林千鶴子、同林誠、同林つぎ、同山田輝子、同山田祐治、同清水千代、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利正雄、同毛利宮子、同奥田兼次郎、同奥田はる子、同奥田比呂子、同原薫、同原房子、同原清子、同原茂樹、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同木原利敦、同木原ナスエ、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子、同宇佐美七男、同宇佐美昭子、同宇佐美仁克、同宇佐美裕子、同宇佐美十一、同宇佐美正子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同宇佐美志やう、同笠原正照、同笠原鶴子、同宇佐美金義、同宇佐美とう、同宇佐美千恵子、同鬼頭清助、同鬼頭秋子、同鬼頭敬子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同山盛実、同山盛重子、同山盛賢司、同山盛均、同清水豊、同清水喜美子、同清水武、同清水さち子、同佐藤春子、同佐藤節子、同佐藤明美、回戸松七五三一、同戸松千代子、同宇佐美弘、同宇佐美やえ子、同宇佐美佳代、同宇佐美巌、同宇佐美すえの、同久田真一一、同久田幌、同久田裕二、同久田峯興、同山本一夫、同山本志げ子、同山本広志、同磯部幹雄、同磯部つるえ、同磯部栄、同磯部智枝、同磯部好作、同浅銕次郎、同浅井と免、同宇佐美武雄、同宇佐美資子、同宇佐美賢次、同宇佐美笑子、同宇佐美知之、同宇佐美明、同宇佐美仁、同宇佐美了、同宇佐美え、同貴船一夫、同貴船笑子、同貴船誠、同貴船みゆき、同貴船修、同野口正夫、同野口フサ、同野口正昭、同藤田な、同藤田喬、同藤田とよ子、同藤田博美、同藤田直美、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢得郎、同小沢典子、同小沢一寿、同伊藤正、同伊藤スミ子、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同森岡四郎、同森岡ヒデ、同宇佐美捨秋、同宇佐美捨秋、同宇佐美恵美子、同宇佐美はる、同宇佐美恵子、同山田兼光、同山田喜久子、同山田雪子、同山田武司、同前田慶治、同前田志子、同伴修造、同伴京子、同伴英子、同八神武一、同八神ほずみ、同八神智江子、同八神直子、同八神武子、同後藤俊浩、同後藤きみ江、同後藤順子、同後藤敏江、同横山重雄、同横山きよ子、同横山登、同佐藤与曹次郎、同佐藤きみ、同佐藤正幸、同佐藤定夫、同佐藤秀雄、同佐藤信行、同新海富夫、同新海トモエ、同新海健次、同新海幸子、同宇佐美健重、同宇佐美きぬ子、同宇佐美健一、同宇佐美夏枝、同大矢捨次郎、同大矢千恵子、同大矢逸男、同大矢敏男、同大矢みさ子、同佐藤章、同佐藤則子、同佐藤輝子、同佐藤一明、同佐藤きよ子、同岸江すずえ、同岸江美鈴、同炭田しずえ、同宇佐美兼市、同宇佐美てる子と被告との間において、被告は、名古屋市中川区福川町二丁目一番地所在の製鋼工場内の各ばいじん発生施設から、右原告らの肩書住所所在の右原告ら居宅敷地内のばいじんについて、連続する二四時間における一時間値の平均値が、大気一立方メートルあたり0.65ミリグラムをこえるようなばいじんを発生させてはならない。

三、原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四、訴訟費用は被告の負担とする。

五、この判決の一、二項は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

第一、当事者

一、(一) <証拠>によれば、次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

原告らは、いずれも、名古屋市の南西部に位置する同市中川区外新町三丁目、四丁目、同区福川町三丁目、同区大山町および同区八剱町所在の別表一、Ⅱ欄記載の被害居住地に、同表Ⅲ居住期間欄記載のとおり現在まで(但し、原告土井敏全は昭和三七年一二月から昭和四五年一〇月まで、同宇佐美政次郎は昭和一七年一二月から昭和四三年まで、同清水角蔵は昭和二七年一月から昭和四〇年八月まで、同宇佐美昭子は昭和三五年一一月から現在まで、同宇佐美善三郎は昭和五年四月から昭和三九年六月まで、同宇佐美志やうは昭和五年四月から昭和三九年六月までと、昭和四一年一一月から現在まで、同鬼頭秋子は昭和二九年一一月から現在まで、同佐藤春子は昭和一七年一一月から現在まで、同宇佐美資子は昭和三六年一一月から現在まで、同野口正夫、同野口フサ、同野口正昭はいずれも昭和二九年八月から現在まで、同内山梅子は昭和一九年七月から昭和四六年一一月まで、同横山いく子は昭和二三年三月から昭和四四年三月まで、同宇佐美きぬ子は昭和一二年五月から昭和四四年三月までは同区八剱町一丁目八番地に、昭和四四年三月から現在までは同区外新町二丁目九九番地に、同宇佐美健一は昭和一五年二月から昭和四四年三月までは同区八剱町一丁目八番地に、昭和四四年三月から現在までは同区外新町二丁目九九番地に、同宇佐美静枝は昭和二二年七月から昭和四四年三月までは同区八剱町一丁目八番地に、昭和四四年三月から昭和四五年一一月までは同区外新町二丁目九九番地に、同宇佐美夏枝は昭和二四年九月から昭和四四年三月までは同区八剱町一丁目八番地に、昭和四四年三月から現在までは同区外新町二丁目九九番地に)引続き居住し、あるいはかつて居住していたものであり右各原告らの年令・世帯構成・家族関係は同表Ⅱ年令・続柄・世帯構成欄記載のとおりであり、原告らの被害居住地を図示すれば別図一記載のとおりである。

被告の各工場の所在位置は同図記載のとおりであり、原告らの被害居住地はいずれも右被告工場からみて、南から東までの方角特に南東の方角に所在する。

(二) そして被告工場から原告ら被害居住地までの距離は原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同宇佐美仙次郎、同宇佐美文雄、同宇佐美美代子、同宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井一晃、同土井節子、同土井麻友美、同土井雅喜、同土井敏全、同土井茂、同土井へ、同森下靖人、同炭田しずえ、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己についてはいずれも約二〇メートル以内(以下A区域という。)、原告宇佐美由春、同宇佐美久子、同宇佐美幸治、同宇佐美浩、同小園尚雄、同小園昭美、同小園誠司、同久田竹治郎、同久田なか、同久田鎰雄、同久田栄子、同久田直美、同久田香織、同宇佐美義一、同宇佐美良一、同宇佐美政次郎、同宇佐美清子、同同宇佐美紀子、同宇佐美鎌吉、同宇佐美ゆき、同宇佐美松男、同宇佐美定子、同宇佐美勝行、同奥田幸弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同奥田美加子、同宇佐美鉐十郎、同宇佐美かぎ、同宇佐美英雄、同宇佐美政義、同宇佐美峰子、同宇佐美淳史、同宇佐美千代子、同宇佐美鉞一、同宇佐美、同宇佐美浩一、同宇佐美佳代、同宇佐美ジヤウ、同佐藤善邦、同佐藤あや、同佐藤くに、同佐藤隆史、同佐藤政史、同佐藤清史、同大橋平数、同大橋峯子、同大橋洋子、同大橋陸平、同大橋喜美、同篠塚孝夫、同篠原照子、同篠塚泰伸、同林幹夫、同林千鶴子、同林つぎ、同林誠、同山田輝子、同山田祐治、同清水角蔵、同清水千代、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利富子、同服部実、同服部艶子、同服部美津子、同服部隆、同奥田兼次郎、同奥田はる子、同奥田比呂子、同原薫、同原房子、同原清子、同原茂樹、同高橋末夫、同高橋ふみよ、同高橋ひめ、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内雅弘、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同坂井田ちよ、同坂井田節子、同坂井田一義、同坂井田明典、同木原利敦、同木原ナスエ、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子、同平本勝也、同高木優についてはいずれも約二〇メートルないし一五〇メートル以内(以下B区域という。)、原告宇佐美源治、同宇佐美七男、同宇佐美昭子、同宇佐美仁克、同宇佐美裕子、同宇佐美十一、同宇佐美正子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同宇佐美善三郎、同宇佐美志やう、同笠原正照、同笠原鶴子、同宇佐美金義、同宇佐美とう、同宇佐美千恵子、同鬼頭清助、同鬼頭敬子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同山盛美、同山盛重子、同山盛征逸、同山盛みち子、同山盛賢司、同山盛均、同山盛せつ、同清水豊、同清水喜美子、同清水武、同清水さち子、同佐藤春子、同佐藤節子、同佐藤明美、同戸松七五三一、同戸松千代子、同宇佐美弘、同宇佐美やえ子、同宇佐美佳代、同宇佐美巌、同宇佐美すえの、同久田真一、同久田隆子、同久田幌、同久田久美子、同久田裕二、同久田峯興、同山本一夫、同山本志げ子、同山本広志、同磯部幹雄、同磯部つるえ、同磯部栄、同磯部智枝、同磯部好作、同磯部なせ、同浅井銕次郎、同浅井と免、同宇佐美武雄、同宇佐美資子、同宇佐美賢次、同宇佐美笑子、同宇佐美知之、同宇佐美明、同宇佐美仁、同宇佐美了、同宇佐美え、同貴船一夫、同貴船笑子、同貴船誠、同貴船みゆき、同貴船修、同野口正夫、同野口フサ、同野口正昭、同藤田な、同藤田喬、同藤田とよ子、同藤田文子、同藤田博美、同藤田直美、同藤田直美、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢得郎、同小沢典子、同小沢一寿、同伊藤正、同伊藤スミ子、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同森岡四郎、同森岡ヒデ、同森岡照子、同宇佐美捨秋、同宇佐美恵美子、同宇佐美はる、同宇佐美恵子、同山田兼光、同山田喜久子、同山田雪子、同山田武司、同前田慶治、同前田志子、同内山梅子、同伴修造、同伴京子、同伴英子、同八神武一、同八神ほずみ、同八神智江子、同八神直子、同八神武子、同西尾信行、同宇佐美兼市、同宇佐美てる子についてはいずれも約一〇〇メートルないし二〇〇メートル以内(以下C区域という。)、その余の原告らについてはいずれも約二〇〇メートルないし三〇〇メートル以内である(以下D区域という。)。

右各区域の範囲・位置関係は別図一に赤点線で示したとおりである。

(以下右AないしDの各区域を一括して言うときは本件被害地域という。)

なお、本件被害地域内において、転居が行われた場合転居の前後でAないしDの区域を異にする場合は、転居前の被害居住地の位置は別図一中赤わくで示したとおりである。

二、次の事実については、当事者間に争いがない。

右被告工場において、被告は屑鉄を原料として電気炉により鋼塊を製造し、あるいは更にこれを圧延、加工して棒鋼を製造している。

第二、侵害行為

一、被告の行為

(一)  被告設立と操業の経過

<証拠>を総合すると、次の事実が認められ右認定に反する証拠はない。

1、被告は、昭和二三年五月九日中川区福川町二丁目一番地において利川紡織株式会社として設立され、同所に工場を所有して綿、スフの紡織業をはじめたが、当時は終戦後間もない時期で物資も乏しかつた関係から、その規模は家内工業を若干拡張した程度のものであつた。

その後繊維業界は徐々に復興期から成長期に向い、一時解散状態にあつた大企業も漸くその体制を整え綿スフ業にも手を伸して来ると同時に新製品の化学繊維の開発に成功し、繊維業界は折りから到来した不況の波のあおりを受けて弱小企業は整理され、大企業独占の形をとりはじめた。

2 当時中小企業の一つであつた利川紡織株式会社は、右繊維業界不況の影響を受けて徐々に業績が悪化し、昭和二八年から昭和三一年にかけては綿・スフの紡織業によつては採算がとれない程になつて来た。

3、そこで、昭和三四年四月、当時の高度経済成長政策に伴い増大する鉄鋼需要に着目して製鋼業に転換することとし、社名も現在のそれに改め、そのころ、右工場内に熱間圧延機(以下圧延機という。)をその附属設備と共に設置して、当初は第一次製品である鉄鋼素材(インゴット)を他から買入れ、これに熱処理を加えて圧延し鉄筋丸棒に加工する熱間圧延作業のみを行なつていた。

その後昭和三五年六月第一次製品であるインゴット製造のための製鋼業務を行なうことに踏切り、そのころ右被告工場内に製鋼用電気炉一基(ダイドーレクトロメルトNOT型。一号炉)をその附属設備と共に設置して製鋼作業を開始した。

4、昭和三六年二月、被告は更に同型の電気炉一基(二号炉)を右工場内に設置して稼動をはじめた。

5、被告は昭和三八年ごろ圧延機一基を、また同年二月ころ従前のものと同型の電気炉一基(三号炉)を、更に昭和三九年一月には同時に二基の同型電気炉(四号炉、五号炉)をそれぞれ、その附属設備と共に設置稼動させ、更にかかるインゴット製造機能の増大に伴い、順次製鋼作業に必要とされる搬送設備等の附随設備をこれにみあうよう増設、整備した。

6(1) この間被告は昭和三七年ごろからインゴットをインゴットケースから抜き取るためのケース抜き装置を被告工場内に設置、稼動し、

(2) 昭和四〇年八月ごろ、スクラップヤード中央附近に二〇トンドロップハンマーを設置、稼動している。

7、被告はまた昭和四一年末製鋼工場東側に右関連施設として酸素工作工場を建設し、その後同工場内に右製鋼・圧延作業に必要とされる酸素を液化分離する装置(以下酸素液化機という)一基、各種コンプレッサー六基等を設置、稼動した。

8、右五基の電気炉から後掲第二、一、(二)2(1)(A)( )認定のとおり発生するばいじんを除去するため被告は昭和四二年六月、バッグフィルター式炉頂吸引式集じん機一基(バッグフィルター式ダイドーダスチューブコレクター。第一号集じん機)を本工場東側の酸素工場東南隅空地に設置し試運転を行なつたところ、防音工事および場所の移動を要することが判明したため、断続的に稼働と、防音工事による中断を繰り返した後、昭和四三年一月末日防音工事と場所の移動を終り、本格的稼動をはじめた。

その後、後掲(二)2(3)(B)( )ロに認定のとおり、右集じん機の集煙効率が低下したため、新たに集じん機一基(バッグフィルター式、NS式、日本スピンドル製。第二号集じん機)を、昭和四六年一〇月本工場北東隅に設置し稼動をはじめた。

9、このように生産設備を拡大して操業を続けた結果、被告の従業員数および生産高もこれに伴つて増加しその概算は

従業員数  生産高

(1)昭和三五年度 一五〇名 三七、二五〇トン

(2) 〃 三六年度 二〇〇名 一〇四、九五〇トン

(3) 〃 三七年度 二〇〇名 一〇六、八六七トン

(4) 〃 三八年度 二二〇名 一三〇、七〇〇トン

(5) 〃 三九年度 二五〇名 一八四、二七四トン

(6) 〃 四〇年度 二八〇名 二〇五、八二三トン

(7) 〃 四一年度 三〇〇名 二〇五、八七六トン

(8) 〃 四二年度 三四〇名 二〇八、二四〇トン

(9) 〃 四三年度 三二〇名 一九八、九三〇トン

(10) 〃 四四年度 三三〇名 二二六、五二〇トン

(11) 〃 四五年度 三三〇名 二三四、四八〇トン

(12) 〃 四六年度 三四〇名 一四七、六六〇トン

(一月―八月三一日)となり、粗鋼(インゴット)の公称生産量は月産二万五、〇〇〇トン、建築用丸棒の公称生産量は月産一万八、〇〇〇トンに達し、その規模は全国平電炉業界でも中位、東海地区では上位に属するまでとなつた。

10、また被告工場は、昭和三六年当時から二四時間操業を行なつている。

11、現在敷地総面積約五九九一坪(一九、九五〇平方メートル)におよぶ被告工場は製鋼工場、圧延工場、変電所、製品ヤード等を含む本工場と幅員約一〇メートル足らずの公道をはさんでその東側に位置する酸素工作工場とから成り、右各工場内には電気炉五基およびその附属設備以下別表二番号1ないし10記載の各公害発生施設が別図二記載のとおり配備、設置されている(但し、別表二番号5、6のケース抜き装置、ドロップハンマーはいずれも搬去されているため図示していない。また別表二番号7の第一号集じん機はその位置が移動しているが、その移動前の位置は別図二に赤色点線で示したとおりである。)。

(二)  被告工場の操業による公害の発生とその防除措置

1、「ばいじん」とは、物の燃焼等に伴い遊離される未燃炭素であるすす、燃焼後の残留灰分および製鋼作業に伴つて発生する酸化鉄等の微粒粉その他無機物質、有機物質、各種金属等を含有する粒子状物質の総合体に対して用いられる名称であり、旧ばい煙の排出の規制等に関する法律第二条第一項に「すすその他の粉じん」として規定されていたものと同一で、現行大気汚染防止法第二条第一項にはその第二号に「燃料その他の物の燃焼または熱源としての電気の使用に伴い発生するばいじん」として規定されているが、同法は同条第一項第一号に規定する亜硫酸ガス、第三号に規定する有害物質と共にこの三者を「ばい煙」として一括し、規制の対象としている。また同条第四項は物の破砕、選別その他の機械的処理またはたい積に伴い発生しまたは飛散する物質を「粉じん」として規定し、規制の対象としている。

ところで以下「ばいじん」とは、右大気汚染防止法第二条第一項第二号に定める「ばいじん」および同条第四項に定める「粉じん」をあわせて指すものとする。

2、<証拠>を総合すると次の事実が認められ、証人平山正夫の証言中右認定に反する部分は前掲各証拠に比照したやすく措信せず、他には右認定に反する証拠はない。

(1) 公害の発生

(A)(ⅰ)イ 右製鋼作業は、電気炉にスクラップ(屑鉄)を投入し電極に流した電流のアーク熱によつてこれを溶解するもので、この間溶け易くするため酸素ガスを吹き込みカッティングを行ない、溶解後石灰、螢石等を投入し再び酸素ガスを吹き込み、酸化精錬を行なうことにより溶鋼の表面にスラグ(鋼滓)を作り、これを取り除き、更にボイリング(沸騰精錬)を行ない、水素、窒素等のガスを除去し、このようにして精錬の終つた熔鋼を取鍋へ移し、インゴットケースに注入し凝固させるというものであり、時期としては材料装入と熔解、酸化精錬、還元精錬出鋼に分れる。

右材料装入から出鋼までを一チャージと呼び被告工場ではこれに約二時間を費やしている。

ロ ばいじんを含むばい煙の発生原因は、原材料のスクラップ中に混入している油脂類、布類等の可燃性物質の燃焼、金属性物質の高温による気化、吹込酸素による炭素、硫黄などの燃焼、造滓材の燃焼および気化等が考えられ、発生時期としては材料装入通電直後、熔解中期の電極回りの材料が一時に熔け落ちる時、酸素によるカッティング時、酸素吹精時、造滓材投入時、出鋼時があげられる。

ハ 一般に材料装入時と熔解期の発じん量は材料である屑鉄の品位により異なり、これに錆、油などが多く附着していると発じん量が多くなり、良質のスクラップ、ダライ粉等の使用した場合はばいじんはそれほど多くない。

また酸素吹精時には最も高温度のばいじんが発生するが、その際ばいじんを含む排ガスの発生量は酸素吹精量に比例し、一日のチャージ数が増えれば全体としての酸素吹精量も増加する。

従つて、発じん量は原材料および作業方法等他の条件が一定の場合、大体においてチャージ数、即ち鉄鋼生産量に比例する関係にある。

ニ 被告工場においては、昭和三六年以降昭和三九年ごろまでは作業方法等についても右発じん量についての配慮は殆ど行なわれていなかつた。

(ⅱ) また右電気炉の稼動の際、スクラップ投入音、スパーク音、電気炉定常音等の騒音および振動が発生する。

(B) 右圧延作業はインゴットを九〇〇度ないし九五〇度に加熱・圧延し、建築用材としての棒鋼に加工するものが、その際圧延による衝撃音などの騒音および振動を発生する。

右加熱処理の際加熱炉からはばいじんが発生する。

(C) 運搬作業は搬送設備を作動して、被告工場内における原材料、製品の移動、運搬を行なうものであるがその際騒音、振動が発生する。

(D) 右ケース抜き装置はインゴットをケースごと吊り上げ自然落下させてその衝撃でインゴットをケースからはく離させるもの、右ドロップハンマーはスクラップを電気炉に投入する前にあらかじめ炉体と同容積にまで圧縮するものであるがいずれも右各作業に伴つて激しい騒音と振動を発生する。

(E) 右集じん機は第一、二号機とも電気炉から発生するばいじんを、ブロアーによつて吸引捕集しダクトを通じてバッグ状のフィルターに導き、これによつてろ過集じんする装置であるが、右ブロアーの稼動により、騒音、振動を発生する。

更に右バッグフィルターが破損し、または目ずまりしたとき偏心をおこし振動が激化する。

(F) 右酸素液化機は空気中から酸素を分離するものであるが右作業に伴い不要な窒素を放出するため一五分間隔で五秒間激しい騒音が発生する。

(G) 酸素工場コンプレッサー(合計六基)から余剰エアーが生じ、このため吸入側に空気の振動が激しく起りそれがエアークリーナー室で共鳴しまたは右コンプレッサーのピストンの作動によつて振動が発生する。特に右コンプレッサーのうち横型並列コンプレッサーによる振動が大きい。

(H) ノロ(鉱滓)捨場における(昭和三七年ごろまでは製鋼工場東側公道に捨てられていた)ノロおよびスクラップ置場におけるスクラップの搬入、積み上げ、積みおろし等の取り扱いによつてもばいじんが発生する。

(2) 被告の公害防除措置

右各ばいじん、騒音、振動が外部に排出、流出するのをさけるため、被告は徐々に左のとおりこれらの公害を減少させる施設を設置する等の工事を行ない、または公害発生施設の一部を撤去する等の措置をとつた。

(A) 防じん対策

(ⅰ) スクラップヤードの屋根の取付

昭和三八年一〇月製鋼工場のうちスクラップヤード上部から電気炉のばいじんや火花が直接外部に排出されるので、これを防止し、ばいじんを上空に拡散する目的でスクラップヤードに防じん用のスレート葺屋根を取り付けることとし、そのころ、その工事に着手し、昭和三八年一二月、これを完成した。

(ⅱ) 製鋼工場の屋根の改善

製鋼工場の屋根の形成を、電気炉のばいじんの拡散に適するよう改良することとし、昭和三八年九月一〇日その工事に着手し、同年一一月二八日これを完成した。

(ⅲ) スクラップヤードの南面褄の遮蔽

スクラップヤードの南面褄の空間部分(底辺二八メートル、高さ五メートルの三角形の部分)から、ばいじんが排出するのを防止するため、右空間部分に鉄板を張つて、遮蔽することとし昭和四四年三月二八日、その工事に着手し、同年九月二五日これを完成した。

(ⅳ) 換気ファンの設置

製鋼工場のばいじんの希釈拡散を図るため、昭和四五年六月同工場内に換気ファン一五台を設置した。

(ⅴ) 第一号集じん機

右集じん機の設置については前示(一)8のとおり既に認定したが、これについて後記公害防止対策協定に基づき更に、

イ 吸引力増大のため

(a) ろ布の目づまり防止と管理の便宜を考えて四四年中ごろう布をテトロンから硝子ウールにかえた。

(b) 消音室の径路を短かくして抵抗の減少を図つた。

(c) 炉頂吸引口の径を四五〇ミリメートルから六〇〇ミリメートルに増した。

ロ 主要部品のスペア即ちファンの羽根、ギヤカップリング、シャフト、バッグおよびそれらの附属品などすべてのスペアを常備することにした。

(ⅵ) 集じん機の排気口の嵩上げ

前記集じん機より排出される排気ガスを、できるだけ上空に拡散するため、その排気口(地上六メートル)を二〇メートルの高さにすることとし、昭和四三年一二月一〇日その工事に着工し昭和四四年から四五年にかけてこれを完成した。

(ⅶ) 集じん用ブロア増設

前記集じん機の吸引圧を増大するための装置であるブロアー施設一式、電動機一台を増設することとし、昭和四五年六月一八日その工事に着工し、同年一一月中旬これを完成した。

(ⅷ) トロイダルバーナ設置

電気炉から排出するばいじん量を減少させるために従来電気炉の扉をあけて作業員が直接酸素吹込作業をしていたのを、扉をあけないで右作業をなしうる機械であるトロイダルバーナを設置することとし昭和四五年六月二〇日その取付工事に着手し、同年七月三〇日これを完了した。

(ⅸ) 第二号集じん機

右集じん機の設置についても前示(一)8のとおり既に認定した。

(B) 防音、防振動対策

(ⅰ) 東側防音壁

イ 製鋼工場から生ずる騒音を防止するために、同工場の東側に鉄筋コンクリートによる長さ(工場北端より)九〇メートル、厚さ0.35メートル、高さ九メートルの防音壁を設置することとし、昭和三六年九月、その築造に着手し、同年一二月これを完成し、

ロ 更に、昭和四二年六月一五日、右防音壁を南方に約二〇メートル延長することとし、これが工事に着手し、同年八月二〇日これを完成した。(全長一一〇メートル、高さ九メートル)

ハ 右(ⅰ)イロの防音壁の機能を増強するために更にその上部に鉄板張り、内側木綿吸音板張りの遮音塀(全長一二〇メートル、厚さ0.0012メートル、高さ六メートル)を設置することとし、昭和四四年一〇月二〇日その工事に着手し、昭和四五年二月一〇日これを完成した。

(ⅱ) 南側防音壁

イ 製鋼工場の南側に、まず第一期工事として、昭和四一年一月一〇日、工場南側の西端より東方42.6メートルの地点より東方に向け、全長16.6メートル、厚さ0.4メートル、高さ4.8メートルの鉄筋コンクリート造りの防音壁の築造に着手し、昭和四三年四月三〇日これを完成した。

ロ 第二期工事として、昭和四三年二月一五日工場南側の東端より西方に向け、全長一三メートル、厚さ0.2メートル、高さ三メートルのブロック積防音壁の築造に着手し、同年三月一日これを完成した。

ハ 第三期工事として、昭和四四年三月二五日、工場南側の西端より東方に向け、全長42.6メートル、厚さ0.27メートル、高さ4.8メートルの鉄筋コンクリート造りの防音壁築造に着手し、同年五月二五日これを完成した。

(ⅲ) 酸素液化機に対する防音設備

酸素工場内の酸素液化機から窒素を放出する際騒音が生ずるのでこれが防止のために、窒素を放出するパイプを工作工場の西北端まで延長し、更に、その放出口に消音器を設置することとし、昭和四二年六月末これに着手し、同年八月二五日これを完成した。

(ⅳ) 集じん機に対する防音設備

イ 第一期防音工事

第一号集じん機から発生する騒音防止のため昭和四二年七月九日から同年八月一〇日までの間に集じん機ブロアーをコンクリートブロック造の防音壁で囲み、同ダクト内部、冷却塔ファン附近にそれぞれ吸音材を貼り、排風口を地上四メートルから九メートルにして排風口の先にコンクリートブロック造の吸音材を貼り消音器を設置する防音工事を行なつた。

ロ 第二期防音工事

(a) 昭和四二年一〇月から昭和四三年一月までサイレンサー室、排風機、冷却塔の周囲をコンクリートブロック積の防音壁で囲い、更に冷却塔の周囲を装置から一メートルの間隔をおいて高さ八メートルのフレキシブルボード壁で囲いサイレンサー室の周囲をフレキシブルボード張りにする防音工事を行ない

(b) この間昭和四二年一二月二九日、右集じん機本体を従来の位置から北へ約三二メートル西へ約二六メートル移設した。

(ⅴ) 油圧式スクラッププレスの設置

スクラップを押し固める際従来の二〇トンドロップハンマーによると前示認定のとおり激しい騒音、振動を発生するため、種々防除措置をとつたがいずれもさしたる効果はえられなかつたため昭和四一年二月ごろ右作業をとりやめ、従前の設置は昭和四二年ころ撤去し、新たに油圧式スクラッププレスを設置した。

(ⅵ) 油圧式ケース抜き装置の設置

第一次製品であるインゴットを、インゴットケースから取り出す際従来のケース抜き装置によると、前示認定のとおり激しい騒音、振動を発生するため、種々防除措置をとつたがいずれもさしたる効果がえられなかつたため、これを撤去し、新たに油圧式ケース抜き装置を設置することとし、昭和四二年六月ころ着工し、同年八月ころこれを完成した。

(ⅶ) コンプレッサー(空気圧縮機)二台の消音設備

酸素工場内に設置してあるコンプレッサー二台を運転する際、若干騒音、振動が生ずるので、これを防止するためコンプレッサー二台に消音器を附設することとし、昭和四四年一二月五日、その附設に着手し、昭和四五年一月一五日これを完成した。

(ⅷ) 電気炉および圧延作業専用のコンプレッサーの設置

酸素工場内のコンプレッサーの運転による騒音、振動を防止するために前記の如く、消音装置を附設したが、更にその騒音、振動の発生を止めるため、製鋼工場内に電気炉および圧延作業専用のコンプレッサーを設置することとし、電気炉専用のコンプレッサーについては、昭和四四年一二月二五日これが設置に着手し、昭和四五年二月一〇日完成した。

次いで、圧延作業専用のコンプレッサーについても、昭和四五年六月二五日これが設置に着手し、同年七月二八日完成した。

(3)A 右各工事がなされるまでは、被告本工場には原告ら被害居住地に面している東側および南側には充分な外壁もなく、またスクラップヤードにはそれまで屋根がなく、工場内で発生するばいじん、騒音、振動がそのまま外部に排出、流出し易い状態になつていた。

(B)(ⅰ) しかし、右各工事完成後もばいじん、騒音、振動は一部集じん機により捕集され、あるいは防音壁により吸収され若干減少したほかは、従前と同様、屋根、窓等から、また防音壁のない東側開口部等から排出、流出している。

(ⅱ)イ 特に現段階における集じん機についてはもともと出鋼時、材料装入時および炉内で可燃性物質の異常燃焼により一時的に多量のガスが発生するときには、集煙が不可能であるという現在の技術水準では克服困難な欠点があり

ロ 更に昭和四三年六月ごろに至つて、右第一号集じん機の集じん用バッグフィルターが目づまりをおこしたり、破損し、ブロアーの吸引圧が低下したため電気炉頂部における集煙効率が低下し、電気炉から発生するばいじんの一部のみを集煙捕集するにすぎなくなつた。

そして、右捕集されないばいじんは、工場屋根の排煙口、明りとり窓等から大量に工場外に排出されて来た。

昭和四七年二月以降の第二号集じん機についても同様の状態がみられた。

(4) 結局被告は、右被告工場内において別表二各記載の施設を同表稼動期間欄各記載の期間にわたつて設置稼動し、同表公害の種類欄各記載のばいじん、騒音、振動を発生させ、工場外に排 出、流出させて来たものである。

二、本件ばいじん、騒音、振動とその測定結果

(一)  <証拠>によれば、次の事実を認めることができ右認定に反する証拠はない。

1、本件被害地域内におけるばいじん、騒音、振動(以下本件ばいじん、騒音、振動という。)は昭和三六年二月ごろから次第に増加し、以後現在まで継続している。

2、右ばいじん、騒音、振動について昭和三七年四月以降昭和四六年一〇月までの間に、左のとおり愛知県、名古屋市または両者共同で測定が行われたが、その結果は別表三S―1、S―2、S―4ないしS―6、同N―2、N―3、N―4ロ、N―5ないしN―10、V―1ないしV―3および別図三各記載のとおりであり、鑑定人柴田正二が名古屋市衛生研究所に依頼して測定した昭和四一年七月二五日当時の左記各地点におけるばいじん汚染濃度は別表三のS―3記載のとおりであり、同年七月一九日、同月二五日当時の左記各地点における騒音レベルは別表三のN―1記載のとおりであり、高山工業株式会社が測定した昭和四二年八月一〇日当時の左記各地点における騒音レベルは別表三のN―4イ記載のとおりであり、鑑定人松原暁美が測定した昭和四六年一〇月八日ないし一八日当時の左記各地点における騒音レベルは、それぞれ別表三のN―11記載のとおりであつて右各認定に反する証拠はない。

3(2) なお労研式吸着じんあい計は清浄なカバーガラス上にほぼ飽和湿度に加湿した可検空気を細隙(スリット)を通して急速で強く吹きつけ可検空気中のじんあい粒子をカバーガラス上に吸着させるじんあい捕集器でカバーガラスを顕微鏡で検査してじんあい粒子の数を測定するものであり、

(2) インビンヂャー法によるじんあい量の測定は円筒形のガラスびんに適量の水と通気管を入れ、吸引ポンプで可検空気を吸引すると、空気は通気管先端のノズルから加速されて噴出し、じんあいはびんの底に衝突沈着してびんの液中に残るがこれを計量するものであり、

(3) KYSろ紙式自動粉じん捕集器によるろ紙汚染指数の測定はIKYSは株式会社山越製作所の略号であり労研式ろ紙じんあい計と同一である。1ポンプで汚染空気をろ紙によりろ過しながら吸引して浮遊ばいじんをろ紙上に捕集し、ろ紙上の浮遊ばいじんによるスポットの濃淡を光の反射速度や透過度で測定して空気中のばいじん濃度即ち汚染度を知るものであり、

(4) ロダンカリ法による鉄量の測定はKSON(チオシアン化カリー別名ロダンカリという)を試薬に用いて三価鉄(F3)をSCNと化合させ、右化合による発色によつて鉄量を顕出するものであり、

(5) ハイボリュームエアサンブラーは吸引ポンプの吸気口にろ紙やファイバーガラスなどのじんあい捕集用ろ紙材を接着したものであり、捕集後ろ紙を乾燥させ秤量し、前後の重量差および通気量から浮遊ばいじん濃度を測定するものであり、

(6) デイジタル粉じん計は可検空気に光ビームを照射して右空気中の浮遊ばいじんによる光散乱量を光電子増倍管に受け、その強弱を光電流に変え積分回路に入れパルス数としてばいじん量を測定するものである。

(二)  右各測定の結果を摘記すれば左のとおりである。

1 ばいじんについて

(1) 測定番号S―1の測定について

(A) じんあい数は被告のばいじんを直接に受ける気象条件の下においては、一〇〇メートルの位置において空気一立方センチメートル中最高六、〇九〇個に達し、二〇〇メートル附近において二、〇〇〇個以上であつた。

(B) じんあい量は被告工場から一〇〇メートル地点の最大値が4mg/m2であり二〇〇メートル地点で2mg/m2であつた。

(C) 汚染の経時変化を明らかにし市内の他地点を比較するため測定したろ紙汚染指数は伊藤起重機方において最高0.488、最低0.258、平均0.349であり、岡田宅において最高0.454、最低0.106、平均0.256、以上二地点での平均0.303であり、これは中村区の右期間中の数値である最高0.194、最低0.014、平均0.124と比較するとかなり高く、中村区、中区、港区のそれぞれ一二月、一月、二月の三ケ月平均値0.161、0.237および0.255に比較してもかなり高い。

(D) 右KYSろ紙法によるばいじん中の鉄量をロダンカリ法で測定した結果によると、被告工場から一〇〇メートルの地点において最高値は0.7mg/m2であり二〇〇メートル地点で0.25mg/m2であつた。

(2) 測定番号S―2の測定について

当時名古屋市が市内に電気炉を有する一四工場の工場調査を行なつた際、被告工場の他四工場についても工場周辺のばいじん調査を行なつている。

別表三のS―2によれば

(A) まず2ないし0.4ミクロンの大きさのじんあいのじんあい数は被告工場から一〇〇メートルの地点で空気一立方センチメートル中最高五、〇四八個、平均四、七〇九個であり、二〇〇メートル地点でも最高五、三〇八個、平均四、一八六個と殆ど変らず、三〇〇メートル地点で最高三、五一六個、平均二五三四個とやや減り、四〇〇メートル地点でも最高一、八五六個、平均一、六二八個、五〇〇メートル地点で最高二九三六個、平均一、八三九個であつた。

(B) 鉄粉じん量 KYSろ紙法によるばいじん中の鉄量をロダンカリ法で測定した結果によると、一〇〇メートルの地点における最高値は0.87mg/m2であつた。

なお、右五工場周辺の測定結果のうちじんあい数においても鉄粉じん量においても被告工場周辺の数値が最高の汚染度を示した。右S―1の測定時より汚染が増大している。

(3) 測定番号S―3の測定について

別表三のS―3によればときどき工場の風下になる条件下においてハイボリュームエアサンブラーによる測定値は、

B区域原告宇佐美義一方西側で2.07mg/m2(測定時間一三時五〇分から一四時一〇分までの二〇分間)B区域原告宇佐美由春方前で1.52mg/m2(測定時間一四時二〇分から一四時四五分までの二五分間)、同じく2.69mg/m2(測定時間一五時二五分から一五時四五分までの二〇分間)

であり、同じ条件におけるディジタル粉じん計による一分間最大測定値は、

B区域原告宇佐美義一方西側で8.88mg/m2(測定時間一五時五五分から一六時一〇分まで)

B区域原告宇佐美由春方前で6.43(測定時間一五時二五分から一五時五〇分まで)

である。

そして被告工場周辺のばいじんは酸化鉄が主体であつて風下においては二〇分間の平均値で三mg/m2をこえることがある。また瞬間濃度は一分間平均値によれば九mg/m2以上になる場合があるが、数分間継続することはない。

(4) 測定番号S―4の測定について

ABC各区域のハイボリュームエアサンブラーによる測定値(二四時間平均値)の最高、最低、平均値はそれぞれ

最高   最低   平均

A3.86mg/m23.35mg/m23.56mg/m2

B2.20   0.63   1.21

C1.04   0.70   0.91

であり、総平均値は1.96mg/m2であつた。

(5) 測定番号S―5の測定について

別表三のS―5によれば、ハイボリュームエアサンブラーによる測定値(二四時間平均値)は、昭和四四年一一月六日、七日の平均値は1.06mg/m2であり、同月二五日から二七日までの平均値は被告工場の休業日を除くと0.98mg/m2であつた。

(6) 測定番号S―6の測定について

別表三のS―6によれば、ハイボリュームエアサンブラーによる測定値(二四時間平均値)は、ABC各区域について

最高   最低   平均

A2.270mg/m20.876mg/m21.279mg/m2

B0.946   0.433   0.611

C1.273   0.458   0.747

であり、総平均値は0.878mg/m2で右(4)(5)(6)の各測定結果を比較すると、数値が僅かながら漸減している傾向がみられるが顕著な変化はみられない。

2 騒音について

(1) 測定番号N―1の測定について

被告工場隣接地区では終日六〇ないし七〇ホンであるが、東側は空地が多いため遠距離まで騒音が伝わり一〇〇メートルの地点でも五五ホンを越えている。特に屑鉄(スクラップ)投入音は大きく、その頻度は多くないが、一〇〇メートル以上の地点でも六五ホンをこえることがある。

(2) 測定番号N―2の測定について

別表三のN―2によれば、いずれも九〇ホンをこえる騒音が測定された。

(3) 測定番号N―3の測定について

別表三のN―3によれば、いずれも九〇ホンをこえる騒音が測定された。

(4) 測定番号N―4の測定について

別表三のN―4イロによれば、いずれも七〇ホンをこえる騒音が測定され、場所によつては八三ホンの騒音が測定された。

(5) 測定番号N―5の測定について

別表三のN―5によれば、昭和四二年八月一一日現在の夜間の騒音は、蜆荘北西角附近で69.5ないし72.5ホン、原告土井一晃方前附近で73ないし76.5ホンであり、その他の測定地点でも一ケ所を除いていずれも五五ホンをこえる騒音が測定された。

(6) 測定番号N―6の測定について

別表三のN―6によれば、昭和四三年一月二三日現在において測定された騒音は、蜆荘北西角附近で七二ホン、佐藤鎮雄方前で六二ホン、原告奥田幸弘方前で六〇ないし六一ホンであり、同月二九日現在において測定された騒音は、蜆荘西角附近で七五ないし七六ホン、佐藤鎮雄方前で六三ないし六四ホン、原告奥田幸弘方前で六五ホンであつた。

(7) 測定番号N―7の測定について

別表三のN―7によれば、昭和四四年九月一二日現在において測定された騒音は昼間殆どの地点で七〇ホンをこえ、蜆荘北西角、原告土井一晃方北では七五ホンをこえ、広瀬木工所(製鋼工場北東)前道路で九〇ホンを記録した。夜間でも右三地点では七〇ホンをこえた。

(3) 測定番号N―8の測定について

別表三のN―8の測定結果によれば、昭和四五年三月二日現在の蜆荘北西角での騒音は七三ないし八〇ホン、原告奥田幸弘方前で六二ホン、原告林幹夫、同篠塚孝夫方南西附近で五八ないし五九ホン、原告土井一晃方北で七三ホンであつた。右(7)の測定結果と比較すると蜆荘北西角で三ないし四ホン、原告林幹夫、同篠塚孝夫方南西附近において四ないし五ホン減少している。

(9) 測定番号N―9の測定について

別表三のN―9によれば、昭和四五年三月一七日現在において測定された騒音は、蜆荘北西角で六八ないし七〇ホン、原告奥田幸弘方前で五八ホン、原告林幹夫、同篠塚孝夫方南西附近で六二ホンであつた。

(10) 測定番号N―10の測定について

別表三のN―10によれば、昭和四五年一〇月七日現在において測定された騒音は、蜆荘北西角で七五ないし七九ホン、原告奥田幸弘方前で六一ないし六三ホン、原告林幹夫、同篠塚孝夫方南西附近で五七ないし六四ホン、原告土井一晃方北で七四ないし七五ホンであつた。そして右測定値は右(8)の測定結果と殆ど変つていない。

(11) 測定番号N―11の測定について

別表三のN―11によれば、昭和四六年一〇月八日ないし一八日現在において測定された騒音は右(8)の騒音よりも更に若干減少している。

3、振動について

(1) 測定番号V―1の測定について

別表三のV―1によれば、原告久田竹治郎方において最高0.04ないし0.2mm/secであつた。

(2) 測定番号V―2の測定について

別表三のV―2によれば、原告宇佐美鉞一方二階窓敷居において最高0.5ないし0.6mm/secであつた。

(3) 測定番号V―3の測定について

別表三のV―3によれば、原告久田竹治郎方において最高0.05ないし0.06mm/sec、原告宇佐美鉞一方において最高0.05ないし0.1mm/secであつた。

(1) ばいじん

番号

S―1

S―2

S―3

S―4

日時

昭和年 月 日

三七、四、一一~

三七、四、一六

三八、七、一〇~

三八、一一、一

四一、七、二五

四四、一、八~

四四、一、一〇

四四、六、二~

四四、六、二三

測定者

名古屋市

名古屋市

(衛生局

公害対策課)

鑑定人

柴田正二

(名古屋市衛生

研究所に依頼)

愛知県

(公害課

県衛生研究所

県工業指導所)

測定方法

労研式

吸着じんあい計

インピンヂヤー法

KYS自動粉じん

捕集器

衛生試験法に準

ずるロダンカリ法

労研式

吸着じんあい計

KYSろ紙法

ハイボリユーム

エアサンブラー

デイジタル粉じん計

ハイボリユーム

エアサンブラー

デイジタル粉じん計

測定対象

じんあい数

じんあい量

ろ紙汚染指数

粉じん中の鉄量

2~0.4ミクロンの

じんあい数

粉じん中の鉄量

ばいじん汚染濃度

測定番号

S―3と同じ

測定地点

別図一の

B区域内では

S―(29)

S―(33)

S―(47)

C区域内では

S―(48)

ないしS―(51)

別表三の

S―2(1)

ないし(10)に

各記載のとおり

別図一のB区域内

S・N―(26)、

S―(27)、

S―(29)、S―(33)

ないしS―(35)

別図一の

A区域内では

S・N―(1)、

S―(5)、

S―(28)

B区域内では

S・N―(2)、

S―(6)、

S・N―(7)、

S―(29)

C区域内では

S―(3)、

S―(4)、

S―(8)

ないしS―(12)、

S―(30)

別図一の区域内では

S・N―(13)、

S・N―(14)、

S―(28)

B区域内では

S―(15)、

S・N―(16)、

S―(21)、

S―(22)、

S・N―(23)、

S・N―(26)、

S―(27)、

S―(29)、

S―(32)

C区域内では

S―(17)

ないしS―(20)、

S―(24)、

S―(25)、

S―(31)

測定結果

別表三のS―1

別表三のS―2の

(1)(3)ないし(5)

別表三の

S―2の(2)(6)

ないし(10)

別表三のS―3

別表三のS―4

番号

S―5

S―6

日時

四四、一一、六~

四四、一一、七

四四、一一、二五~

四四、一一、二七

四五、一一、五~

四六、三、二七

測定者

測定番号

S―4と同じ

測定番号

S―4と同じ

測定方法

ハイボリユーム

エアサンブラー

ハイボリユーム

エアサンブラー

測定対象

測定番号

S―3と同じ

測定番号

S―3と同じ

測定地点

別図一の

A区域内では

S―(28)

B区域内では

S―(29)、

S―(36)

測定番号

S―5と同じ

測定結果

別表三のS―5

別表三のS―6

(2) 騒音

番号

N―1

N―2

N―3

N―4(イ)

N―4(ロ)

日時

昭和年月日

四一、七、一九~

四一、七、二五

四二、六、八

四二、七、二九

四二、八、一〇

四二、八、一一

測定者

鑑定人

柴田正二

(名古屋市衛生

研究所に依頼)

愛知県

(公害課)

名古屋市

(衛生局

公害対策課)

高山工業(株)

名古屋市

(衛生局

公害対策課)

測定方法

精密騒音計

(プユエル・ケア製)

騒音計

騒音計

騒音計

騒音計

測定対象

工場騒音全般

(電気炉音

クレーン音

スパーク音

鉄材投下音)

集じん機の騒音

酸素工場内

酸素液化機の

窒素放出音

集じん機の

防音工事一部

完了後の騒音

集じん機の

防音工事施行前と

一部完了後の騒音

測定地点

別図一の

A区域内では

S・N―(13)、

S・N―(14)の、

N―(38)

B区域内では

S・N―(2)、

S・N―(7)、

S・N―(16)、

S・N―(23)、

S・N―(26)、

N―(37)、

N―(39)

別図二の

B区域内では

N―(57)、

原告

奥田幸弘方屋内、

N―(56)、

佐藤鎮雄方

同工場

北側B区域内

原告林幹夫、

同篠塚孝夫方附近

(距離

約五〇メートル)

別図二の

B区域内では

N―(56)、

N―(57)

被告工場内で

N―(70)、

N―(74)

ないしN―(90)

別図二の

B区域内では

N―(56)、

N―(57)

被告工場内で

N―(70)

ないしN―(74)

測定結果

別表三の

N―1

別表三の

N―2

別表三の

N―3

別表三の

N―4(イ)

別表三の

N―4(ロ)

番号

N―5

N―6

N―7

N―8

日時

四二、八、一一

四三、一、二三~

四三、一、二九

四四、九、一二

四五、三、二

測定者

名古屋市

(衛生局公害対策課)

名古屋市

名古屋市

(公害対策部)

測定番号

N―7と同じ

測定方法

騒音計

騒音計

指示騒音計

(リオンNA―07A)

高速度レペルレコーダー

(リオンLR―01A)

騒音計

測定対象

工場全体の騒音

集じん機の騒音

工場全体の騒音

(電気炉定常音

スパーク音

スクラップ投入音

クレーン音)

測定番号

N―7と同じ

測定地点

別図二のA区域内では

N―(53)、

N―(55)、

N―(62)、

ないしN―(69)

B区域内では

N―(54)、

N―(56)

ないしN―(59)

被告工場内で

N―(60)、

N―(61)

別図二のA区域内では

N―(55)、

N―(91)

B区域内では

N―(56)

ないしN―(59)、

N―(92)

被告工場内で

N―(93)

ないしN―(97)

別図一のA区域内では

S・N―(13)、

S・N―(14)、

N―(44)

ないしN―(46)

B区域内では

S・N―(7)、

N―(39)、

N―(41)

ないしN―(43)

(右はいずれも

条例基準位置)

測定番号N―7と同じ

但し、A区域内 N―(45)

B区域内 N―(43)の

二点を除く

測定結果

別表三の

N―5

別表三の

N―6

別表三の

N―7

別表三の

N―8

番号

N―9

N―10

N―11

日時

四五、三、一七

四五、一〇、七

四六、一〇、

測定者

測定番号

N―7と同じ

測定番号

N―7と同じ

松原暁美

測定方法

騒音計

騒音計

騒音計

測定対象

暗騒音

(電気炉休止時における騒音)

工場全体の騒音

(電気炉

定常音スパーク音スクラツプ

投入音

クレーン音)

原告ら居住地の騒音

測定地点

測定番号

N―8と同じ

測定番号N―7と同じ

但し、B区域内N―(43)の点を除く

別表三のN―11の測定場所欄

記載のとおり

測定結果

別表三の

N―9

別表三の

N―10

別表三の

N―11

(3) 振動

番号

V―1

V―2

V―3

日時

昭和年 月 日

四四、一、二一

四四、五、一

四四、五、一二

測定者

名古屋市

(公害対策部)

愛知県

(公害課)

名古屋市

(公害対策部)

測定番号

V―2と同じ

測定方法

振動計

国際振動機械

VM―三四〇〇

リオンKK VM―一二

シンクロスコープ

菊水電子工業KK 五五五

振動計

測定対象

酸素工場

コンプレッサーの振動

測定番号

V―1と同じ

測定番号

V―1と同じ

測定地点

別図二のB区域内では

V―(1)

ないしV―(3)

原告久田竹治郎方戸障子

(いずれも雨戸を閉じた状態)

別図このB区域内では

V―(8)

ないしV―(10)

原告宇佐美鉞一方

V―7原告奥田幸弘方附近

被告工場内で

V―(4)

ないしV―(6)

別紙二のB区域内では

V―(8)原告宇佐美鉞一方

V―(11)原告久田竹治郎方

V―(7)原告奥田幸弘方附近

被告工場内でV―(4)

測定結果

別表三の

V―1

別表三の

V―2

別表三の

V―3

三、因果関係

(一)  因果関係についての考え方

不法行為に基づく損害賠償請求訴訟にあつては、右行為と結果との間の因果関係も原告が立証すべきである。本件の場合もその例外ではあり得ない。

しかし一般に、ある行為と結果との間の因果関係を事実上推認せしめるいくつかの事実が立証された場合これをもつて右行為と結果との間に因果関係を認めうることは当然である。

被告がこのような認定をさけるためには、反証をもつて右推定を破る必要がある。

このような観点に立つて以下、因果関係の存否について判断する。

(二)  本件ばいじん汚染と被告工場の発生するばいじんとの因果関係

1 距離関係

前示第一、一に認定したとおり、原告ら居住地は被告工場に極めて接近しており、近いところは被告工場敷地境界線に接しておりあるいは公道一つを隔てるのみであり、最も遠いところでも右境界線から約三〇〇メートルの範囲内にある。その殆どは右境界線から約一五〇ないし二〇〇メートルの範囲内にある。

2 位置関係

前示第一、一に認定したとおり、原告ら居住地はいずれも被告工場の南ないし東、概ね南東の方角に位置している。

3 <証拠>によると次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

本件被害地域を含む名古屋市内の昭和三六年一月から昭和四六年三月までの最多風向を月別にみると、一月から四月までは殆ど毎年北西ないし北々西の風であり、五月は南ないし南々東の風の年と北ないし北西の風の年とが半々であり、六月ないし八月は殆ど南ないし南々東の風で占められ、九月ないし一二月は殆ど北ないし北西の風で占められている。そうすると、原告ら居住地域は被告工場からみてその最多風向下にある。

4、<証拠>によれば、北ないし北西の風の多い秋から春にかけて原告ら被害居住地におけるばいじん汚染濃度が増大することが認められ、右認定に反する証拠はない。

5 別表三のS―1、S―2の各測定結果によれば、被告工場附近において最もばいじん汚染濃度が高く、被告工場から遠ざかるにつれて漸減している。

6 <証拠>によれば、電気炉による普通鋼生産時のばいじん組成の成分比は別表四記載のとおりであり、右認定に反する証拠はないがこれによると被告工場から発生するばいじんも酸化鉄がその約六割を占めるものと推認されるところ別表三のS―2(8)ないし(10)によると、被告工場の風向下にあるとき被告工場から一〇〇メートルないし二〇〇メートル附近の地点における酸化鉄量が増大し特に北または西北西の風向時において、被告工場から南一〇〇メートルまたは東南東一五〇メートル附近の地点、(被害居住地附近)における酸化鉄量が増大する。

7、前示ニ、(一)1に認定のとおり、被告工場の電気炉が二基に増設された昭和三六年二月ごろから原告ら被害居住地附近におけるばいじん汚染が増大しはじめたが、<証拠>によればその後第一号集じん機による集煙効率が良好であつた昭和四三年二月から昭和四三年五月までの間は右ばいじん汚染も減少し右集煙効率の低下した同年六月ごろから再び原告ら被害居住地が大量のばいじんに見舞われるようになつたこと、また第二号集じん機による集煙効率が良好であつた昭和四六年一〇月から昭和四七年一月ごろまでの間は右ばいじん汚染も減少し右集煙効率の低下した昭和四七年二月ごろから再び汚染が増大したことが認められ右認定に反する証拠はない。

8 <証拠>によれば名古屋市内の昭和三六年以降一〇年間の風速をみると、年間を通じて、最大風速一〇m/sec以上の日がかなりあること、一方被告工場附近において平均ばいじん汚染量の増加は風速に比例し、二m/sec以下においては高い汚染はあまり出現しないが、風速四m/sec以上の時の汚染は一般に高くなることが認められ右認定を左右するに足りる証拠はない。

これは所謂、疾風汚染として知られている現象であり風が強くなると煙突から出るばいじんや排ガスが煙突自体による負圧領域に巻き込まれたり(ダウンウォツシュ)近くの建屋や地形、地物などによる乱気流に巻き込まれ(ダウンドロート)汚染源近くの地上に高濃度汚染をもたらすことになると説明されている。

そして、この現象が発現する条件は左の式によつて与えられるとされる。

He≦2.5h

ここで、Heは有効煙突高であり煙突の実体高度、温度浮力による上昇高度吹上げのモーメンタムによる上昇高度を加えたもの、Aは附近の建物の高さである。

即ち有効煙突高が近くの建物の高さの二倍半以上なればこの現象がおこるとされるのである。

前示第一、一において認定した各事実および<証拠>を総合すれば被告本工場には集じん機のそれを除き煙突はなく工場屋根に設けられた排煙口からばいじんが排出されており集じん機の煙突は最初六メートルその後二〇メートルに嵩上げされたがいずれにせよ被告工場の有効煙突高はせいぜい二〇メートルを若干こえる程度であり、一方被告工場附近の建屋には優に一〇メートルをこえる高さを有するものも幾つかあることが認められ、他に反証はないから右数式によれば、本件の場合強風下において充分被告工場による疾風汚染現象が出現する条件が存在するものと考えられ、従つて原告ら居住地附近におけるばいじん汚染は被告工場のばいじんがダウンドロート現象を起した結果惹起されたものであると考えられる。

9 <証拠>によれば、原告ら居住地附近においてばいじんを発生している工場は、被告の指摘するロックペイント株式会社、大建工業株式会社および共栄建設工業式株式会社各所属の三工場のみであり而も右各工場からのばいじんも例えば右ロックペイント工場の塗料の燃焼によるばいじんの排出は月一、二回程度であるなどその出現頻度およびばいじん濃度等は被告工場のそれと比較にならない程少なく、その他本件原告ら被害居住地附近には、被告工場に比肩すべきばいじん発生源は見当らないこと、を認めることができ右認定に反する証拠はない。

以上の1ないし9の各事実と前示甲第三四号証、証人曾我旗郎、同村瀬康夫の各証言、原告宇佐美義一本人尋問の結果を総合勘案すれば、原告ら被害居住地における前示ばいじん汚染が専ら被告工場から排出されるばいじんによつてもたらされたものであると判断することができる。

(三)  騒音、振動について

1 前示第一、一(二)に認定の距離関係および前示第二、一(二)2(2)(B)(3)に認定の被告の防音防振動措置と右防音防振動工事前の被告工場の状態、別表三のN―7、同N―8によれば、前示第二、一(二)2(2)(B)(ⅰ)(ⅱ)各防音工事後騒音が漸減していることの諸点に<証拠>を総合勘案すれば、本件騒音、振動は主として被告工場から流出、伝播するものであることを認めることができ右認定に反する証拠はない。

2 田中勝鉄工所の騒音、振動

(1) <証拠>によれば、昭和四二年一〇月二日名古屋市衛生研究所の行なつた測定結果によると原告宇佐美鉐十郎方における田中勝鉄工所の騒音は窓を開いた場合六九ホン、窓を閉じた場合五八ホンであることが認められ、右認定に反する証拠はない。

(2) しかし<証拠>によれば右各測定地点の被告工場からの距離はそれぞれ約五〇メートル、一四一メートル、一三九メートルであり、一方原告前田慶治、同貴船一夫方の被告工場からの距離はそれぞれ約一三七メートル、一八九メートルであることが認められ、右認定に反する証拠はなく、このように右測定地点とほぼ同程度またはこれよりも遠距離にある原告前田慶治、同貴船一夫方における被告工場からの騒音は別表三のN―11によれば一〇月八日昼でそれぞれ五一ないし五二ホン、五三ないし五五ホン程度に達しているのであるから右宇佐美鉐十郎、同宇佐美七男、同山田兼光方においてもこれと同程度の被告工場からの騒音が到達していたものと推認しうる。

(3) 更に、前示一(一)10に認定のとおり被告工場は二四時間操業を行なつており、一方<証拠>によれば田中勝鉄工所の操業時間は原則として午前八時から午後五時までで夜間操業は行なつていないことが認められ右認定に反する証拠はない。

(4) これらの事実と前示別表三のN―11の各測定結果を総合勘案すれば一部の原告即ち田中勝鉄工所附近の原告である宇佐美金義、宇佐美とう、宇佐美千恵子、笠原正照、笠原鶴子、宇佐美十一、宇佐美正子、宇佐美善三郎、宇佐美志やう、宇佐美幸子、伊藤正、伊藤スミ子、伊藤佳高、伊藤彰浩、宇佐美鉐十郎、宇佐美かぎ、宇佐美英雄については昼間、田中勝鉄工所が被告工場と競合して本件騒音、振動に原因を与えていること、しかし右被告工場の騒音、振動が本件騒音、振動に寄与する割合は、右原告らについても田中勝鉄工所のそれに比し極めて大きいこと、を推認することができ右(1)の事実も前示1の認定を左右するものではない。

3 交通騒音その他の公害源

(1) <証拠>によると、蜆橋通りは二車線をこえない車線を有する公道であり、前示第一、一に認定のとおり、原告土井一晃、同宇佐美仙次郎(文雄)、同久田後雄、同宇佐美義一、同高木優、同宇佐美兼市、同宇佐美武雄、同磯部幹夫の各居宅はいずれも右公道に面しており、右公道の交通は本件被害地域内では頻繁な部類に属するが右地域の中で他の公道の交通はさほど頻繁ではないことを認めることができ、他に反証はない。右蜆橋通りの交通騒音については、まず、被告工場の騒音被害がおよばないことを原告自身自認していることおよび前示認定の距離関係、後掲騒音の減衰率等から被告工場の騒音の影響が比較的少ないものと認められる原告佐藤章宅東北角交差点における騒音は別表三のN―11によれば昼間五八ないし六八ホン、夜間四〇ないし四六ホンとなつており、右蜆橋通りの交通による騒音は右数値あるいは右数値を若干下まわる程度のものと解されるところ、被告工場東南角交差点では被告工場の電気炉停止時を除き昼間は六九ないし七一ホン、夜間は六〇ないし七四ホンを示し、同西南角交差点では同じく昼間は八〇ないし八三ホン、夜間は六六ないし七七ホンを示し、原告宇佐美義一宅東南角交差点では同じく昼間は六八ないし七一ホン、夜間は四九ないし五三ホンといずれも前記地点における騒音よりもかなり高い値を示していること、これと前示別表三のN―5ないしN―8、N―10、N―11の各測定結果とを総合勘案すれば、右蜆橋通りに面した右各原告方においても夜間は専ら被告工場からの騒音が、夜間を除いては被告工場からの騒音と交通による騒音とが競合してそれぞれ騒音被害を与えていること、しかし被告工場が本件騒音に寄与する割合は右原告らについても交通騒音のそれに比し圧倒的に大きいこと、右蜆橋通りに面していないその余の原告らについては右蜆橋通りの交通騒音をはじめ交通による騒音は殆ど影響を与えていないことを推認することができる。

(2) <証拠>によれば、原告ら居住地附近には被告工場および右田中勝鉄工所のほかにもいくつかの町工場が散在するけれども、いずれも被告工場に比較すれば規模が小さく、右各工場から発する騒音、振動は原告らにさしたる影響は与えていないことを認めることができ右認定に反する証拠はない。

(3) 従つて、右交通騒音および町工場の存在も前示1の判断を左右するものではない。

四、原告らの被害

(一)  総論

1 ばいじんによるもの

(1) 被告工場の電気炉が二基となつた昭和三六年二月ごろから原告ら居住地内におけるばいじん量が増大したがこれは主として被告工場の電気炉から発生し流入したものであることは既に認定した。

右事実並びに前示一(一)9に認定した被告工場の鉄鋼生産量の推移および<証拠>によればその後昭和三八年二月まで右二基の電気炉の操業によりその間の原告ら被害居住地附近におけるばいじん汚染の程度は少なくともこの段階において行なわれた前示測定番号S―1の測定結果(別表三のS―1)とほぼ同一の状態を保つていたものと認められ、右認定に反する証拠はない。

(2) 昭和三八年二月に電気炉が増設され、以後昭和三九年一月まで電気炉三基を主体とする被告工場の操業が続けられたことは既に認定した。

右事実並びに<証拠>によればそのころ以後昭和三九年一月までは被告工場から発生、流入するばいじん量も増大し、この間のばいじん汚染は昭和三九年一月まで少なくともこの段階において行なわれた前示測定番号S―2の測定結果(別表三のS―2)とほぼ同一の状態を保つていたものと認められ、右認定に反する証拠はない。

(3) その後昭和三九年一月に電気炉が増設され以後現在まで電気炉五基による操業が続けられていること、右昭和四三年二月第一号集じん機の正式稼動によつてばいじん量がやや減少し、右集煙効率が低下した同年六月ごろから再びばいじん量が増加したこと、また昭和四六年一〇月第二号集じん機の正式稼動によつてばいじん量がやや減少し、右集煙効率が低下した昭和四七年一月ごろから再びばいじん量が増加したことはいずれも既に認定した。

右事実並びに<証拠>によると、右各集じん機正式稼動機ばいじん量が減少していた約四ケ月ずつの期間を除けば、昭和三九年以後現在まで少なくとも前示測定番号S―3ないしS―6の測定結果(別表三のS―3ないしS―6)とほぼ同程度のばいじん汚染が継続していたこと、そのうち特に昭和三九年以降昭和四六年までのそれが特に大きかつたことを認めることができ右認定に反する証拠はない。

(4) 前示一(一)9に認定した被告の鉄鋼生産量の推移および前示一(二)2(1)(A)に認定した発じん量と鉄鋼生産量の関係、および当時は前示ばいじん防除措置が殆ど行なわれておらず作業方法等についてもこの点の配慮がなされていなかつたこと等の事実と前示測定番号S―1ないしS―6の各測定結果を総合すれば、昭和三六年一二月以降昭和三九年一月ごろまでの本件被害地域におけるばいじん量は少なくとも右第一、二号集じん機稼動直後四ケ月ずつの期間を除いた昭和三九年以後現在までのばいじん量(別表三のS―4ないしS―6)の約五〇%程度はあつたものと推認することができる。

(5) 右測定結果(別表三のS―1ないしS―6)によればこれらのばいじん被害は被告工場に近いところで大きく、これから遠ざかるにつれて漸減し、右測定結果S―1およびS―4により右A区域における被害とBないしD各区域のそれとの割合を百分比で示せばB区域のそれは約六〇%、C区域のそれは約四〇%、D区域のそれは約三〇%である。

(6) また、前示認定の位置関係、風向および原告山田輝子、同土井一晃各本人尋問の結果によれば被告工場との関係において、北西ないし北風の風道からやや外れた位置関係にある原告土井一晃方における被害の程度はA区域における他の原告らのそれに比し、またこれと同様の位置関係にある原告林幹夫、同篠塚孝夫、同山田輝子(同清水千代)方における被害の程度はB区域における他の原告らのそれに比しそれぞれやや低いことが認められ、右認定に反する証拠はない。

2 騒音によるもの

(1) 被告工場の電気炉が二基となつた昭和三六年二月ごろから右ばいじんと共に原告ら居住地内に流入・伝播すする騒音が増大し、これが被告工場の前示別表二番号1ないし3、5ないし10の各公害発生施設から発生し流入したものであること、その後別表二番号256各記載のとおり昭和三七年ごろケース抜き装置が、同三八年ごろ圧延機がそれぞれ設置ないし増設され、稼動されたこと、昭和四〇年八月ごろドロップハンマーが設置、稼動されたが、これは昭和四一年二月ごろ稼動中止となり、その後撤去されたこと、この間前示一(二)2(2)(B)( )イ、同( )イのとおり昭和三六年九月以降一二月まで工場東側防音壁第一期設置工事が行なわれ、昭和四一年一月ごろ工場南側防音壁第一期設置工事が開始されたことは既に認定した。

右事実および証人村瀬康夫の証言並びに原告土井一晃本人尋問の結果と後掲音の一般的性質とを総合勘案すれば昭和三六年二月以降昭和四一年七月ごろまでの間、この段階で行なわれた前示測定番号N―1の測定結果(別表三のN―1)をかなり上まわる程度の被告工場の騒音がAB各区域の、またこれを若干下まわる程度の右騒音がC区域の原告ら被害居住地内に継続的に流入・伝播していたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(2) その後前示一(一)7、8、別表二番号7、8、9各記載のとおり昭和四二年六月ごろ第一号集じん機が設置され、同年七月ごろには酸素液化機・コンプレッサーが設置されそれぞれそのころから稼動されたこと、一方前示一(二)2(2)(B)(ⅰ)ロ、同(ⅱ)イロハ、同(ⅲ)、同(ⅳ)イロ、同(ⅵ)のとおり同年八月にはケース抜き装置による作業は中止となり、右施設は撤去され、同年八月二〇日ごろには東側防音壁第二期設置工事が完了し、同年八月二五日ごろには酸素液化機の消音器が設置され、昭和四三年一月末には第一号集じん機の防音工事が完成し、同年三月一日には南側防音壁第二期設置工事が完了し、同年四月には南側防音壁第一期設置工事が完了し、昭和四四年五月二五日には南側防音壁第三期設置工事が完了したことは既に認定した。

右各事実と前示(1)に挙示した各証拠とによると、昭和四一年八月ごろから昭和四四年九月ごろまでの間、この段階で行なわれた前示測定番号N―7の測定結果(別表三のN―7)により推定される別表五の複合音を上まわる程度の、特に夜間は右期間中に行なわれた前示測定番号N―5の測定結果(別表三のN―5)を上まわる程度の被告工場の騒音がAB各区域の、またこれらを若干下まわる程度の右騒音がC区域の原告ら被害居住地内に継続的に流入・伝播していたこと、またこの間昭和四二年六月当時第一号集じん機試運転中は前示測定番号N―2の測定結果(別表三N―2)と同年七月当時酸素液化機稼動中前示測定番号N―3の測定結果(別表三のN―3)また同年八月当時右集じん機試運転中は前示測定番号N―4の測定結果(別表三のN―4)とそれぞれ同程度の右各騒音がAB各区域の、またこれを若干下まわる程度の右騒音がC区域の、各原告ら被害居住地に流入・伝播していたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(3) その後前示一(二)2(2)(B)(ⅰ)ハ、同(ⅶ)(ⅷ)のとおり昭和四五年一月一五日酸素工場コンプレッサー防音工事が、同年二月一〇日工場東側防音壁第三期設置工事と電気炉専用コンプレッサー設置工事がそれぞれ完成し、同年七月二八日圧延機専用コンプレッサー設置工事が完了し、結局被告工場のすべての防音工事が完了したことは既に認定した。

而して、右(1)に挙示した証拠および右認定の各事実によれば、昭和四四年一〇月以降昭和四五年七月ごろまではこの段階において行なわれた前示測定番号N―8(別表三のN―8)と同程度の被告工場の騒音がAB各区域の、またこれを若干下まわる程度の右騒音がC区域の原告ら被害居住地に流入・伝播していたこと、また右各防音工事完成後の昭和四五年八月以降現在まではこの段階において行なわれた鑑定人松原暁美の鑑定結果(別表三のN―11)と同程度の騒音がAないしC各区域の原告ら被害居住地に流入・伝播していたことを認めることができ、右各認定に反する証拠はない。

3 振動によるもの

(1) 被告工場の電気炉が二基となつた昭和三六年二月ごろから右ばいじん、騒音と共に原告ら居住地内に流入伝播する振動も増大し、これが被告工場の前示別表二番号1、2各記載の各公害発生施設から発したものであること、その後被告は別表二番号5、6各記載のとおり昭和三七年ごろにはケース抜き装置を、昭和四〇年八月ごろにはドロップハンマーをそれぞれ設置稼動し、これらによる振動も前示振動とあわせて原告ら居住地内に伝播しはじめたこと、その後、住民の苦情により右ケース抜き装置については昭和四二年八月ごろ、ドロップハンマーについては昭和四一年二月ごろ、いずれもこれによる操業をとりやめたこと、右装置が撤去せられたのは被告の行なつた防振動対策があまり効果がなかつたためであること、その後、コンプレッサーによる振動対策として昭和四五年一月一五日前示一(二)2(2)(B)(ⅶ)のとおり消音器設置工事を完成したことおよび同年二月一〇日と同年六月二五日には前示一(二)2(2)(B)(ⅷ)のとおり電気炉と圧延機専用のコンプレッサーを設置する工事をそれぞれ完成させたことは既に認定した。

(2) <証拠>によれば、被告としては右ドロップハンマー、ケース抜き装置の撤去のほかは前示(ⅶ)(ⅷ)に認定のコンプレッサー関係の防振動対策をとつたのみで、他に何等有効な防振動対策は行なつていないことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(3) 右事実と<証拠>によれば昭和三七年から昭和四二年八月までの期間を除いて昭和三六年以降現在まで前示測定番号V―1ないしV―3の各測定結果(別表三のV―1ないしV―3)とほぼ同程度の振動が、これに対して昭和三七年から昭和四二年八月までの間は右ドロップハンマーおよびケース抜き装置から発生するはるかに右程度をこえた振動がAないしD区域の原告ら被害居住地に流入・伝播していたことを認めることができ右認定に反する証拠はない。

(二)  各論

1 前示四(一)総論に認定した各事実および前示測定結果(別表三)並びに<証拠>によれば、右ばいじん、騒音、振動(振動については主として前示ドロップハンマーおよびケース抜き装置のそれ)によつて、原告らは別表七ⅠⅡ記載の快適な生活に対する被害および同表Ⅲ記載の一般的な健康に対する被害を蒙つておりまたはかつて蒙つたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

2 疾病との因果関係

右事実および後掲ばいじんの一般的性質と本件ばいじんの特質を総合勘案すれば、原告らのうち別表七Ⅳ疾病欄記載の各原告らは昭和四〇年一月以降昭和四二年一一月までの間右ばいじんによつて同欄記載の各疾病につき、症状増悪の被害を蒙つたことを認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

3 原告らの被害についての主張事実中疾病罹患の点を含めその余の点については<証拠>によつては未だこれを認めるに足りず、他には何等これを認めるに足りる証拠はない。

五、但し被告工場から若干のばいじん、騒音を生じていることついては当事者間に争いがない。

第三、違法性(受忍限度)

一、総論

(一)  受忍限度と公法上の基準

自己の工場内での操業によつて、ばいじん、騒音、振動を発生させ、これが工場外に流出伝播して他人の生活上の利益を侵害することがあつても、それが一般的な社会生活上容認された範囲を逸脱していない限り、即ち一般人が社会生活上受忍すべき限度(受忍限度)をこえていない限り右生活利益の侵害は違法性がない。

ところで、右ばいじんについては、後掲(二)1(1)(2)のとおり各個々の企業がばいじんの排出について、遵守すべき準則としての排出基準と、これと異なり一般に維持されることが望ましい基準、即ち行政上の目標としての性格を有する環境基準とが定められており、

騒音については、後掲(二)2(1)(2)のとおり右排出基準にあたる規制基準と、環境基準とが定められており、振動についても後掲(二)3のとおり右排出基準にあたる規制基準が定められている。

そして右ばいじん、騒音、振動についての受忍限度を決定するに際してはこのような公法上の各基準の設けられた趣旨、目的に照らしてこれらを参酌するほか、更に右各公害の性質、人間におよぼす生理的、心理的影響度、被害場所の地域性、被害のおよぶ範囲程度等の具体的事情をも考慮してこれをなすべきものである。

(二)  公法上の基準

1、ばいじんについて

(1) 排出規制基準

ばい煙の排出規制はばい煙の排出の規制等に関する法律(昭和三七年法律第一四六号、同年一二月一日施行。以下ばい煙規制法という。)第五条第一項に基き施行地域の排出基準として、昭和三八年厚生省、通商産業省告示第二号により電気容量二〇〇〇キロボルトアンペア以上で酸素吹込式の製鋼用電気炉にあつては一熔解期間の平均値が温度零度、圧力一気圧の状態に換算した気体一立方メートルにつき0.9グラムと定められ、右基準は昭和三八年九月一日から適用されたが、名古屋市は昭和三九年政令第二五八号により同年九月一日から右基準の施行地域となつた。そして愛知県でも右地域指定を受けて愛知県公害防止条例(昭和三九年県条例第四八号、同年九月二日施行、以下旧条例という)とそれを受けた昭和四二年県告示第二六六号(同年四月一二日施行)により国の右排出基準と同じ基準を設けた。ところで右排出基準はばい煙規制法の廃止に替る大気汚染防止法(昭和四三年法律第九七号、同年一二月一日施行)、同法施行令(昭和四三年政令三二九号、同年一二月一日施行)および同法施行規則(昭和四三年厚生省、通商産業省令第二号、同年一二月一日施行)によつても依然維持され、右施行規則の全部改正(昭和四六年厚生省、通商産業省令第一号、同年六月二四日施行)によつて変圧器の定格容量一〇〇〇キロボルトアンペア以上の製鋼用電気炉(施行令別表第一、一二参照)にあつては一工程中の平均値が温度零度、圧力一気圧の状態に換算した排出ガス一立方メートルにつき、排出ガス量が四万立方メートル以上のものは0.20グラム、四万立方メートル未満のものは0.40グラムと改められ、愛知県においても右を受けて愛知県公害防止条例(昭和四六年県条例第三二号、同年一〇月一日施行)を制定(旧条例は廃止)し、その第一九条第一項に基づく同施行規則(昭和四六年県規則第七五号、同年一〇月一日施行)第九条により変圧器の定格容量が六〇〇キロボルトアンペア以上の製鋼用電気炉(同別表第一、一三参照)にあつては一工程中の平均値が温度零度、圧力一気圧の状態に換算した排出ガス一立方メートルにつき0.40グラムと定めている。

(2) 環境基準

公害対策基本法(昭和四二年法律第一三二号、同年八月三日施行)第九条に基づいて定められた浮遊粒子状物質に係る環境基準についての環境庁告示(昭和四七年一月一一日告示第一号)によれば、人の健康を保護するうえで維持することが望ましい基準として、大気中に浮遊する粒子状物質であつてその粒径が一〇ミクロン以下のものについて(一)連続する二四時間における一時間値の平均値が大気一立方メートルにつき0.10ミリグラム以下であること、(二)一時間値が大気一立方メートルにつき0.20ミリグラム以下であること、の二つの要件のいずれをも満たすべきものとされている。

そして、右基準は工業専用地域については適用を除外されているが、その他の地域については、工業地域をも含め、均しく適用するものとされている。

2 騒音について

(1) 規制基準

名古屋市においては昭和二九年ころ「名古屋市騒音対策協議会」の議を得て「騒音防止に関する指導規準」を定めたがそれによると、音源(音源が建物または施設の内部にあるときは、その建物または施設を音源とみなす)の至近距離において、日本工業規格(JIS. B, 7, 201)により製作された機器の測定の結果を計量法(昭和二六年法律第二〇七号)に定められた単位ホンで表わした数値が、第一種区域(工業地域および工業専用地区)は七五ホン以内、第二種区域(準工業地域および商業地域のうち別に定める区域)は六五ホン以内、第三種区域(商業地域のうち第二種区域に含まれる区域を除いた区域)は五五ホン以内、第四種区域(住居地域および住居専用地区)は五〇ホン以内とされていた。

その後制定された愛知県公害防止条例(昭和三九年県条例第四八号、同年九月二日施行)第一〇条第三項に基づいて設定された騒音基準(昭和四〇年県告示第四四二号、同年八月四日施行)によると、原則として工場または事業場の境界線から外へ五メートルの地点で地上から一メートルの高さにおいて日本工業規格Z八七三一に定めるところにより測定することとして、左のとおりである。

地域

工業

専用

地区

工業

地域

準工業地域

および

商業地域

住居

地域

住居

専用

地域

用途地域の指定を

受けていない

地域

時間

午前八時~午後八時

(ホン)

七五

七〇

六五

五五

五〇

六〇

午前六時~午前八時

午後八時~午後一一時

七五

六五

六〇

五〇

四五

五五

午後一一時~翌午前六時

七〇

六〇

五〇

四〇

四〇

五〇

そしてその後制定された愛知県公害防止条例(昭和四六年県条例第三二号、同年一〇月一日施行)第一九条第一項に基づく施行規則(昭和四六年県規則第七五号、同年一〇月一日施行)第九条により設定された騒音の規制基準は当分の間日本工業規格Z八七三一に定めるところにより測定することとして左のとおりである。

地域

工業

専用

地域

工業

地域

近隣商業地域、

商業地域および

準工業地域

住居

地域

第一種住居専用地域

および

第二種住居専用地域

その他の

地域

時間

昼間

午前八時~

午後七時

(ホン)

七五

七〇

六五

五〇

四五

六〇

朝夕

午前六時~

午前八時

午後七時~

午後一〇時

七五

六五

六〇

四五

四〇

五五

夜間

午後一〇時~

翌午前六時

七〇

六〇

五〇

四〇

四〇

五〇

単位 A特性ホン

(2) 環境基準

公害対策基本法(昭和四二年法律第一三二号、同年八月三日施行)第九条に基づき昭和四六年五月二五日閣議決定により設定された環境基準によれば、地域類型AA(療養施設が集合して設置される地域などとくに静穏を要する地域)については昼間四五ホン以下、朝夕四〇ホン以下、夜間三五ホン以下、地域類型A(主として住居の用に供される地域)については昼間四五ホン以下、朝夕四五ホン以下、夜間四〇ホン以下、地域類型B(相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域)については昼間六〇ホン以下、朝夕五五ホン以下、夜間五〇ホン以下であり、右A地域のうち二車線を有する道路に面する地域については右基準に五ホンを各加えた数値(昼間五五ホン以下、朝夕五〇ホン以下、夜間四五ホン以下)、二車線を越える車線を有する道路に面する地域については一〇ホンを各加えた数値(昼間六〇ホン以下、朝夕五ホン以下、夜間五〇ホン以下)であり、B地域のうち二車線以下の車線を有する道路に面する地域については右基準に五ホンを各加えた数値(昼間六五ホン以下、朝夕六〇ホン以下、夜間五五ホン以下)、二車線を越える車線を有する道路に面する地域は昼間六五ホン以下、朝夕六五ホン以下、夜間六〇ホン以下とそれぞれ定められている。そして昭和四六年九月二〇日環大特第五号(環境庁大気保全局長から各都道府県知事あて)によると右地域類型Aは概ね都市計画法第九条第一項ないし第三項に定める第一種、第二種の住居専用地域および住居地域であり、同Bは概ね同法第九条第四項ないし第七項に定める近隣商業地域、商業地域、準工業地域および工業地域であるとしている。

3 振動について

規制基準

愛知県公害防止条例(昭和三九年県条例第四八号、同年九月二日施行)第一〇条第三項に基づく愛知県告示により定められた振動の規制基準(昭和四二年県告示第二六七号、同年四月一二日施行)によると原則として工場事業場の敷地境界線の地表で測定し上下動、水平動のうち大きい方の数値をとることとして左のとおりである。

地域

工業

専用

地域

工業

地域

準工業地域

および

商業地域

住居

地域

住居

専用

地域

用途地域の指定を

受けていない地域

時間

午前八時~

午後八時

1.5

1.2

0.9

0.6

0.3

0.7

午前六時~

午前八時

午後八時~

午後一一時

1.2

0.9

0.6

0.3

0.3

0.5

午後一一時~

翌午前六時

0.9

0.6

0.3

0.3

0.3

0.3

単位 mm/sec

その後新たに制定(旧条例は廃止)された愛知県公害防止条例(昭和四六年県条例第三二号、同年一〇月一日施行)第一九条第一項に基づく施行規則(昭和四六年県規則第七五号同年一〇月一日施行)第九条により定める振動の規制基準は同じく工場等の敷地境界線の地表で測定し、上下動、水平動のうち大きい方の数値をとることとして左のとおりである。

地域

工業

専用

地域

工業

地域

近隣商業地域

商業地域および

準工業地域

住居

地域

第一種住居専用地区

および

第二種住居専用地区

その他の

地域

時間

昼間

午前八時~

午後七時

1.5

1.2

0.9

0.6

0.3

0.7

朝夕

午前六時~

午前八時

午後七時~

午後一〇時

1.2

0.9

0.6

0.3

0.3

0.5

夜間

午後一〇時~

翌午前六時

0.9

0.6

0.3

0.3

0.3

0.3

単位 mm/sec

(三)  本件ばいじん、騒音、振動の性質、人体への影響

1 ばいじんについて。

(1) ばいじんの一般的性質、人体への影響

(A) 一般に大気汚染物質のうち、亜硫酸ガス(SO2)一酸化炭素(OO)窒素酸化物(NO, NO2)等のガス状汚染物は拡散速度も速く稀薄化する時間は比較的短いが、ばいじん、硫酸ミストなどのエアロゾルとよばれる粒子状汚染物は粒子が比較的大きいため動きがにぶく、簡単には稀薄化せず、遠距離まで到達しないがそのおよぼす影響は局部的ではあつても降下した地上には永続的な被害を残すと言われている。

(B) ばいじんのうち、比較的粒子が大きく従つて沈降しやすい一〇〇ミクロン以上のばいじんは降下ばいじんとして発生後短時間で地表に落下するが、粒子が小さく従つて沈降しにくい一〇ないし0.1ミリロンのばいじんは浮遊ばいじんとして空気中に浮遊し、人体に吸収されることが多く、右浮遊ばいじんはまずその侵襲部位である目、鼻、のどなどの粘膜に感覚的刺激を与え、次いで呼吸器系、特に気管支に影響を与えることが多いがそれ以前に肺活量等の肺機能に影響を与えることも多く、また、せき、タンの増加として自覚されることもあるとされている。浮遊ばいじん中粒径約六ミクロン以上の比較的粗大なばいじんは鼻毛により体外に排出され肺には達しないがそれより小さな粒子のものは内部に侵入する。しかし気管支や小気管支の壁に附着したものはせん毛によつて再び外部に押出され、タンに吸着して排出され、結局肺の深部に達して血流に触れて吸収されるのは一ミクロン前後のものが最も多い。ところで浮遊ばいじん中主成分の一つであるカーボンは、それ自体無害であるが物を吸着する性質を有するため空気中において浮遊する間に空気中のタール性有機物を吸着しており、建物や衣服を汚し、また一酸化炭素、亜硫酸ガス、硫酸蒸気、3.4ベンツビレン等の有害物質を吸着しているためそれらとの相乗効果によつて人体に健康上有害な影響をおよぼすものとされている。

(2) 本件ばいじんの粒度分布

(A) <証拠>によれば昭和三七年四月名古屋市衛生研究所が当時の本件ばいじんの粒度を測定したところ0.5ミクロン以下のものが大部分を占めていたこと、昭和三八年七月名古屋市が当時の本件ばいじん中酸化鉄ばいじんにつき調査したところ、その主体は一ミクロン以下のものであつたことを認めることができ右認定に反する証拠はない。

粒度(ミクロン)

熔解期

酸素吹精時

〇.〇以下

五〇

〇.〇~〇.五

二五

〇.五~〇

二五

一五

一~五

四五

一〇

五~一〇

一〇~二〇

二〇以上

一四

(B) 右事実および前示甲第四四号証乙第四号証によれば被告工場の電気炉から発生するばいじんの粒度分布の重量比をパーセントによつて示すと大凡左のとおりであることが認められる。

また酸素吹精時に最も多量のばいじんが発生することは既に認定したとおりでありそうすると被告の電気炉によつて発生するばいじん中、一〇ミクロンをこえるばいじんの総重量比は大凡一〇ないし二〇パーセント以内であり、五ミクロン以下のばいじんのそれは約八〇パーセント程度であるということができる。

(3) 本件ばいじんの特質

本件ばいじんは前示ばいじんの一般的性質を有するほか前示第二、三、(二)6に認定したとおり酸化鉄を主成分とするが、<証拠>によれば愛知県公害対策課が昭和四四年一二月二四日から翌昭和四五年三月一三日まで一五回連続して行なつたばい煙の測定に伴い捕集した本件ばいじんを県衛生研究所において原子吸光分析法により分析したところ、別表六(環境上の目安欄を除く)記載のとおり鉛、亜鉛、カドミウム、鉄、マンガン、クロム、銅等の重金属類を含有していることが明らかになつたことが認められ、反証はない。

日本産業衛生協会が昭和四五年三月三一日職場環境気中の有害物質の労働衛生許容濃度として、八時間労働の場合の平均濃度でしかも、当該有害物の濃度がこの数値以下であれば殆どすべての労働者に悪影響がみられない濃度として示した数値は左のとおりである。

鉛       0.15mg/m2

酸化カドミウム 0.1mg/m2(カドミウム0.088mg/m2)

クロム     0.1mg/m2

亜鉛      五mg/m2

マンガン    五mg/m2

右数値は、動物実験で肝臓に異常をきたしたり、遺伝的な影響が出る量(最大無作用量)に通常百倍の安全率をかけたもので、しかも一般的な望ましい環境基準(二四時間平均値)とされているものはさらにその数値に一〇〇倍ないし、一、〇〇〇倍の安全率をみこして定めるべきものであるとされているところ、右甲第四六号証の一〇ないし一二によれば昭和四五年現在において厚生省により示されているそれは別表六の環境上の目安欄記載のとおりである。そして右数値に照らせば、被告工場周辺で採取された重金属の量は平均値において(かつこ内は最高値において)、亜鉛が4.24倍(10.6倍)、鉛が6.8倍(23.4倍)の高倍率を示している。

(4) 本件ばいじん被害の特殊性

(A) <証拠>によれば、次の事実が認められ右認定に反する証拠はない。

石油コンビナート、火力発電所などのばいじんによる被害と異なり電気炉によるばいじんの被害については作業工程の関係上排出されるばいじんが間歇的でありその排出源における排出量は瞬間毎あるいは時間毎に著しく変化する点に特徴があり、いかに精密な測定方法を用いても測定された数値が直ちに平時および最高汚染時の状態を示すものではない。

(B) ハイボリュームエアサンブラーを用いたばいじんの長時間連続測定によつても、得られる結果は測定時間中の平均値(二四時間平均値または一時間平均値)にすぎないから、右測定時間中仮りに一時間の間高濃度のばいじん汚染が出現し、甚大な被害を与えることがあつても、他の二三時間の間極めて低濃度の汚染が継続するならば二四時間値の一時間平均値としては極めて低い数値となつて現れて来る場合がありうる。

点音源

線音源

距離(倍)

減少量(ホン)

距離(倍)

減少量(ホン)

2

6

2

3

3

10

3

5

4

12

4

6

5

14

5

7

6

16

6

8

7

17

7

9

8

18

8

9

9

19

9

10

10

20

10

10

2 騒音について

(1) 騒音の一般的性質、人体への影響

(A) 一般に騒音をも含めた音の距離による減衰率は、左のとおりであるとされている。

従つて他の条件を考慮しない場合は音源から三〇メートルの地点において、九〇ホンの騒音は三〇〇メートルの地点においても七〇から八〇ホンの騒音として感じられるのである。

また音は光と異なり直進するだけでなく回折作用により物のかげにもまわり込んで伝わつて行きまた壁面に隙間があればそこからも入りこんでゆく性質を持つている。

更に、音は空気の振動であるから風の影響も受け易く風下には比較的よく伝わつて行く。風があると風速が音速に加算され、風下には音速が大きく風上には小さくなる。風速は一般に上層ほど速いから風上では上方に曲り、風下では下方に曲る。従つて風下にあつては物かげにも比較的音がよく到達するのである。

(B) 騒音は好ましくない音のことであるのでこれを長時間聞いていると安眠の妨害、会話、通話の妨害、注意力の低下、作業能率の低下、不快感や焦燥感の発生、聴力障害、新陳代謝機能の喪失など人間になんらかの肉体的、心理的悪影響をおよぼすが、その影響は感覚的なものが大きいところから単純に騒音レベルのみで一率に決めることはできない。しかし一般的にはそのレベルが五〇ホンを超えると呼吸数脈はく数が増加し、脳波の波ブロッキングが現われ五五ホンから六〇ホンを超えると尿中ホルモン量や血液成分に生理的変化が現われ会話妨害度が顕著(聴取明瞭度七〇%以下、会話可能距離二メートル以下)となるとされている。

即ち日常生活にあつて五五ないし六〇ホン以上になると睡眠妨害、胃の不調、食欲不振、頭痛、耳鳴、血圧上昇、心悸抗進などの情緒的身体的影響が現われ、八〇ホン以上になると聴力損失のおそれが出て来るとされている。また夜間の騒音レベルが四〇ホンになると就眠時間の延長、覚醒時間の短縮、脳波や血液所見などからみた睡眠深度への影響などが出現するとされている。

(2) 本件騒音の特質

<証拠>によれば次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

被告工場の電気炉定常音はブーンというおおいかぶさるような圧迫感を与える不快な音でありその間バリバリというスパーク音がまじつており、また圧延機の騒音はガーという定常的な稼動音のほか一分間に数回ガチャンという衝撃音がまじつており、集じん機から発する騒音は、ジェット機のごう音に酷似したゴーッというきれ目なしに続く騒音であり、酸素液化機の窒素放出音は一五分間隔で五秒間ずつズドンズドンという大砲の発射音のような断続的な騒音であり、スクラップ投入音、搬送設備による騒音、ドロップハンマーによる騒音、ケース抜き装置による騒音等はいずれも鉄と鉄がぶつかり合うガチャンという衝撃音が主体であつてこのように被告工場から発生、流出する騒音はいずれも耳について眠れない等情緒的な影響を与えやすい音である。

3、振動について

振動の性質、人体への影響

振動の人体への伝達の仕方にはさく岩機使用時における如く人体への限局された部位のみに作用する局所振動と、交通車輛利用時における如く、足、臀部等を経て、体全体に作用する全身振動とがあり住居振動による振動被害については主として右の全身振動が問題となる。

ところで一般に全身振動の影響は水平振動で軽く、上下(垂直)振動で著しいとされ、振動数、変位の大きさ、加速度等との関係は明らかではないが、比較的強い振動が人体に作用した場合体重の減少、眼圧の上昇、内耳の萎縮性退行性変化が現われ、更に自律神経系に影響をおよぼし、特に循環器系の反応が顕著で末梢血管が収縮し血圧が上昇し、脈はく数も増加し、また発汗や皮膚電気抵抗の低下などが現われるとされている。そして内分泌系にも影響をおよぼし、尿中ホルモン量に生理的変化が現われ、女子では月経異常が現われてくる。呼吸器系の反応として一回呼吸量および呼吸数の増大により換気量(酸素消費量)の増大が認められる。そのほか膝蓋腱反射の低下、手術振せんがおこり、臀部温、舌下温が上昇したりする。また比較的弱い振動によつても朝早く目がさめ、夜寝つきが悪いなどなんらかの睡眠障害や気分がいらいらする、不快などの情緒的影響あるいは頭が痛いめまいがする、体がだるく疲れやすいなどの身体的影響が現われるとされている。

(四)  原告ら被害居住地附近の状況

<証拠>によれば次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

原告ら被害居住地附近は東西を中川運河と東臨港線に狭まれ、南北を昭和橋通と蜆橋通に狭まれた地域で東に行くと昭和橋中学校と八番町の住宅街に通ずる地域であり、原告らの被害居住地を含む中川区外新町、大山町および同八剱町一帯は大正一三年一〇月二七日市街地建築物法(大正八年四月五日法律第三七号)に基づく内務省告示第六七五号によつて工業地域に指定され、被告の製鋼工場の所在地である中川区福川町二丁目一番地は昭和一五年三月一三日同法に基く内務省告示第一一三号によつて工業専用地区に指定されたこと、けれども原告らの被害居住地附近は古くから個人の居宅が一かたまりとなつて存在し、おそくとも被告が製鋼業に転じた昭和三四年四月以前からこのような個人住居が多数集つて一個のまとまつた住宅地帯を形成して来ており、現在では戸数数百戸を数え、人口数千人におよぶ住宅密集地帯を形成している。

(五)  先住関係

前示第一に認定のとおり原告福永九州男、同福永キミ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同宇佐美美代子、同宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井節子、同大井麻友美、同土井雅喜、同森下靖人、同炭田しずえ、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己、同宇佐美幸治、同宇佐美清、同小園尚雄、同小園昭美、同小園誠司、同久田香織、同宇佐美清子、同宇佐美紀子、同奥田幸弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同奥田美加子、同宇佐美淳史、同佐藤清史、同大橋喜美、同篠塚孝夫、同篠塚照子、同篠塚泰伸、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利正雄、同毛利宮子、同服部隆、同原清子、同原茂樹、同高橋末夫、同高橋ふみよ、同高橋ひめ、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内雅弘、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同木原利淳、同木原ナスエ、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子、同平本勝也、同宇佐美昭子、同宇佐美仁克、同宇佐美裕子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同笠原正照、同笠原鶴子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同宇佐美巌、同磯部好作、同宇佐美資子、同貴船修、同藤田博美、同藤田直美、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢得郎、同小沢典子、同小沢一寿、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同宇佐美恵子、同伴修造、同伴京子、同伴英子、同八神ほずみ、同西尾信行、同佐藤正幸が本件被害地域に居住したのはそれぞれ、別表一Ⅳ欄記載のとおり(但し原告宇佐美昭子は昭和三五年一一月から同宇佐美資子は昭和三六年一一月から)でありいずれも被告が製鋼業に転じた昭和三四年四月以後である。

しかし右原告らのうち原告宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井麻友美、同土井雅喜、同宇佐美幸治、同宇佐美浩、同久田香織、同宇佐美紀子、同宇佐美淳史、同佐藤清史、同大橋喜美、同服部隆、同原清子、同原茂樹、同宇佐美仁克、同宇佐美裕子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同宇佐美巌、同磯部好作、同貴船修、同藤田博美、同藤田直美、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同佐藤正幸らはいずれも右被害居住地において出生したものであり、出生は子供自体にとつて選択する余地のないものであるから先住性の関係についてはその母または父の居住開始時期をもつて基準とすべきところ、右原告らの母または父が被告の製鋼業転業の時期を基準にすればいずれもこれよりも先住の関係にあることは前示第一に認定したところから明らかであるので、同原告らに対しては、被告に先住性ありといえないこともまた明らかである。

また通常任意処分や放棄を想定しえない法益例えば人の健康や精神に対する侵害については居住の先後関係は受忍限度決定の要素となしえないものと解すべきであり、右以外の侵害についても被害者が、かかる侵害あることを知りつつ敢えて移住する等既に存在する危険を自ら引受けたと認められる特段の事情を被告において立証しない限り受忍限度決定の際これを考慮する必要はないものと解すべきである。

而して本件についてこれをみれば、本件ばいじんが有害物質を多量に含有していること、別表七、Ⅱ、Ⅳ欄記載のとおり原告福永九州男、同福永勇、同坂井忠男、同坂内まつ江、同森下靖人、同西村正己、同小園尚雄、同小園誠司、同宇佐美清子、同奥田美加子、同篠塚孝夫、同篠塚照子、同篠塚泰伸、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利正雄、同毛利宮子、同木原利敦、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子、同宇佐美昭子、同笠原鶴子、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢典子、同小沢一寿、同伴英子、同八神ほずみの原告らはその健康につき同欄記載の健康上の被害を受けつつあることは既に認定したとおりであり、また原告福永ミキ、同宇佐美美代子、同土井節子、同炭田しずえ、同今枝史郎、同屋地幸実、同小園昭美、同奥田幸弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同高橋末夫、同高橋ふみよ、同高橋ひめ、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内雅弘、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同木原ナスエ、同平本勝也、同笠原正照、同宇佐美資子、同小沢得郎、同宇佐美恵子、同伴修造、同伴京子、同西尾信行、同大野昇一、らが右侵害を認容しつつ移住したことについては被告は何等の立証をせず、他には何等これを認めるに足りる証拠はない。

二、各論

(一)  ばいじんについて

1 環境基準値との比較

(1) 前示認定のとおり

原告ら被害居住地における昭和三九年以後現在までのばいじん汚染の程度を示す昭和四四年一月、一一月、昭和四五年一一月ないし昭和四六年三月の各測定結果である別表三のS―4ないしS―6の汚染濃度と前示公害対策基本法に定める環境基準値を比較すると、それぞれ左表ⅠⅡ欄記載のとおりであり、右環境基準値は一応一〇ミクロンをこえる粒子を除外しているので、この点を既に認定した本件ばいじんの粒度分布によつて修正を施すと右基準値との比率は左表Ⅳ欄記載のとおりであり、ABC各区域についてそれぞれ

A区域

最高30.8倍、最低4.7倍、平均16.7倍

B区域

最高17.5倍、最低3.5倍、平均6.7倍

C区域

最高10.2倍、最低3.5倍、平均6.3倍

となる。

また、D区域のばいじん汚染については、前示第二、四(一)1(5)において認定した事実と右別表三の3―4ないしS―6によれば環境基準値との比率は最高7.7倍ないし9.3倍、最低1.4倍ないし2.6倍、平均3.4倍ないし4.7倍となり右期間中を通じた本件被害地域におけるばいじん汚染の環境基準値との比率は最高30.8倍、平均8.4倍となる。

(2) また前示第二、四(一)1(4)において認定した事実と右別表S―4ないしS―6によれば昭和三六年一二月から昭和三九年までのAないしD区域の各ばいじん汚染と右環境基準値との比率はそれぞれ

A区域 最高15.4倍 平均8.3倍

B区域 最高8.7倍 平均3.4倍

測定S―4

測定S―5

測定S―6

測定値

環境基準との比較

修正値

環境基準との比較

測定値

環境基準との比較

修正値

環境基準との比較

測定値

環境基準との比較

修正値

環境基準との比較

A

最高

mg/m2

3.855

38.5倍

mg/m2

5.084

30.8倍

mg/m2

2.40

24.0倍

mg/m2

1.92

19.2倍

mg/m2

2.270

22.7倍

mg/m2

1.816

18.2倍

最低

mg/m2

3.35

33.5倍

mg/m2

2.68

26.8倍

mg/m2

0.595

6.0倍

mg/m2

0.476

4.8倍

mg/m2

0.876

8.8倍

mg/m2

0.7008

7.0倍

平均

mg/m2

3.5682

33.7倍

mg/m2

2.8546

28.5倍

mg/m2

1.432

14.3倍

mg/m2

1.1456

11.5倍

mg/m2

1.2796

12.8倍

mg/m2

1.0237

10.2倍

B

最高

mg/m2

2.195

22.0倍

mg/m2

1.736

17.6倍

mg/m2

1.20

12.0倍

mg/m2

0.96

9.6倍

mg/m2

0.946

9.5倍

mg/m2

0.7568

7.6倍

最低

mg/m2

0.68

6.8倍

mg/m2

0.544

5.4倍

mg/m2

0.473

4.8倍

mg/m2

0.38

5.8倍

mg/m2

0.455

4.3倍

mg/m2

0.3464

3.5倍

平均

mg/m2

1.223

12.2倍

mg/m2

0.978

9.8倍

mg/m2

0.748

7.5倍

mg/m2

0.5984

6.0倍

mg/m2

0.6109

6.1倍

mg/m2

0.4887

4.9倍

C

最高

mg/m2

1.04

10.4倍

mg/m2

0.832

8.3倍

mg/m2

0.85

8.5倍

mg/m2

0.68

6.8倍

mg/m2

1.27

12.7倍

mg/m2

1.0184

10.2倍

最低

mg/m2

0.70

7.0倍

mg/m2

0.56

5.6倍

mg/m2

0.433

4.4倍

mg/m2

0.348

3.5倍

mg/m2

0.458

4.6倍

mg/m2

0.3664

3.7倍

平均

mg/m2

0.905

9.0倍

mg/m2

0.724

7.2倍

mg/m2

0.719

7.2倍

mg/m2

0.5752

5.8倍

mg/m2

0.7469

7.5倍

mg/m2

0.5975

6.0倍

C区域 最高5.1倍 平均3.1倍

D区域 最高3.8倍ないし4.6倍

平均1.7倍ないし2.3倍

となり右期間中の本件被害地域におけるばいじん汚染の右環境基準値との比率は最高15.4倍、平均4.2倍となる。

(3) したがつて昭和三六年一二月以降現在までの本件被害地域におけるばいじん汚染の右環境基準値との比率は最高30.8倍、平均6.3倍となる。

2 排出基準値との比較

(1) <証拠>によれば昭和三九年一月以降昭和四二年一二月ごろまでの間被告は継続的に右ばい煙規制法および大気汚染防止法に基き定められた排出基準である温度零度圧力一気圧の状態に換算した排気ガス一立方メートルにつき0.9グラムをこえるばいじんを大気中に排出していたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

(2) <証拠>によれば昭和四三年一月以降の第一号集じん機の稼動によつて右集じん機ダクト集合部における煙道排ガス中のばいじん量は一立方メートル中0.012グラムと右基準値以下におさえられたことが認められ右認定に反する証拠はない。

(3) しかし、その後昭和四三年六月ごろに至り右集じん機の集煙効率が低下したため、集じん機排煙口以外の工場屋根、窓等から排出されるばいじん量が増加しはじめたこと、また第二号集じん機の正式稼動後約四ケ月間は排出されるばいじん量も減少したが昭和四七年一月には再び、同じように集じん機排煙口以外の工場屋根、窓等から排出されるばいじんの量が増加しはじめたことは既に認定した。

(4) 前示のとおり昭和四六年六月二四日排出基準値が改正され一工程中の排ガスが四万立方メートルをこえる電気炉については温度零度圧力一気圧の状態に換算した排ガス一立方メートルにつき0.2グラムと定められた。前示第二、一、(二)2(4)に認定の事実、<証拠>によれば、被告工場の電気炉は一工程中の排ガス量が四万立方メートルをこえる規模のものであることが認められ右認定に反する証拠はない。

(5) <証拠>によれば右第二号集じん機の正式稼動後約四ケ月間は一応右排出基準は遵守されていたものと推認しうる。

(6) 右(1)(3)の各事実および<証拠>によれば次の事実を認めることができ乙第三二号定証の二も右認定を左右するに足りず他に右認定に反する証拠はない。

右昭和四三年六月以降集じん機煙道における測定値とは関係なく屋根、窓等からの排出ばいじんが増え実質的には右排出基準値を上まわるばいじんが被告工場から大気中に排出され、この状態は昭和四六年一〇月一日第二号集じん機の正式稼動に至るまで継続し更に第二号集じん機正式稼動後四ケ月を経過した昭和四七年一月以降現在に至るまで継続している。

3 本件ばいじんの受忍限度

昭和三六年一二月から現在に至るまで続いているばいじんによる被害については右期間中公法上の環境基準値を大きく上まわつたばいじん汚染を現出させていること、本件原告ら居住地域が住宅密集地帯であり、広範囲にわたる原告らが被害を受けていること、その他右被害の程度、即ち右ばいじんにより昭和三六年一二月以降現在までの期間にわたつて原告らは

(1) 別表七ⅠⅡ欄記載のとおり

ひどい時には、日中でも暗くなる、二〇メートル先の家が見えないような状態になる、一日中もやの中にいるような感じで前の家がかすむ、前の道路を走る車が日中でもライトをつけて走る組の状態になり、

(2) その結果別表七Ⅱ欄記載のとおりのどを痛め、かぜを引きやすくなる、目にほこりが入り痛みを生じる、しよぼしよぼする、せきがひどくなる、悪臭による吐気、頭痛等の一般的な健康上の障害を来たし

(3) その他別表七のⅣ疾病欄記載の各疾病につき症状の増悪を来たし

(4) 戸、窓を開放することができない、家の中にほこり、すすが絶えず汚れ易く家具、建具、たたみ、什器の汚れ、いたみがひどく、家具の中のもの特にタンスの中の衣類等に赤茶色のばいじんが附着し、放置しておくと変色する、洗たく物が汚れ、金属類のいたみ、腐蝕が激しい。特にトタン屋根、雨どい等が早くいたむ等の被害を受けていること等以上認定の諸事実と前示本件ばいじんの特質、本件ばいじん被害の特殊性、環境基準を工業地域にも均しく適用すべきものとしている前示公害対策基本法の趣旨等を総合勘案すれば、本件被害地域が工業地域であることを考慮しても尚右は、原告らにとつて、社会生活上受認すべき限度を超えた違法な侵害というべきである。

このことは被告工場が前示2に認定のとおり少なくとも昭和三九年以降現在まで、昭和四三年一月から五月までと昭和四六年一〇月から昭和四七年一月までの期間を除きその大部分の期間にわたつて、実質的には公法上の排出基準値をこえる量のばいじんを排出して来たことからも一層明らかといわなければならない。

(二)  騒音について

1 騒音の受忍限度

およそ工業地域に属する地区であつても、住宅密集地帯を控えている等特段の事情が認められる場合にはその附近における受忍限度を定めるにつき工業地域に対する規制基準をそのまま受忍すべき限度としてあてはめることは相当でなく前掲説示のとおりこれを参酌しつつある程度の修正を加えて適用すべきである。そうすると前示各規制基準および本件被害地域が住宅密集地帯であること等前示一、(四)に認定した事実と前示騒音の一般的性質人体におよぼす影響度等を総合勘案すれば原告ら被害居住地における騒音の受忍限度は被害居住地の屋外において昼間六五ホン夜間五五ホン程度であると解するのが相当である。

2、本件騒音の受忍限度

(1) 昭和三六年二月から昭和四一年七月ごろまで続いた被告工場からの騒音被害については昭和四一年七月一九日と同月二五日に行われた測定結果である別表三のN―1によればA区域においてはそのうち六五ホンをこえる騒音の出現頻度は87.5%、B区域においては35.3%である。

(2)(A) 昭和四一年八月から昭和四四年九月ごろまでの被告工場の騒音については測定番号N―7の測定(別表三のN―7)から推定した前示複合音(別表五)によれば六五ホンをこえる騒音の出現頻度はA区域においては一〇〇%、B区域においては七七%である。

(B) また右期間中の夜間の被告工場の騒音については測定番号N―5(別表三のN―5)によれば五五ホンをこえる騒音の出現頻度はA区域においては一〇〇%、B区域においては八〇%である。

(3) またこの間の前示昭和三七年以降昭和四二年八月ごろまでのケース抜き装置の稼動による騒音、昭和四〇年八月以降昭和四一年二月ごろまでのドロップハンマーの稼動による騒音については騒音計等の計測器により測定した物理的な量は明らかではない。しかし前示甲第一六号証、同第三三号証の二、証人村瀬康夫、同今枝フクエの各証言原告林幹夫本人尋問の結果によれば右ドロップハンマーによる騒音が発生しはじめた時点において原告らの苦情をうけた名古屋市の担当職員が直ちに被害現場に赴いてこれを測定し、実際に見分したところ、到底通常の社会生活上人間が耐えられる程度のものではないと判断し「激しい振動を伴う機械の操業をさけること、騒音を伴う作業については外部への影響を留意して行なうこと」等種々騒音、振動の防止について指導し被告側もこれに応じて右装置の下に穴を堀りコンクリートの基礎を打つて、その上に厚さ五〇ミリの鉄板と厚さ約二〇〇〜一五〇ミリのゴムを交互に五層位敷きその上に圧縮容器を置いて騒音、振動を吸収させる右装置の周囲に溝を堀る等の方法をとつたが所期の目的を達することができなかつたこと、右ケース抜き装置の稼動による騒音、振動によつて、原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同森下靖人、同炭田しずえ、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己らは昼夜充分な休息をとることができず結局右炭田しずえを除いて他に転居するに至つたこと、右原告らが居住していた蜆荘の北隣に居住していた沢田某もそのころ他に転居していること、以上の各事実を認めることができ右認定に反する証拠はない。右ドロップハンマーによる騒音が、被告製鋼工場から約七五メートルの範囲内に所在する原告林幹夫方においては大型爆弾の落下の如き大音響として聞えたこと、右各装置は、結局前示対策によつても効果がなくいずれも撤去されていることは既に認定した。以上の各事実とN―6ないしN―11の各測定結果とを併せ考えると、右各騒音は距離による減衰率等を考慮してもAないしC各区域の原告ら被害居住地内においていずれも継続的に六五ホンをこえていたことを推認しうる。

(4) 昭和四二年六月当時の第一号集じん機稼動時には測定番号N―2の測定結果(別表三のN―2)により、同年七月当時の酸素液化機稼動時には同N―3の測定結果(別表三のN―3)により、同年八月当時の第一号集じん機稼動時には同N―4の測定結果(別表三のN―4)によりいずれもAないしC各区域の原告ら被害居住地において六五ホンはこえる右集じん機および酸素液化機による騒音が到達していたことを推認しうる。

(5) 昭和四四年一〇月から昭和四六年七月までの被告工場の騒音については、測定番号N―8の測定結果の(別表三のN―8)によれば六五ホンをこえる騒音の出現頻度はA区域においては一〇〇%、B区域においては六七%である。

(6) 昭和四六年八月以降現在までの被告工場の騒音については測定番号N―11(別表三のN―11)によれば昼間A区域において屋外で六五ホンをこえる騒音の出現頻度は九〇%、B区域においては〇%、夜間屋外で五五ホンをこえる騒音のそれはA区域において一〇〇%B区域において74.28%であるがC区域においては、以上すべてについて〇%である。

(7) 昭和三六年から昭和四六年七月ごろまでの間のC区域における被告工場から流入する騒音については騒音計等の計測器による物理的な量は明らかではない(測定地点S・N―2、S・N―16、S・N―26の測定はいずれもB区域内におけるものとした。)しかしこの間C区域の原告らは、夜間電気炉、クレーン音等が耳について眠れない、目がさめて寝つかれない等の騒音被害をうけまた前示第二、一(二)2(2)(B)(ⅰ)ハの製鋼工場東側防音工事完成の前後において被告工場周辺における騒音が蜆荘北西角で三ないし四ホンの減少、原告林幹夫、同篠塚孝夫方南西附近で四ないし五ホンの減少を示していることは既に認定した。別表三のN―11の鑑定結果によると実際に被告工場附近で測定した場合B区域とC区域とでは全般的にいつて騒音レベルに約五ホン程度の差がある。そして測定番号N―1、(別表三のN―1)によれば昭和三六年一二月から昭和四一年七月ごろまでの期間中B区域において七〇ホンをこえる被告工場の騒音の出現頻度は11.8%であり、測定番号N―7、(別表三のN―7)によれば昭和四一年八月から昭和四四年九月ごろまでの期間中B区域において七〇ホンをこえる右騒音の出現頻度は38.5%であり測定番号N―8(別表三のN―8)によれば昭和四四年一〇月から昭和四六年七月までの期間中B区域において七〇ホンをこえる騒音の出現頻度は一一%である。以上の諸点をあわせ考えるとC区域においては、昭和三六年一二月から昭和四六年七月までの期間中六五ホンをこえる右騒音の出現頻度は少なくとも約一〇%程度であつたものと推認することができる。

3 結論

従つて昭和三六年二月以降昭和四六年七月ころまでの被告工場の騒音は右認定の限りにおいてAないしC各区域内の原告ら、即ち原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同宇佐美仙次郎、同宇佐美文雄、同宇佐美美代子、同宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井一晃、同土井節子、同土井麻友美、同土井雅喜、同土井敏全、同土井茂、同土井へ、同森下靖人、同炭田しずえ、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己、同宇佐美由春、同宇佐美久子、同宇佐美幸治、同宇佐美浩、同小園尚雄、同小園昭美、同小園誠司、同久田竹治郎、同久田なか、同久田鎰雄、同久田栄子、同久田直美、同久田香織、同宇佐美義一、同宇佐美良一、同宇佐美政次郎、同宇佐美清子、同宇佐美紀子、同宇佐美鎌吉、同宇佐美ゆき、同宇佐美松男、同宇佐美定子、同宇佐美勝行、同奥田幸弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同奥田美加子、同宇佐美鉐十郎、同宇佐美かぎ、同宇佐美英雄、同宇佐美政義、同宇佐美峰子、同宇佐美淳史、同宇佐美千代子、同宇佐美鉞一、同宇佐美、同宇佐美浩一、同宇佐美佳代、同宇佐美ジヤウ、同佐藤善邦、同佐藤あや、同佐藤くに、同佐藤隆史、同佐藤政史、同佐藤清史、同大橋平数、同大橋峯子、同大橋洋子、同大橋陸平、同大橋喜美、同篠塚孝夫、同篠塚照子、同篠塚泰伸、同林幹夫、同林千鶴子、同林つぎ、同林誠、同山田輝子、同山田祐治、同清水角蔵、同清水千代、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利正雄、同毛利宮子、同服部実、同服部艶子、同服部美津子、同服部隆、同奥田兼次郎、同奥田はる子、同奥田比呂子、同原薫、同原房子、同原清子、同原茂樹、同高橋末夫、同高橋ふみよ、同高橋ひめ、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内雅弘、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同坂井田ちよ、同坂井田節子、同坂井田一義、同坂井田明典、同木原利敦、同木原ナスエ、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子、同平本勝也、同高木優、同宇佐美源治、同宇佐美七男、同宇佐美昭子、同宇佐美仁克、同宇佐美祐子、同宇佐美十一、同宇佐美正子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同宇佐美善三郎、同宇佐美志やう、同笠原正照、同笠原鶴子、同宇佐美金義、同宇佐美とう、同宇佐美千恵子、同鬼頭清助、同鬼頭秋子、同鬼頭敬子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同山盛実、同山盛重子、同山盛征逸、同山盛みち子、同山盛賢司、同山盛均、同山盛せつ、同清水豊、同清水喜美子、同清水武、同清水さち子、同佐藤春子、同佐藤節子、同佐藤明美、同戸松七五三一、同戸松千代子、同宇佐美弘、同宇佐美やえ子、同宇佐美佳代、同宇佐美巌、同宇佐美すえの、同久田真一、同久田隆子、同久田幌、同久田久美子、同久田裕二、同久田峯興、同山本一夫、同山本志げ子、同山本広志、同磯部幹雄、同磯部つるえ、同磯部栄、同磯部智枝、同磯部好作、同磯部なせ、同浅井銕次郎、同浅井と免、同宇佐美武雄、同宇佐美資子、同宇佐美賢次、同宇佐美笑子、同宇佐美知之、同宇佐美明、同宇佐美仁、同宇佐美了、同宇佐美え、同貴船一夫、同貴船笑子、同貴船誠、同貴船みゆき、同貴船修、同野口正夫、同野口フサ、同野口正昭、同藤田な、同藤田喬、同藤田とよ子、同藤田文子、同藤田博美、同藤田直美、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢得郎、同小沢典子、同小沢一寿、同伊藤正、同伊藤スミ子、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同森岡四郎、同森岡ヒデ、同森岡照子、同宇佐美捨秋、同宇佐美恵美子、同宇佐美はる、同宇佐美恵子、同山田兼光、同山田喜久子、同山田雪子、同山田武司、同前田慶治、同前田志子、同内山梅子、同伴修造、同伴京子、同伴英子、同八神武一、同八神ほずみ、同八神智江子、同八神直子、同八神武子、同西尾信行、同宇佐美兼市、同宇佐美てる子については、いずれも受忍限度をこえていた違法な侵害というべきであり、また昭和四六年八月以降現在までの被告工場の騒音は右認定の限度でA区域の原告ら即ち、原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同宇佐美仙次郎、同宇佐美文雄、同宇佐美美代子、同宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井一晃、同土井節子、同土井麻友美、同土井雅喜、同土井へ、同炭田しずえ、(原告土井敏全、同土井茂、同森下靖人、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己については前示第一に認定のとおり、右期間中を通じて、既に本件被害地域に居住していない。)については昼夜にかゝわらず、受忍限度をこえB区域の原告ら即ち、原告宇佐美由春、同宇佐美久子、同宇佐美幸治、同宇佐美浩、同久田竹治郎、同久田なか、同久田鎰雄、同久田栄子、同久田直美、同久田香織、同宇佐美義一、同宇佐美良一、同宇佐美鎌吉、同宇佐美ゆき、同宇佐美松男、同宇佐美定子、同宇佐美勝行、同奥田幸弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同奥田美加子、同宇佐美鉐十郎、同宇佐美かぎ、同宇佐美英雄、同宇佐美数義、同宇佐美峰子、同宇佐美淳史、同宇佐美千代子、同宇佐美鉞一、同宇佐美、同宇佐美浩一、同宇佐美佳代、同宇佐美ジヤウ、同佐藤善邦、同佐藤あや、同佐藤くに、同佐藤隆史、同佐藤政史、同佐藤清史、同大橋平数、同大橋峯子、同大橋洋子、同大橋陸平、同大橋喜美、同篠塚孝夫、同篠塚照子、同篠塚泰伸、同林幹夫、同林千鶴子、同林つぎ、同林誠、同山田輝子、同山田祐治、同清水千代、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利正雄、同毛利宮子、同服部実、同服部艶子、同服部美津子、同服部隆、同奥田兼次郎、同奥田はる子、同奥田比呂子、同原薫、同原房子、同原清子、同原茂樹、同高橋ふみよ、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内雅弘、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同木原利敦、同木原ナスエ、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子(原告小園尚雄、同小園昭美、同小園誠司、同宇佐美政次郎、同宇佐美清子、同宇佐美紀子、同清水角蔵、同高橋末夫、同高橋ひめ、同坂井田ちよ、同坂井田節子、同坂井田一義、同坂井田明典、同平本勝也、同高木優については前示第一に認定のとおり、右期間中を通じ既に本件被害地域に居住していない。)については夜間のみ受忍限度をこえた違法な侵害というべきであるが、C区域の原告ら即ち、原告宇佐美七男、同宇佐美昭子、同宇佐美仁克、同宇佐美裕子、同宇佐美十一、同宇佐美正子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同宇佐美志やう、同笠原正照、同笠原鶴子、同宇佐美金義、同宇佐美とう、同宇佐美千恵子、同鬼頭清助、同鬼頭秋子、同鬼頭敬子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同山盛実、同山盛重子、同山盛賢司、同山盛均、同清水豊、同清水喜美子、同清水武、同清水さち子、同佐藤春子、同佐藤節子、同佐藤明美、同戸松七五三一、同戸松千代子、同宇佐美弘、同宇佐美やえ子、同宇佐美佳代、同宇佐美巌、同宇佐美すえの、同久田真一、同久田幌、同久田久美子、同久田裕二、同久田峯興、同山本一夫、同山本志げ子、同山本広志、同磯部幹雄、同磯部つるえ、同磯部栄、同磯部智枝、同磯部好作、同浅井銕次郎、同浅井と免、同宇佐美武雄、同宇佐美資子、同宇佐美賢次、同宇佐美笑子、同宇佐美知之、同宇佐美明、同宇佐美仁、同宇佐美了、同宇佐美え、同貴船一夫、同貴船笑子、同貴船誠、同貴船みゆき、同貴船修、同野口正夫、同野口フサ、同野口正昭、同藤田な、同藤田喬、同藤田とよ子、同藤田博美、同藤田直美、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢得郎、同小沢典子、同小沢一寿、同伊藤正、同伊藤スミ子、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同森岡四郎、同森岡ヒデ、同宇佐美捨秋、同宇佐美恵美子、同宇佐美はる、同宇佐美恵子、同山田兼光、同山田喜久子、同山田雪子、同山田武司、同前田慶治、同前田志子、同内山梅子、同伴修造、同伴京子、同伴英子、同八神武一、同八神ほずみ、同八神智江子、同八神直子、同八神武子、同宇佐美兼市、同宇佐美てる子(原告宇佐美源治、同宇佐美善三郎、同山盛征逸、同山盛みち子、同山盛せつ、同久田隆子、同磯部なせ、同藤田文子、同森岡照子、同西尾信行については、前示第一に認定のとおり右期間中を通じ、既に本件被害地域には居住していない。)については昼夜とも受忍すべき限度内であり、違法な侵害とはいえないというべきである。

(三)  振動について

1 規制基準等との考量

ところで振動についても騒音についてと同様前示第三、一(四)に認定の本件被害地域が住宅密集地帯であることを考慮して、右愛知県告示に定める振動の規制基準を若干修正し原告ら居住地敷地境界線表において昼間1.2mm/sec、朝夕0.6mm/sec、夜間0.3mm/secをもつて受忍限度と解すべきである。

2、本件振動の受忍限度

(1) 昭和三七年以降昭和四二年八月ごろまでのケース抜き装置の稼動による振動、昭和四〇年八月以降昭和四一年二月ころまでのドロップハンマーの稼動による振動については振動計等の計測器により測定した物理的な量は明らかではない。

右ドロップハンマーによる騒音、振動が発生しはじめた時点において、原告らの苦情を受けた名古屋市の担当職員が直ちに被害現場に赴いて之を測定し実際に見分したところ到底通常の社会生活上耐えられる程度のものではないと判断し、「激しい振動を伴う機械の操業をさけること」等振動の防止について指導し、被告測もこれに応じて右装置の下に穴を堀りコンクリートの基礎を打つてその上に厚さ五〇ミリの鉄板と厚さ二〇〇〜一五〇ミリのゴムを交互に五層位敷きその上に圧縮容器を置いて騒音、振動を吸収させる、右装置の周囲に溝を堀る等の方法をとつたが所期の目的を達することができなかつたこと、右ドロップハンマーによる振動が被告製鋼工場から約七五メートルの距離にある原告林幹夫方においては仏壇の位牌や神棚の花瓶がころがり落ちる程度のものであつたたこと、右ケース抜き装置についても原告らの苦情を受けた名古屋市の担当職員が被告に対する調査、指導を行なつており、被告はこれに対する善処を約束したが、被害による苦情が絶えるまでに至らなかつたこと、右ケース抜き装置の稼動による騒音、振動によつて蜆荘に居住していた原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同森下靖人、同炭田しずえ、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己らは昼夜充分な休息をとることができず結局、右炭田しずえを除いて他に転居するに至つたこと、蜆荘の北隣に居住していた沢田某もそのころ他に転居していること、またその他の原告らについても右各振動により、別表七ⅠⅡ欄記載の被害即ち

(A) ひどいところでは小地震と区別できぬ程の振動を感じることがあり、また間断なく振動するところもあり、

(B) 家が少しずつ傾斜する、瓦がずれる、建具、壁、天井板、床板にずれやすき間ができる、壁にひびが入つたり、一部がはげ落ちる、建具のたてつけに狂いができる、家の中の家具、什器が間断なくカタカタと音をたてておどつたりゆすつたりしているのでいたみがひどい、窓ガラスがいつもびりびりとふるえている。

(C) その結果安眠が妨げられる等の被害を蒙つたこと、結局右各装置は、いずれも撤去されていることは既に認定した。前示甲第一六号証証人村瀬康夫の証言および原告林幹夫本人尋問の結果によれば右ドロップハンマーによる振動は右被告木工場東側の公道附近では身体が浮き上るような感じを受ける程のものであり、東隣の蜆荘内では到底「寝てはいられない」程のものであつたことが認められ右認定に反する証拠はない。仮りに右戸、障子の動揺をとつてこれを地震の振動にあてはめてみると震度二の軽震(多くの人が感じ、戸、障子が僅かだが動く程度。0.4ないし1.3mm/sec)と震度三の弱震(家屋が動揺し、戸、障子が鳴動する程度。1.3ないし四mm/sec)の中間程度即ち1.3mm/sec程度はあり、以上の各事実を総合勘案すれば右期間中の右装置による振動がAないしDの各区域における原告らについて、いずれも受忍限度をこえた違法な侵害であつたというべきである。

(2) 而してその余の期間中における被告工場からの振動については測定番号Ⅴ―1ないしⅤ―3の測定結果別表三のⅤ―1ないしⅤ―3によれば、平均0.05mm/sec程度でいずれも、前示受忍限度をはるかに下まわるものであり、違法なものといえないこともまた明らかである。

第四、責任

一、愛知県および名古屋市の公害対策担当部・課の概要

<証拠>によると、名古屋市は、当初衛生局防疫課公害係が公害に関する事務を行なつて来たが、昭和三九年四月衛生局公害対策課が発足し、昭和四三年四月一日右公害対策課が公害対策部に昇格し、それぞれ従前の、係、課の事務を引継いで現在に至つており、愛知県においては、当初企画課または商工部工業課など関連各部署で公害に関する指導およびこれに対する対策の企画・立案等の事務を行なつていたが、前示のとおり、愛知県公害防止条例(愛知県条例第四八号)が制定公布された直後の昭和三九年四月一六日知事直轄の愛知県公害課が発足し、それまで右各部署で行なつていた公害に関する一切の事務を統合して行なうことゝなり昭和四五年一〇月には右公害課が公害対策局に昇格してその事務を引継いで現在に至つていること、被告工場の発生するばいじん・騒音および振動についても、前示各条例、法律が、愛知県、名古屋市において施行されるまでは事実上、右各条例、法律の施行後はこれらに基いて、それぞれ愛知県および名古屋市の右各部、課が指導監督にあたつて来たが、昭和三九年九月二日以降はばい煙規制法第三二条(事務の委任)、同法施行令の一部を改正する政令(昭和三八年政令第二四九号、昭和三九年政令第二五八号)、同法施行令第七条(事務の委任)および愛知県公害防止条例(昭和四五年県条例第五〇号改正)第一四条(事務の委任)に基く愛知県公害防止条例施行規則第三条(昭和三九年県規則第一〇三号)により、工場にかかるばい煙(右ばい煙規制法第二条参照)を愛知県の所管とし、その余の騒音、振動等については名古屋市にその事務が委任されているために被告工場から排出するばいじんは愛知県が、被告工場から発生、流出する騒音・振動は名古屋市がそれぞれその所管庁として指導監督(その詳細については後掲二にあらためて認定する。)に当つて現在に至つていることが認められ、右各認定に反する証拠はない。(以下単に、県または市とあるはそれぞれ愛知県または名古屋市を指す。)

二、原告らの活動、特に被告との交渉の経過、県、市の指導および被告の態度

<証拠>によれば次の(一)(二)(四)の各事実が認められ、証人伊藤正、同平山正夫、同森一雄の各証言中右認定に反する部分は前掲各証拠に比照し、措信しえず他に右認定に反する証拠はない。

(一)  昭和三六年二月(二号電気炉の稼動)から昭和三九年九月(ばい煙規制法の地域指定)まで

1、住民の苦情と名古屋市の調査指導(その一)

前示認定のとおり昭和三六年二月被告が二号電気炉を設置し稼動をはじめた後同年春ごろ原告ら附近住民から直接被告に対しそのばいじんについて苦情が出され、同年夏には市に対しても同様の苦情が申し立てられて、市防疫課衛生公害係は同年八月二四日調査の結果右ばいじんが被告の右電気炉二基から発生するものであると判断してその旨被告に通告したうえ、被告に対し集じん機の設置について研究するよう指導を行なつた。(第一回調査指導)。

2 爆発事故および誓約書

昭和三六年一二月一六日電気炉から排出される高熱のノロ(鉱滓)が直接水に触れて激しい水蒸気爆発をおこし、道路を隔てた南隣早川徳三郎方および原告土井一晃方工場住居を破損させる等の被害を与えたため、附近の七町内会(外新町一、二丁目、同三、四丁目、花塚町一、二丁目、同三、四丁目、八鋼町一、二丁目、同三、四丁目、福川町)の会長が協議し、同月一九日被告に対し爆発事故の防止およびばいじん、騒音による公害の改善に努力することを要望し、被告はこれに対し右代表町内会長宛右改善措置を行なうよう努力する旨の誓約書を提出した。

3 被害対策委員会の結成、陳情書の提出

しかるに右誓約は期限の翌昭和三七年一月末日に至つても実行されないので、原告らを含む附近住民はそのころ利川製鋼被害対策委員会(委員長宇佐美義一)を結成し、被告をはじめ関係各方面に働きかけて、被告工場からのばいじん・騒音・振動による被害の軽減をはかることゝなつた。そして同年三月一二日右委員会は市衛生局長に陳情をし、同年四月二三日にはばいじん・騒音・ノロ等廃棄じん芥・公道のかさ上げ等について附近住民二四六二名の署名をつけて希望処置を附した陳情書を県・市・名古屋法務局人権擁護課・中川警察署・中川消防署・中川保健所に各提出した。

4 住民の苦情と名古屋市の調査・指導(その二)

住民の苦情、特に右陳情に対して市は同年三月二〇日防疫課公害対策係・商工課・衛生研究所の三者共同で第二回の調査・指導を行なつてばいじん発生の原因が二基の電気炉であることを再度確認してその旨被告に告げ更に同年四月一一日から一六日までの前示認定のばいじん調査を行ない、その測定結果に基き被告に対し集じん機の設置を早急に検討するよう指導したが被告はこのような附近住民からの苦情と市当局からの指導にもかゝわらず依然として旧態のまま操業を続けた。

5 住民の苦情と名古屋市の調査・指導(その三)

同年一二月一三日市はばいじんを中心に前示認定のとおり第三回目の調査を行ない、主に、集じん機を設置すべき旨の指導を行なつたが被告は構造上困難であるとしてなんら設置に積極的姿勢を見せなかつた。その後昭和三八年一月二四日原告ら附近住民から市助役に対し陳情がなされ、そこで市は同年二月一四日被告常務の来庁を求め(第一回)集じん機の設置を強く要請したが被告は経費がかかりすぎて設置が困難であると答え、そのため同年一月二六日、二月二二日の市関係各部局の公審対策打合会でも何等具体的施策を見出すことができなかつた。

このように一方被告は附近住民からたび重なる苦情や抗議を受け、あるいは市から集じん機の設置を強く要望されていた状態にあつて、しかもそれに対しなんらの具体的対策を講ずることなく放置同然にしながら、ばいじんの発生源である電気炉を更に一基(三号炉)発注し、前示認定のとおり同年二月にはその稼動を開始した。

6 名古屋市の実態調査

前示認定の昭和三八年四月一二日から一八日までの市による市内工場の実態調査によれば、当時工場周辺の住民から苦情のあつた四工場中附近に住家が密集していることから夜間だけ電気炉を使用しているところが二工場、除じん施設を設けているところが一工場あるのに対し被告工場は附近に民家が近接しているため排煙の影響がきわめて大きいとされ、全工場中最高のじんあい数が測定されているのにもかかわらず、除じん施設もなく二四時間操業を行なつていることが判明した。

7 住民の苦情と名古屋市の調査指導(その四)

このような調査結果をふまえ、また附近住民の苦情もあつて市(防疫課)、名古屋法務局は昭和三八年一〇月二四日第四回目の調査を行ない、集じん機設置の指導を行なつたがこれに対し被告は右三号炉のほか更に電気炉増設の意向を持つていることを明らかにし、集じん機の設置は早急にはむずかしく全部の業者がつければつけるという態度を示した。そこで市は同年一二月二三日被告常務の来庁を求め(第二回)、公害問題の解決を見ないまま更に公害源となる電気炉の増設を行なつたことにつき強く反省を促したところ、被告は周辺の土地を買収して騒音防止に役立てること、工場東側に高さ一〇メートル、長さ八〇メートルの塀を作ること、および昭和三九年一月末日までに集じん計画を作成することをそれぞれ約束するとゝもに集じん機が必要であることは被告においても十分認識しているとしながら一方において現在三基の電気炉を五基に増設したい意向を示した。しかし当時既に電気炉二基(四、五号炉)は発注納入済(同年一一月末日)であり、稼動(昭和三九年一月)直前という状態であつた。そして右集じん計画作成の約束については右期限までにこれを作成せず放置するにまかせ、なかんずく市(公害対策課)が集じん計画につき数回折衝を重ねたが設置のメドは全く立たず、同年七月一五日、三〇日の第五回目の調査指導に至つても集じん機の設置は予算的に実現困難であるとの答えであつた。

(二)  昭和三九年九月(ばい煙規制法による地域指定)から昭和四四年三月(公害防止対策協定の成立)まで

1 第一号集じん機の設置

第一号集じん機の設置自体については既に認定したがその経過は次のとおりである。

被告は同月三〇日前示ばい煙規制法に基きばい煙発生施設として電気炉五基と重油加熱炉二基を愛知県知事に届け出、またばい煙処理方法としてろ過集じん機ダイドーダスチューブコレクターDW二〇―ST炉頂吸引式一基を昭和四〇年一月一〇日工事着手、同年七月一〇日使用開始とする設置予定計画を届け出た。しかし被告は右県知事に対する届出書で約束した昭和四〇年七月一〇日の使用開始予定はもちろん、ばい煙規制法上既設施設の集じんに関しては二年間の猶予期間(昭和四一年八月三一日まで)が与えられていたが右猶予期間を過ぎても集じん機の設置を資金不足等の理由から内部的にも決定しておらず、その後県市からそれぞれ公害除去施設整備費用として金一、〇〇〇万円の融資を受けることゝなつて昭和四一年一〇月にダイドーダスチューブコレクター一基の設置を決定しそのころ工事に着手したが、当初市に対し約束した完成期日(昭和四二年二月末日)を更に遅れ前示認定のとおり同年六月に至り漸く完成した。

2 第一号集じん機の防音工事等について

これについても、既に認定したとおりであるがその詳細は次のとおりである。

右集じん機の設置については、構造上、相当程度の騒音が予想されたゝめ、愛知県は、あらかじめ右設置場所等防音について充分配慮されたい旨の指導を行なつたが、被告は防音には自信があるとしてこの点の配慮を欠いたため、右集じん機は試運転の段階で大きな騒音を発生させ、試運転以上の稼動は不可能となつた。そこで市は速やかに責任ある企業に防音工事を行なわせるよう指示し、被告は附近住民および市に対し同年七月一五日までに右工事の完成を約束した。

しかるに被告は同年七月四日県・市に対し集じん機・送風機・冷却塔の防音工事につき高山工業・三立興業に発注したこと並びに右工事の概要の報告および工期に四〇日を要するので右約束期限の完成は不可能であり同年八月中旬までかかることを申し出るに至り、市は右約束期限を守るよう指導したけれども結局同年七月三〇日、八月一〇日と順次繰り延べられ、同年八月一一日の騒音測定によつても前示第二、二、(二)、2、(4)(別表三のN―4)に認定のとおり満足すべき結果はえられなかつた。そこで市は附近住民の激しい抗議並びに強い指導要請を受けて完全な防音措置を講ずべく集じん機本体を全部鉄筋コンクリート造の上屋で覆う案(第一案)を被告に提示したが、被告は個々の音源と思われる部分を順次防音して基準以下にするという、市の案に対しやや消極的な案(第二案)を提出し、結局同年一〇月第一案を勧めていた県、市が折れて第二案が実施されることゝなつた。被告は、同年一一月二四日には昭和四三年一月末日までに右防音工事を完成させること、集じん機本体から発生する騒音が基準点(工場敷地境界から五メートル高さ一メートルの地点)で六〇ホン(A特性)以下にすること、右工事期間中はA級の原料屑鉄のみを使用し酸素吹精時間を一熔解期間平均一五分にすることおよびそれでもなお気象条件等により被害の大きいときは正常稼動状態である常時稼動四基のうち一基を停止することをそれぞれ誓約し、右期限までに集じん機の稼動ができなかつたときは監督官庁の指示に従う旨約束すると共に集じん機の位置を北へ約三二メートル、西へ約二六メートル移設することを申し出、そのころ前示認定のとおり右移設を行なつた。

3 利川製鋼公害対策会議の結成および被告代表者との会談(その一)

その間原告ら附近住民は昭和四二年六月一四日の総評公害調査団の実情調査を契機として同年七月四日従前の利川製鋼被害対策委員会を解消して利川製鋼公害対策会議(委員長代理横江金夫)を結成し、原告らのうち新海富夫ら七名を除く世帯主全部がこれに加入し、同月二〇日には愛知県知事名古屋市長に対し「公害排除に関する要請書」を提出し、あるいは同年八月には被告に対し防音工事が完成しない場合には操業停止をするよう要請し、同年八月一四日には県公害課の斡旋により被告代表者に初めて会談した。その際、原告らから、過去六年にわたるばいじん、騒音等による被害と、これに対する被告側の誠意のないことが、持ち出され、集じん機に完全な防音措置をすること、工場本体からの騒音についての防音措置をすること、公道の不法占有を中止すること、今後の工場設備の新設、変更については対策会議に対する事前の説明とその同意を要件とすること等の要求が出された。

4 被告代表者との会談(その二)

ところで被告製鋼工場本体からの騒音は既に同年六月ころ集じん機の完成前に附近住民から被告に苦情が持ち込まれ、県は同年一一月ころ右騒音につき被告に対し産業公害防止協会にその対策方の依頼を斡旋し、同協会顧問の東工大松井教授によりそのころ右製鋼工場の騒音調査がなされる状況にあつたが、依然として解決のメドが立たないことおよび右集じん機の防音工事が当初の約束期限(七月一五日)を過ぎても一向に進展していないことから原告ら附近住民は同年一一月二六日被告工場において、被告代表者らと会談し一二時間にわたる交渉を行なつた。その際原告らは、七月一五日完成予定の集じん機防音工事を早急に完成するか不可能ならば直ちに操業を中止すること、工場本体の騒音をなくすこと、市道の不法占有を中止すること、慰藉料を支払うこと等の要求を提示し、被告からは集じん機の防音工事は翌昭和四三年一月末日までに完成する等の回答があつた。

5 愛知県との折衝

更に昭和四二年一一月二八日住民代表九〇名が県庁を訪れ、これより先、同月二〇日に、防音、防じん工事の早期完了とそれまで操業停止措置をとること、根本的な対策として工場移転をさせること、等五項目の要求を掲げて提出されていた要請書の回答を求め、県・市の強力な行政指導を要求して交渉をした結果、県は現状のばいじん排出が県公害防止条例(昭和三九年県条例第四八号)に照らして明らかに違反していること、製鋼工場の騒音については松井教授の結論を待つて必要な措置をとること、早急に改善命令を出し昭和四三年一月三一日までに集じん機の防音工事が完成しないとき、または効果がないときは操業停止命令を出す措置をとる旨回答した。

6 愛知県の改善命令と第一号集じん機の完成

そして同年一二月二〇日県はばい煙規制法第一六条第一項に基き被告の製鋼用電気炉がその排出基準(当時0.9g/m2以下)に適合しないことを理由として翌昭和四三年一月三一日までに適合すべくばいじん処理施設を整備するよう改善命令を出し、同じく右同日市は被告に対し県公害防止条例第一〇条に基き騒音が右条例の基準を越えていることを理由に改善命令を出して右防音工事の工事の完成並びに集じん機の完成を急がせた。被告もこのような附近住民の抗議と県・市の行政指導により右工事を急ぎ漸く昭和四三年一月二九日これを完成させ、前示認定の同日行なわれた市公害対策課の騒音測定(別表三のN―6)によると、五〇ないし五五ホンと県条例の基準(工業地域・夜間六〇ホン以下)内となり、また翌二月八日県が集じん機ダクト集合部において煙道排ガス中のばいじん量を測定したところ前示認定のとおり0.012g/m2と、規制基準(0.9g/m2)以下となり一応満足すべき結果を得た。

7 集じん機の機能低下についての苦情

しかし、その後同年六月ごろになると前示認定のとおり右集じん機がその保守管理の不徹底からたびたび故障をおこし吸引能力の低下によりばいじんの大部分は集じん機を通らず、同年七月三日には附近住民から市公害対策課に工場窓側からの排出が多くなつたとの苦情が申し立てられ、翌四日には被告に対し抗議がなされるに至つた。そして県と市は同月一六日対策を検討し、ばいじん防止につきバッグフィルターの清掃あるいは作業管理等を指導し、同年九月二日には立入検査をして集じん機の稼動状況等につき調査、指導を行なつた。

8 ケース抜き装置およびドロップハンマーに対する苦情

昭和三七年ごろからの前示ケース抜き装置による騒音、振動および昭和四〇年八月ごろからの前示ドロップハンマーの騒音・振動、昭和四二年七月ころからの酸素液化機・コンプレッサーによる騒音・振動についてはいずれもその都度附近住民から市および被告に対し、苦情が出されている。

9 松井試案について

被告製鋼工場本体からの騒音に関する東工大松井教授の測定調査が昭和四二年一一月二〇日から三日間行なわれ、右調査結果を被告は翌昭和四三年一月に受領したが、被告は右調査結果に基く防音対策案(第一案・音源である電気炉のある製鋼工場とスクラップヤードの境に防音壁を作る案)を施工するためには少なくとも二ケ月間の操業停止と概算二億五、〇〇〇万円の資金が必要であることおよびクレーン操作に支障のあることを理由として施工不可能であると申し立てた。市は被告の右態度に積極性がないとしてさらに強く指導したけれども結局被告は右案によるも基準以下にする責任を持てないとしてこれを受け容れず、そのため松井教授によつて更に数回調査のうえ第二、第三、第四案が提示され、そのたびに被告は種々の注文をつけ漸く昭和四三年末ごろ製鋼工場(圧延工場を含む)の周囲を防音壁によつて密閉するという第四案が工場西側には民家がなくまた全部を密閉すれば換気が必要となることおよび経済的な理由から西側は密閉せずそのまま残すという修正を加えて実施されることになり、その後、後記公害防止対策協定の一部にとり入れられた。

10 四者会議、五者会議および専門委員会について

ところで、前記集じん機の防音工事完成後昭和四三年三月二二日同年四月一一日にはノロの水蒸気爆発や鋼湯の流失による電気炉爆発事故が発生し製鋼工場南側一〇メートルの道路を隔てた早川徳三郎方倉庫のガラス窓約四〇枚が割れたりまた前示第二、(四)(2)に認定のとおり原告土井一晃方工場のガラス約一二〇枚と建具一本がこわれる等の被害をもたらしその附近住民にも不安を与えた。その間同年三月二六日には被告も県・市・附近住民(対策会議)・被告の四者会議で公害の見舞金と移転も考えると発言したが、同年四月一一日にも爆発事故を起したため附近住民は直接被告に抗議するとともに同月一七日の県・市・住民・被告・労働基準監督署の五者会議でも県・市および被告に対し抗議し工場の移転を含め公害の根本的解決を要求した。そこで県は附近住民に対し関係官庁を集めて根本的な対策の検討を約し同年六月二五日、集じん機の故障については保守管理を徹底させ完全稼動させる、災害防止については労基局として監督体制を強化する、移転については法的強制力がないので将来の問題として検討すると回答した。

一方附近住民は同年九月五日被告との間で公害をなくすため三つの専門委員会を設け、被告工場の移転とその障害の追及(第一委員会)、被告工場が存続する場合の公害防止策としての周辺土地の買収問題の検討(第二委員会)、現在の被害に対する当面の対策と苦情処理および賠償問題の検討(第三委員会)をそれぞれ行ない解決への具体的方策を練つたが、なんら効果的な改善策もとられないため同年一〇月三〇日にはばいじん・騒音について被告に対しさらに抗議が行なわれた。

11 公害防止対策協定成立に至る経過

しかしたび重なる苦情並びに抗議にも拘らず続けられる製鋼工場からの騒音とばいじんの流出排出にたまりかねた原告らを含む公害対策会議の会員らは、昭和四三年一二月最後の抗議手段として被告工場・愛知県庁および名古屋市役所に坐り込みを行ない被告工場の操業を実力阻止してその移転を要求することを決意しその準備をはじめ同月二八日県・市と折衝したところ県・市も実力行使による衝突という事態を避けるため公害を根本的に解決する具体策を決定させるよう全力をあげて努力する旨表明した。そして翌昭和四四年二月八日公害対策会議(住民)・被告・県・市からなる利川製鋼公害防止会議(第一回)が設置されその席上被告および附近住民から県・市に対し解決のための具体的な調停案の提示が要請された。

そこで県・市は同年一月八日から一〇日まで被告工場周辺の前示測定番号S―4の環境測定をしたうえ、同年二月二六日第二回公害防止会議において「利川製鋼公害防止対策」案を調停案として提示し、同年三月一〇日住民側および被告双方から了承が得られ、ここに県・市の斡旋で原告ら附近住民を含む公害対策会議と被告との間に利川製鋼公害防止対策協定の成立をみた。

12 公害防止対策協定の内容

右協定の内容は、第一にばいじんについては工場から排出するばいじんの排出量を現状の三分の一以下とすることおよびその対策として必要な諸措置を講ずることとし、まず施設改善事項として(ア)集じん機の吸引力を増大すること、(イ)集じん機のばいじん排出口を高くすること、(ウ)集じん機の主要部品のスペアを常備すること、(エ)電気炉五基にエアカーテン装置を設置すること、(オ)炉廻りダクトのフランジのすき間をなくすること、(カ)ばいじんの希釈拡散をはかるため建屋に換気扇を設置することをあげ、次に作業方法改善事項として(ア)電気炉前のダンパー操作を未稼動電子炉一〇〇%閉・熔解中電気炉三〇%〜四〇%開・精練中電気炉一〇%〜二〇%開・酸素吹精中電気炉全開とし、ダンパー開閉責任者を定めること、(イ)酸素使用量を極力減少し、その吹精が三基以上重ならないようにすること、(ウ)炉の稼動に際しては石灰シールを施し、出滓口扉の開きは最小限にすること、(エ)良質の原材料を使用すること、(オ)集じん機のバッグは全部について毎週一回必ず点検整備すること、ダクトおよび冷却塔(パイプの中も含む)のそうじを常に実施すること、(キ)各水冷ダクトへの正常な冷却水の補給を確認すること、(ク)コレクター本体の保守点検を十分行なうことをあげ、さらに気象条件が悪く局地的に多量のばいじんにより環境が悪くなつたときは炉の操業を一、二基一時停止することをあげている。第二に騒音・振動防止対策として、そのための施設改善事項には、ア、電気炉工場の第一期防音工事として南側・東側を松井案に沿つて七月上旬までに完成すること、イ、換気設備を伴う第二期防音工事即ち残りの防音工事、特に工場北側のそれについては資金の調整をはかり順次実施することとされ、右イの工事に相当数の日数を要する場合は公害防止条例の基準をこえる被害家屋の居室について居住者の意見を聴取し了承を得て被告の費用で防音対策を行なうこと、原因不明の振動についても被告と住民とで話し合い、被告の費用で被害者宅の対策を講ずることをあげている。更に今後のばいじん・騒音・振動等の減少をはかるため県・市・学識経験者・大同製鋼および被告で構成する技術検討会を早急に設けることおよび被告工場と住民との間に緩衝地帯を設けること、その方法として被告が住民の同意を得て周辺の土地を購入し、地元の意見を尊重したうえ公害防止のため機能的に利用することをあげている。

同年一〇月初め、第四回公害防止会議において県・市は右防止対策協定の同年一一月末までの完全実施を指示し、被告はこれを確約した。

(三)  公害防止対策協定の趣旨

右協定の最大の眼目は、被告工場から発生するばいじん量を昭和四四年三月一〇日現在のばいじん量の三分の一にするというとりきめである。

<証拠>によれば右協定成立当時には昭和四四年一月八日当時の前示測定番号S―4の測定結果(別表三のS―4)は公表されていなかつたことが認められ、他に反証はなく、従つて右数値は右協定にそのまゝとり入れられてはいない。しかし、「当時のばいじん量」というとりきめの内容としては、「その当時被告工場から排出されたばいじん量によつて原告ら被害居住地内に現出したばいじん汚染濃度」という趣旨を含むものと解釈してよい。従つて当時公表されているかいないかを問わず、被告がその三分の一となるよう努力する目標となすべき「ばいじん量」というのは右協定成立とあまり時間的にも隔りのない昭和四四年一月八日ないし一〇日の昼夜二回ずつの連続測定値(測定番号S―4の測定)の三地点での総平均値1.96mg/m2であると解し原告ら被害居住地内においてその三分の一である0.65mg/m2以下の濃度を維持するよう、被告工場の排出量を制限するというのが右とりきめの実質的な内容であると解するのが相当である。このことは<証拠>により認められる次の事実即ち原告ら附近住民が、昭和四五年一一月二日第九回公害防止会議において、県・市および被告に対しばいじん量を三分の一以下に下げるという協定がいまだに守られていないことを追及し、操業短縮ないし電気炉の一基停止を要求した際、県から右同日被告に対し右協定が同年一〇月三〇日現在実現されておらず、これは被告の公害防止に対する誠意の欠如によるものだとしたうえ、一一月三〇日までに右協定を実現すること、そのための具体的な対策案を検討して計画書を至急提出するよう文書で指示したのに応じて被告が右期日までに環境汚染ばいじん量を二四時間値の一時間平均値で昭和四四年一月八日の測定値平均1.96mg/m2の三分の一である0.65mg/m2以下にすること、それができなかつたときは0.65mg/m2になるまで電気炉を停止すること、右期日までの応急対策として電気炉一基を停止することおよび気象条件の悪化により特に環境汚染度の高いときには電気炉を一、二基停止することをそれれぞ約束した誓約書を愛知県知事あて提出しているからも明らかである。なるほど右ばいじん汚染濃度には、被告工場が存在しなくてもなおかつ測定されるであろうある程度の汚染濃度が加味されていることは事実であり、これをバック汚染値というとすれば、右バック汚染値を右1.96mg/m2から控除した残部につき被告工場に汚染の責任があるにすぎないので、その部分を三分の一にするという趣旨に解釈しえないこともない。しかしこのようなバック汚染値はその決定方法については意見の対立が生ずる可能性があるばかりでなく、仮りこの点について意見の一致があり、被告工場附近で測定することゝなつたとしても証人曾我旗郎の証言によれば右測定は普通一定期間の工場の休業中に、その間の一週間程度の期間継続して行なう必要があり、被告工場のように電気炉を二四時間操業しており一週間に一日、二日程度休業するにすぎない場合には被告工場からの浮遊ばいじんが残留している関係からその影響を払拭しえず実際にはバック汚染値の測定は不可能であること、現に右協定成立の直前直後はもとよりその後も被告工場周辺においては右バック汚染値の測定はなされていないことが認められ、反証はない。従つて、右協定が有効に成立しているとの前提に立つかぎり右三分の一の値を算出するについてこのようなバック汚染値を数値として考慮する余地は全くなく、また前示第二、三、(二)に認定したとおり本件ばいじん汚染が専ら被告工場の操業によつてもたらされたものであることからすれば、右数値を考慮しなくても、あながち不当とはいえない。

(四)  昭和四四年三月から現在まで

1 公害防止対策協定の実施状況(その一)

(1) 右防止対策協定のうち第一のばいじん防止対策の施設改善事項については、前示第二、一、(二)、2、(2)、(A)、(ⅴ)、ロ、同(ⅵ)に認定のとおり、集じん機のばいじん排出口を高くすること、集じん機スペアの常備は行なわれたがエアーカーテンの設置は行なわれず、吸引力増大のためのブロアーの増設は、既に右協定成立前である昭和四四年一月一八日その増設を申し出ていたにもかかわらず、前示第二、一、(二)、2、(2)、(A)、(ⅶ)、に認定のとおり一年八ケ月を経過した昭和四五年一一月中旬になつて漸く設置され、また右対策案に基いて設置された技術検討会が同年五月一四日指示した集じん機の増設も被告は県からの再三の指導により漸く昭和四六年三月にその増設の契約をする等実施がおくれ、また屋根の換気扇のとりつけは、前示第二、一、(二)、2、(2)、(A)、(ⅵ)に認定のとおり勧告よりも少ない一五個が設置されただけであり、ダクトフランジのすき間をなくすことについては技術的困難を理由にある程度実施されたにすぎなかつた。

(2) また、第二の騒音・振動対策の施設改善事項については、まず、昭和四四年七月までと約束された第一期防音工事、即ち製鋼工場南側および東側の防音壁中東側については前示第二、一、(二)、2、(2)、(B)、(ⅰ)認定のとおり昭和四四年一〇月にやつと着工し再度約束した昭和四四年一一月末日の期限をも大巾におくれ翌昭和四五年二月に至つて漸く完成し、南側については昭和四三年四月ないし昭和四四年五月に設置された鉄筋コンクリート壁やブロック積壁の上にもともと建屋の壁としてあるべき破損部分をスレートを張つて補修しそれでもなお基準を越えれば内側に防音材を貼るという場当り的なやり方であつた。

(3) またばいじん対策中の作業改善事項については石灰シールおよび出滓口を最小限にすることは実験したが結果的に失敗した。その他の事項については作業員に対する説明会を行なつたりPRや社員教育に努め、その完全実施をはかつたがあまり実効があがらなかつた。

またその実施状況について原告らにはこれを確認する方法がなかつたのである。

2 監視体制の設立について

(1) このようなことから、原告ら附近住民により被告を監視する制度を確立することの必要性が痛感され、その旨、附近住民から県に要請し、県はこれに応じ、昭和四四年九月二七日第三回公害防止会議において「利川製鋼公害監視体制実施要領」案を提示したが住民の賛成を得られず、再検討を要するものとされた。

(2) ブザーの設置

(A) 更に同年一〇月には被告製鋼工場の東南角にばいじんが激しいことを附近住民から被告に知らせるためのブザーが設置された。

これは原告ら附近住民がその居住地内に流れ込むばいじん量が多いとき、それを被告側に警告するため所定のかぎを別図二Bu点記載の被告製鋼工場東南角壁面に設置されたカギ穴に差し込み、ブザーのスイッチを入れることにより被告工場事務所に取り付けられた警告のブザーが鳴り、被告側で右警告を尊重して自主的にばいじん量を規制しようという合意のもとに設置されるに至つたものである。

(B) しかし右ブザーのとりつけ直後しばらくは、右申し合せにそつた運用がなされたが、その後、原告宇佐美美代子がカギを挿入しても誰も応答しないため被告工場事務所に赴いたところ、右ブザーのスイッチが切つてあることが判明した。

3 公害防止対策協定の実施状況(その二)

(1) 右協定についての被告の態度

右協定について被告は昭和四四年一一月四日、県・市・被告による第一〇回公害防止会議において応急対策としての電気炉の停止はできないと申し出たり、昭和四五年一一月一二日、一三日の前示測定結果(0.837mg/m2)に関してそのころ県が協定の0.65mg/m2以下になつていないから継続して電気炉一基を停止するよう指示したのに対し、電気炉を全部停止したときでも右ばいじん汚染値は0.38mg/m2あるので1.96mg/m2から右数値を引いた値の三分の一(0.53mg/m2)に0.38mg/m2)を加えた0.91mg/m2が約束の基準値であると申し立てたり、これを誠実に実施しようとする態度はみられなかつた。

(2) 県の方針の変更

被告の右態度の急変があつた後県もこれをみて昭和四六年一月ごろ方針を変更しこれより先昭和四五年七月八日から一五日までの間に市内の築港変電附近で一週間継続して測定したばいじん汚染の平均値0.201mg/m2をバック汚染値として、結局これに基いて算出した0.787mg/m2を被告工場周辺の基準値としてそれ以後扱うという方針を打ち出すに至つた。

(3) 協定値をこえるばいじん量と電気炉の停止(その一)

県が前示認定の昭和四四年一一月六日・七日および同月二五日から二七日まで被告工場周辺のばいじん測定をした結果(別表三のS―5)によれば同年一月の測定値を下回りこそすれ、被告が了承し約束した「現状の三分の一」たる数値(1.96mg/m2の三分の一、0.65mg/m2)を大きく上まわり、同年一二月一八日の第五回公害防止会議において県・市および被告は右状況につきその責任を住民側から追及され、県・市は集じん機の増設と改善措置を強く被告に対し指示した。

(4) 協定値をこえるばいじん量と電気炉の停止(その二)

このようにばいじん量の増大と気象条件の悪化に伴う電気炉の操業の一時停止についてはそのばいじんにたまりかねた附近住民のたびたびの要請によつても容易に実行されず、そのため、右第五回をはじめとしてその後の第八回第九回第一〇回の各公害防止会議においてそれぞれこの問題が取りあげられ県および市はこれについて何度か指導、説得をくり返し、昭和四五年一一月五日漸く一一月中における電気炉一基の停止が決定され、同月七日から実施された。

その後前示認定の同年一一月五日から翌昭和四六年三月二七日まで行なわれた県の測定(別表三のS―6)によると二四時間平均値の一時間値が0.65mg/m2以下になつたのは一六回中一回だけで、他はすべてこれをオーバーした。そしてその間昭和四六年一月七日から九日の測定平均値が0.902mg/m2にもなつたのにも拘らず、被告が約束に違反して電気炉の停止をしないので附近住民は同月二一日県に対し陳情し、県の仲介で漸く電気炉一基を停止した。しかるに同月二四日夜附近住民の監視によれば被告は電気炉五基を全部稼動させて操業していることがわかり、その後は電気炉停止の確認に対策会議(附近住民)が立会うこととなり、同年二月九日から電気炉の一基停止が電気メーターの数字を確認し封印する方法で行なわれた。

(5) しかし、右一基の停止は同一炉が常時停止された訳ではなく、停止される炉は工場側の都合で順次変更されるという状況であつたので、ばいじん対策の上ではあまり意味のないものであつた。

蓋し、電気炉五基の一基ずつの稼動率は炉の修理等の関係で各々常時一〇〇%に達するものではなく、仮りに一基の稼動率が平均八〇%とすれば常時四基が稼動し一基は停止している状態となる訳であるから、同一炉を常時固定して停止するのでない限り、右稼動率との関係で、停止していないのと同一になつてしまう場合がありうるからである。

(6) 昭和四六年二月二四日県は被告に対し右測定結果に基いて、右三分の一の協定値(県の見解によれば0.787mg/m2)以下になつていない旨を通知するとともに抜本的対策を講じた上、同月二八日までにその改善計画書の提出を命じた。

被告は同年三月六日集じん機一基の増設(同月一日売買契約、日本スピンドル製バッグフィルター式)を含む改善計画書を提出した。

4 移転問題

ところで昭和四五年一月二九日第六回公害防止会議において初めて被告工場の、当時造成中であつた名港西二区への移転について具体的に検討されるようになり、同年六月二〇日、同月三〇日の第七、第八回公害防止会議においても移転の見通しについて討議され、右同月三〇日には被告から名港管理組合に対し正式に分譲地払下の願書が提出され、同時に県知事からも右管理組合に対し被告の分譲地払下実現に関する副申書が提出された。そしてその間附近住民は被告工場の移転を実現するため独自に右管理組合(同年六月二七日)、市長(同年七月二日)市助役(同年八月一三日)にそれぞれ陳情した。しかし、結局被告工場の右分譲地払下は同年一〇月三一日港湾計画上不適当であるとして右管理組合から正式に拒絶され、頓挫するに至つた。

5 ばいじん中の重金属類の含有について

(1) 県は前示認定の昭和四五年一一月から翌昭和四六年三月までの被告工場周辺のばいじん測定(別表三のS―6)に際し、捕集したばいじん中に含まれる重金属の分析を行なつていたが、同年七月三日県議会で公表を求められ、右同日県環境部の公表したところによると前示第三、一、(三)、1、(3)認定のとおり鉛など大量の有害物質が厚生省の環境上の目安を越えて含まれていることがわかり、この事態に驚いた対策会議では市に対し住民の無料健康診断を行なうよう、また県市に対し有効な対策が講じられるまで被告工場の操業の一時停止を勧告するよう要求した。これに対し市は同月七日被告に対し書面により被告工場から排出されるばいじん中に多量の有害物質が含まれていることを知らしめるとともに住民の健康に与える影響も憂慮されるから有害物質の減少措置を早急に講ずるよう勧告した。県も翌八日右勧告を厳守するよう指示し、また県・市合同で同月中に附近住民の健康調査を実施することを決めた。

被告は右勧告に対し同年八月二日、当初の期限(七月一五日)に遅れ、しかも市の督促を受けて漸く改善計画書を提出したが、原料鉄屑の厳選・酸素吹精時間の短縮・作業方法の改善およびばいじんの発生量の多いときは電気炉一、二基を一時間停止させることなど、集じん機の増設工事を一ケ月早め九月末日までに完成させることを除いては従前たびたび出された被告の改善計画の内容と変らず、しかも従前その実施につき具体性がなく附近住民の不信をかつていた経緯から、市はこれをあいまいな点が多く被告の誠意を疑うとして拒否し、練り直しを要求した。そこで被告は同月一六日同年九月末日の集じん機の完成まで電気炉一基を停止する、原材料には重金属の出やすいものを避けるとの内容を有する計画書を再提出した。

(2) 県・市は同年七月中旬被告工場の周辺住民の健康調査を行ない、同年八月一八日その中間結果を発表した。それによるとカドミウムについては全員異常は認められなかつたが、鉛については典型的な鉛中毒はみられないもののメッキ工場や自動車整備工場の従業員の平均値より高く鉛反応とみられるものも一部住民には認められ、軽度の貧血・関節痛・便秘など鉛の影響の疑いが強い症状を訴えるものも少なくなかつた。ところがその後右調査の最終結果が住民に知らされないため不安を感じた住民が名古屋大学長谷川助教授に依頼して昭和四七年二月二九日、同年三月八日に行なつた住民七人の調査結果によると血中鉛の正常値以上の者三人、尿中鉛の正常値以上の者三人、毛髪鉛の正常値以上の者五人という異常な結果を示し、同助教授は市に対し、右結果を説明し、被告に対する適切なばいじん減少措置をとるよう勧告されたい旨および場合によつては操業禁止等の強い措置をとるよう要望した。

6 その後の経過

その後前認定のとおり同年一〇月一日第二号集じん機の稼動をはじめるとともに従前に比してばいじん量は若干減少したけれども、昭和四七年二月ころからバッグフィルターの目づまり等により再び集煙効率が低下し作業方法等によつては原告ら被害居住地に依然として従前に匹敵するばいじんが飛来し、そのためやはり原告ら附近住民の苦情が絶えず被告としても右事情を認識し第一号集じん機の効率が前示認定のとおり低下しているためこれにかわる新たな集じん機設置を計画発注済であるが、現在のところ未だ右設置は実現しておらず従前とほぼ同様の操業が続けられている。

三、但し原告らのうち一部の者が被告に対し公害防止措置をとるよう要請したこと、昭和四四年二月二六日県・市から公害防止対策案が提示され、被告がこれを受諾したことはいずれも当事者間に争いがない。

四、結論

(一) 以上一、二に認定した事実によれば、原告らは電気炉が二基となつた昭和三六年春ごろからしばしば直接または県・市を通じて被告に対し、苦情を述べ抗議を続けており、県・市も被告に対し幾度か改善命令や勧告等の行政指導を続けて来たのであるから被告としては、被告工場の操業によるばいじん・騒音・振動が原告ら被害居住地に流入・伝播し、このため原告らの平穏で決適かつ健康な生活を営む利益が侵害され、原告らがこれにより損害を蒙るであろうことは充分認識しえた筈である。

(二) このような場合、その工場から前示第三、一、(三)認定のとおり不快・不衛生であり健康上有害なばいじんおよび情緒的影響を与え易い不快な騒音・振動を発生させる被告が前示第三、一、(四)に認定したとおりの住宅密集地帯を控えた地域において操業を継続するにあたつては事前に有効適切な公害防除手段を講ずる等右ばいじん・騒音・振動が附近住民の生活上の利益特に精神的ないし身体的法益を侵害しないような程度と方法で操業すべき注意義務があることは明らかであると解すべきところ、前示認定のとおり、被告は何等このような公害防除手段を講ずることなく、または不充分な防除手段をとつたのみで慢然操業を継続し更には別表二記載のとおり施設を増大して行なつたのであるから被告の右行為は少なくとも重大な過失による不法行為というべきであり、従つて被告は右行為により昭和三六年一二月以降現在までに原告らが蒙つた損害を賠償すべき義務がある。

(三)  被告が、その工場の操業時に発するばいじん・騒音・振動を防除するため、各種の防除措置をとつたことは既に認定した。

そして<証拠>によれば、被告は大凡、前示製鋼工場東側防音壁の設置(増強を含む)につき、金一、〇六四万一、〇〇〇円、同工場南側防音壁の設置につき、金七三〇万七、〇〇〇円、前示スクラップヤードの屋根取付につき、金一、四四五万五、〇〇〇円、前示製鋼工場の屋根の改善につき、金三五〇万一、〇〇〇円、前示酸素工場酸素液化機に対する防音設備につき、金二五〇万円、前示スクラップヤードの南面積のしやへいにつき、金一四〇万円、前示製鋼工場の排気扇の取付につき金四三四万円、前示第一号集じん機の設置(改善増強工事も含む)につき、金一億二、六〇〇万円、および同防音工事につき金三〇〇万円、前示第一号集じん機排気口の嵩上げにつき、金一六〇万円、前示集じん用ブロアー増設につき、金三八〇万円、前示トヨイダルバーナー一基設置につき、金九八〇万円、前示第二号集じん機の設置につき金一億五、八五〇万円、前示油圧式ケース抜き装置の設置につき、金二〇〇万円、前示ジョイ型コンプレッサー二台の消音器の設置につき、金四二万五、〇〇〇円、前示電気炉および圧延機用の各コンプレッサーの設置につき、金一四六万九、〇〇〇円をそれぞれ要し、総合計約金三億五、〇七三万八、〇〇〇円を費やしたことが認められ、右認定に反する証拠はなく、前示第二、一、(一)、9に認定した事実と、前示乙第五号証とにより認められる被告の企業規模からすれば右は被告としてはかなりの出費であり前示二、(一)、(二)、(四)に認定したとおり被告の右防除設備がいずれも原告らの要請や県・市の指導により、すべて約束の期限を大巾におくれてなされたものであることを考慮してもなお被告側に有利な事情として参酌されるべきものである。

しかし、前示認定のとおり右各設備は被告の発生するばいじん・騒音・振動を完全に防除するに至らなかつたのであるからこれをもつて、被告の右責任を否定しえないこともまた明らかである。

第五損害

一、前示、第四に認定した事実と<証拠>によれば、原告らが被告工場の別表二記載の各施設稼動時に発生するばいじん、騒音、振動により昭和三六年一二月以降、現在まで右原告ら各自の居住期間中、別表七記載の各被害に応じて、平穏で快適かつ健康な生活を営む利益が侵害されたことにより多大の苦痛を強いられて来たことが認められ、右認定に反する証拠はなく、被告は原告らに対し原告らの右精神的苦痛を慰藉するに足る金額を賠償すべきである。

二(一) 被告工場の操業時に発するばいじん、騒音、振動により、右各原告らの蒙つた被害の程度、期間、長期間にわたる精神的苦痛、原告ら居住地と被告工場の位置関係および県・市の指導に対する被告の態度、被告の公害防除に費した費用等本件口頭弁論終結時までの個別的な原告側の事情と被告側の事情および、本件公害の性質、ばいじん、騒音、振動の人体におよぼす影響度等以上認定の諸事実を総合勘案すれば原告らの前示精神的苦痛を慰藉するに足る金額は各原告らについてそれぞれ次のとおりであると解するのが相当である。

(二)1  原告福永九州男につき金四七万五、〇〇〇円

2原告福永ミキにつき金四七万円

3原告福永勇につき金四七万二、〇〇〇円

4原告坂内忠男につき金五六万円

5原告坂内まつ江につき金五六万円

6原告宇佐美仙次郎につき金五五万七、〇〇〇円

7原告宇佐美文雄につき金五五万七、〇〇〇円

8原告宇佐美美代子につき金五五万七、〇〇〇円

9原告宇佐美あけみにつき金五六万二、〇〇〇円

10原告宇佐美忍につき金四七万六、〇〇〇円

11原告土井一晃につき金五二万二、〇〇〇円

12原告土井節子につき金五二万二、〇〇〇円

13原告土井麻友美につき金五二万二、〇〇〇円

14原告土井雅喜につき金四七万円

15原告土井敏全につき金四三万三、〇〇〇円

16原告土井茂につき金二四万七、〇〇〇円

17原告土井へにつき金五二万二、〇〇〇円

18原告宇佐美由春につき金三二万円

19原告宇佐美久子につき金三一万八、〇〇〇円

20原告宇佐美幸治につき金三二万円

21原告宇佐美浩につき金三二万円

22原告小園尚雄につき金二〇万三、〇〇〇円

23原告小園昭美につき金一九万八、〇〇〇円

24原告小園誠司につき金二〇万四、〇〇〇円

25原告久田竹治郎につき金三一万八、〇〇〇円

26原告久田なかにつき金三二万円

27原告久田鎰雄につき金三二万円

28原告久田栄子につき金三一万八、〇〇円

29原告久田直美につき金三一万八、〇〇〇円

30原告久田香織につき金三一万四、〇〇〇円

31原告宇佐美義一につき金三二万円

32原告宇佐美良一につき金三二万円

33原告宇佐美政次郎につき金二〇万八、〇〇〇円

34原告宇佐美清子につき金二七万五、〇〇〇円

35原告宇佐美紀子につき金二三万五、〇〇〇円

36原告宇佐美鎌吉につき金三一万八、〇〇〇円

37原告宇佐美ゆきにつき金三二万二、〇〇〇円

38原告宇佐美松男につき金三二万二、〇〇〇円

39原告宇佐美定子につき金三〇万四、〇〇〇円

40原告宇佐美勝行につき金三二万二、〇〇〇円

41原告奥田幸弘につき金三二万円

42原告奥田勝子につき金三二万円

43原告奥田善幸につき金三一万六、〇〇〇円

44原告奥田美加子につき金二五万七、〇〇〇円

45原告宇佐美鉐十郎につき金三二万二、〇〇〇円

46原告宇佐美かぎにつき金三一万八、〇〇〇円

47原告宇佐美英雄につき金三一万八、〇〇〇円

48原告宇佐美政義につき金三二万円

49原告宇佐美峰子につき金三一万八、〇〇〇円

50原告宇佐美淳史につき金三二万円

51原告宇佐美千代子につき金三一万八、〇〇〇円

52原告宇佐美鉞一につき金三一万八、〇〇〇円

53原告宇佐美につき金三一万八、〇〇〇円

54原告宇佐美清一につき金三一万八、〇〇〇円

55原告宇佐美佳代につき金三一万八、〇〇〇円

56原告宇佐美ジヤウにつき金三一万八、〇〇〇円

57原告佐藤善邦につき金三一万八、〇〇〇円

58原告佐藤あやにつき金三一万八、〇〇〇円

59原告佐藤隆史につき金三二万円

60原告佐藤政史につき金三二万円

61原告佐藤清史につき金三一万八、〇〇〇円

62原告佐藤くににつき金三一万八、〇〇〇円

63原告大橋平数につき金三一万八、〇〇〇円

64原告大橋峯子につき金三二万円

65原告大橋洋子につき金三二万円

66原告大橋陸平につき金三二万二、〇〇〇円

67原告大橋喜美につき金三一万四、〇〇〇円

68原告篠塚孝夫につき金三〇万二、〇〇〇円

69原告篠塚照子につき金三〇万円

70原告篠塚泰伸につき金二四万六、〇〇円

71原告林幹夫につき金三〇万円

72原告林千鶴子につき金二九万八、〇〇〇円

73原告林誠につき金三〇万二、〇〇〇円

74原告林つぎにつき金二九万八、〇〇〇円

75原告山田輝子につき金二九万八、〇〇〇円

76原告山田祐治につき金二九万八、〇〇〇円

77原告清水角蔵につき金一〇万二、〇〇〇円

78原告清水千代につき金二九万八、〇〇〇円

79原告稲森秀子につき金二八万五、〇〇〇円

80原告毛利賢一につき金三一万六、〇〇〇円

81原告毛利より子につき金三一万八、〇〇〇円

82原告毛利正雄につき金三一万六、〇〇〇円

83原告毛利宮子につき金二三万四、〇〇〇円

84原告服部実につき金三〇万四、〇〇〇円

85原告服部艶子につき金三〇万四、〇〇〇円

86原告服部美津子につき金三〇万六、〇〇〇円

87原告服部隆につき金三〇万八、〇〇〇円

88原告奥田兼次郎につき金三一万七、〇〇〇円

89原告奥田はる子につき金三一万七、〇〇〇円

90原告奥田比呂子につき金三一万七、〇〇〇円

91原告原薫につき金三二万円

92原告原房子につき金三二万二、〇〇〇円

93原告原清子につき金三二万円

94原告原茂樹につき金二八万、五〇〇〇円

95原告高橋末夫につき金三万四、〇〇〇円

96原告高橋ふみよにつき金三万四、〇〇〇円

97原告高橋ひめにつき金二万円

98原告広内利夫につき金三一万四、〇〇〇円

99原告広内ヒサ子につき金三一万八、〇〇〇円

100原告広内雅弘につき金三〇万六、〇〇〇円

101原告広内豊につき金三〇万三、〇〇〇円

102原告小原貞雄につき金三一万八、〇〇〇円

103原告小原節子につき金三一万八、〇〇〇円

104原告小原信司につき金二八万円

105原告小原哲之につき金三一万八、〇〇〇円

106原告坂井田ちよにつき金二六万二、〇〇〇円

107原告坂井田節子につき金二六万二、〇〇〇円

108原告坂井田一義につき金二六万三、〇〇〇円

109原告坂井田明典につき金二六万三、〇〇〇円

110原告木原利数につき金三二万二、〇〇〇円

111原告木原ナスエにつき金三一万八、〇〇〇円

112原告木原恵子につき金三二万円

113原告高田勇一につき金二二万三、〇〇〇円

114原告高田紀子につき金二二万円

115原告平本勝也につき金二五万二、〇〇〇円

116原告宇佐美源治につき金一九万円

117原告宇佐美七男につき金二二万六、〇〇〇円

118原告宇佐美昭子につき金二二万六、〇〇〇円

119原告宇佐美仁克につき金二二万三、〇〇〇円

120原告宇佐美裕子につき金二〇万二、〇〇〇円

121原告宇佐美十一につき金二二万五、〇〇〇円

122原告宇佐美正子につき金二二万五、〇〇〇円

123原告宇佐美厚美につき金二二万六、〇〇〇円

124原告宇佐美幸子につき金二一万四、〇〇〇円

125原告宇佐美善三郎につき金五万円

126原告宇佐美志やうにつき金一四万八、〇〇〇円

127原告笠原正照につき金二二万五、〇〇〇円

128原告笠原鶴子につき金二二万七、〇〇〇円

129原告宇佐美金義につき金二二万四、〇〇〇円

130原告宇佐美とうにつき金二二万六、〇〇〇円

131原告宇佐美千恵子につき金二一万四、〇〇〇円

132原告鬼頭清助につき金二二万四、〇〇〇円

133原告鬼頭秋子につき金二二万四、〇〇〇円

134原告鬼頭敬子につき金二二万四、〇〇〇円

135原告鬼頭幸恵につき金二二万四、〇〇〇円

136原告鬼頭克代につき金二〇万二、〇〇〇円

137原告山盛実につき金二二万四、〇〇〇円

138原告山盛重子につき金二二万四、〇〇〇円

139原告山盛征逸につき金二〇万三、〇〇〇円

140原告山盛みち子につき金二一万六、〇〇〇円

141原告山盛賢司につき金二二万四、〇〇〇円

142原告山盛均につき金二二万六、〇〇〇円

143原告山盛せつにつき金二一万五、〇〇〇円

144原告清水豊につき金二二万四、〇〇〇円

145原告清水喜美子につき金二二万七、〇〇〇円

146原告清水武につき金二二万七、〇〇〇円

147原告清水さち子につき金二二万四、〇〇〇円

148原告佐藤春子につき金二二万六、〇〇〇円

149原告佐藤節子につき金二二万四、〇〇〇円

150原告佐藤明美につき金二二万四、〇〇〇円

151原告戸松七五三一につき金二二万六、〇〇〇円

152原告戸松千代子につき金二二万四、〇〇〇円

153原告宇佐美弘につき金二二万五、〇〇〇円

154原告宇佐美やえ子につき金二二万五、〇〇〇円

155原告宇佐美佳代につき金二二万八、〇〇〇円

156原告宇佐美巌につき金二二万五、〇〇〇円

157原告宇佐美すえのにつき金二二万五、〇〇〇円

158原告久田真一につき金二二万四、〇〇〇円

159原告久田隆子につき金二二万円

160原告久田幌につき金二二万四、〇〇〇円

161原告久田久美子につき金二二万円

162原告久田裕二につき金二二万四、〇〇〇円

163原告久田峯興につき金二二万四、〇〇〇円

164原告山本一夫につき金二二万三、〇〇〇円

165原告山本志げ子につき金二二万三、〇〇〇円

166原告山本広志につき金二二万三、〇〇〇円

167原告磯部幹雄につき金二二万七、〇〇〇円

168原告磯部つるえにつき金二二万七、〇〇〇円

169原告磯部栄につき金二二万五、〇〇〇円

170原告磯部智枝につき金二二万五、〇〇〇円

171原告磯部好作につき金二二万七、〇〇〇円

172原告磯部なせにつき金二〇万二、〇〇〇円

173原告浅井銕次郎につき金二二万四、〇〇〇円

174原告浅井と免につき金二二万四、〇〇〇円

175原告宇佐美武雄につき金二二万四、〇〇〇円

176原告宇佐美資子につき金二二万四、〇〇〇円

177原告宇佐美賢次につき金二二万三、〇〇〇円

178原告宇佐美笑子につき金二二万六、〇〇〇円

179原告宇佐美知之につき金二二万三、〇〇〇円

180原告宇佐美明につき金二二万三、〇〇〇円

181原告宇佐美仁につき金二二万三、〇〇〇円

182原告宇佐美了につき金二二万六、〇〇〇円

183原告宇佐美えにつき金二二万三、〇〇〇円

184原告貴船一夫につき金二二万二、〇〇〇円

185原告貴船笑子につき金二二万二、〇〇〇円

186原告貴船誠につき金二二万二、〇〇〇円

187原告貴船みゆきにつき金二二万二、〇〇〇円

188原告貴船修につき金二二万二、〇〇〇円

189原告野口正夫につき金二二万四、〇〇〇円

190原告野口フサにつき金二二万四、〇〇〇円

191原告野口正昭につき金二二万四、〇〇〇円

192原告藤田なにつき金二二万四、〇〇〇円

193原告藤田喬につき金二二万四、〇〇〇円

194原告藤田とよ子につき金二二万六、〇〇〇円

195原告藤田文子につき金二一万二、〇〇〇円

196原告藤田博美につき金二二万六、〇〇〇円

197原告藤田直美につき金二一万二、〇〇〇円

198原告法嶋真一につき金二二万五、〇〇〇円

199原告法嶋鉄子につき金二二万五、〇〇〇円

200原告法嶋真弓につき金二二万五、〇〇〇円

201原告法嶋伸雄につき金一九万五、〇〇〇円

202原告小沢得郎につき金一九万八、〇〇〇円

203原告小沢典子につき金二〇万二、〇〇〇円

204原告小沢一寿につき金一九万六、〇〇〇円

205原告伊藤正につき金二二万七、〇〇〇円

206原告伊藤スミ子につき金二二万七、〇〇〇円

207原告伊藤佳高につき金二二万七、〇〇〇円

208原告伊藤彰浩につき金二二万七、〇〇〇円

209原告森岡四郎につき金二二万四、〇〇〇円

210原告森岡ヒデにつき金二二万四、〇〇〇円

211原告森岡照子につき金一九万二、〇〇〇円

212原告宇佐美捨秋につき金二二万六、〇〇〇円

213原告宇佐美恵美子につき金二二万六、〇〇〇円

214原告宇佐美はるにつき金二二万六、〇〇〇円

215原告宇佐美恵子につき金一八万二、〇〇〇円

216原告山田兼光につき金二三万円

217原告山田喜久子につき金二三万円

218原告山田雪子につき金二三万円

219原告山田武司につき金二三万円

220原告前田慶治につき金二二万六、〇〇〇円

221原告前田志子につき金二二万八、〇〇〇円

222原告内山梅子につき金二二万三、〇〇〇円

223原告伴修造につき金二一万二、〇〇〇円

224原告伴京子につき金二二一万二、〇〇〇円

225原告伴英子につき金二〇万二、〇〇〇円

226原告八神武一につき金二二万七、〇〇〇円

227原告八神ほずみにつき金二二万二、〇〇〇円

228原告八神智江子につき金二二万七、〇〇〇円

229原告八神直子につき金二二万七、〇〇〇円

230原告八神武子につき金二二万七、〇〇〇円

231原告後藤俊浩につき金七万四、〇〇〇円

232原告後藤きみ江につき金七万六、〇〇〇円

233原告後藤順子につき金七万四、〇〇〇円

234原告後藤敏江につき金七万四、〇〇〇円

235原告横山重雄につき金七万六、〇〇〇円

236原告横山きよ子につき金七万六、〇〇〇円

237原告横山いく子につき金六万四、〇〇〇円

238原告横山錠治につき金六万六、〇〇〇円

239原告横山登につき金七万四、〇〇〇円

240原告佐藤与曾次郎につき金七万六、〇〇〇円

241原告佐藤きみにつき金七万五、〇〇〇円

242原告佐藤正幸につき金六万六、〇〇〇円

243原告佐藤定夫につき金七万五、〇〇〇円

244原告佐藤秀雄につき金七万五、〇〇〇円

245原告佐藤信行につき金七万五、〇〇〇円

246原告新海富夫につき金七万四、〇〇〇円

247原告新海トモエにつき金七万四、〇〇〇円

248原告新海健次につき金七万四、〇〇〇円

249原告新海幸子につき金七万四、〇〇〇円

250原告宇佐美健重につき金六万五、〇〇〇円

251原告宇佐美きぬ子につき金六万五、〇〇〇円

252原告宇佐美健一につき金六万五、〇〇〇円

253原告宇佐美静枝につき金六万円

254原告宇佐美夏枝につき金六万五、〇〇〇円

255原告大矢捨次郎につき金七万三、〇〇〇円

256原告大矢千恵子につき金七万三、〇〇〇円

257原告大矢逸男につき金七万三、〇〇〇円

258原告大矢敏男につき金七万円

259原告大矢みさ子につき金七万三、〇〇〇円

260原告佐藤章につき金七万四、〇〇〇円

261原告佐藤則子につき金七万四、〇〇〇円

262原告佐藤輝子につき金七万四、〇〇〇円

263原告佐藤一明につき金七万四、〇〇〇円

264原告佐藤きよ子につき金七万四、〇〇〇円

265原告岸江すゞえにつき金七万三、〇〇〇円

266原告岸江美鈴につき金七万三、〇〇〇円

267原告森下靖人につき金一五万円

268原告炭田しずえにつき金五五万七、〇〇〇円

269原告今枝史郎につき金二七万二、〇〇〇円

270原告屋地幸実につき金二二万八、〇〇〇円

271原告西村正己につき金三三万五、〇〇〇円

272原告西尾信行につき金一八万二、〇〇〇円

273原告宇佐美兼市につき金二二万四、〇〇〇円

274原告高木優につき金二三万五、〇〇〇円

275原告宇佐美てる子につき金二二万六、〇〇〇円

276原告大野昇一につき金五万五、〇〇〇円

277原告青井清司につき金四万二、〇〇〇円

三、従つて被告は右原告らに対し右記載の各金員およびこれに対する口頭弁論終結時である昭和四七年四月一四日以降支払ずみまで民法所定年五分の割合による金員を支払うべき義務がある。

第六差止請求

一、およそ何人であれ、この地上に生を享けている以上、平穏で快適かつ健康な生活を営む利益が保障されなければならないことは条理上当然である。

従つて右利益が違法・有責な他人の行為によつて侵害されその侵害の程度が著しく、かつこのような侵害が将来にわたつて継続する高度の可能性が存在する場合には、被害者としては普段の免責事由の存在しない限り即ち侵害行為の社会的有用性、差止により加害者の蒙る損害の大きさおよび加害者の防除措置に対する努力等が右侵害避止義務を免責する程度のものでない限り加害者に対し一定の限度で右侵害の差止を請求しうるものと解すべきである。

過去における違法有責な行為に対する被害者の損害賠償請求権を規定している民法第七〇九条がこのような当然の事理を否定する趣旨を含んでいるものと解されるべきではない。

二(一)  原告福永九州男、同福永ミキ、同福永勇、同坂内忠男、同坂内まつ江、同宇佐美仙次郎、同宇佐美文雄、同宇佐美美代子、同宇佐美あけみ、同宇佐美忍、同土井一晃、同土井節子、同土井麻友美、同土井雅喜、同土井へ、同宇佐美由春、同宇佐美久子、同宇佐美幸治、同宇佐美浩、同久田竹次郎、同久田なか、同久田鎰雄、同久田栄子、同久田直美、同久田香織、同宇佐美義一、同宇佐美良一、同宇佐美鎌吉、同宇佐美ゆき、同宇佐美松男、同宇佐美勝行、同奥田幸弘、同奥田勝子、同奥田善幸、同奥田美加子、同宇佐美鉐十郎、同宇佐美かぎ、同宇佐美英雄、同宇佐美政義、同宇佐美峰子、同宇佐美淳史、同宇佐美千代子、同宇佐美鉞一、同宇佐美、同宇佐美浩一、同宇佐美佳代、同宇佐美ジヤウ、同佐藤善邦、同佐藤あや、同佐藤隆史、同佐藤政史、同佐藤清史、同佐藤くに、同大橋平数、同大橋峯子、同大橋洋子、同大橋陸平、同大橋喜美、同篠塚孝夫、同篠塚照子、同篠塚泰伸、同林幹夫、同林千鶴子、同林誠、同林つぎ、同山田輝子、同山田祐治、同清水千代、同稲森秀子、同毛利賢一、同毛利より子、同毛利正雄、同毛利宮子、同奥田兼次郎、同奥田はる子、同奥田比呂子、同原薫、同原房子、同原清子、同原茂樹、同広内利夫、同広内ヒサ子、同広内豊、同小原貞雄、同小原節子、同小原信司、同小原哲之、同木原利敦、同木原ナスエ、同木原恵子、同高田勇一、同高田紀子、同宇佐美七男、同宇佐美昭子、同宇佐美仁克、同宇佐美裕子、同宇佐美十一、同宇佐美正子、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同宇佐美志やう、同笠原正照、同笠原鶴子、同宇佐美金義、同宇佐美とう、同宇佐美千恵子、同鬼頭清助、同鬼頭秋子、同鬼頭敏子、同鬼頭幸恵、同鬼頭克代、同山盛実、同山盛重子、同山盛賢司、同山盛均、同清水豊、同清水喜美子、同清水武、同清水さち子、同佐藤春子、同佐藤節子、同佐藤明美、同戸松七五三一、同戸松千代子、同宇佐美弘、同宇佐美やえ子、同宇佐美佳代、同宇佐美巌、同宇佐美すえの、同久田真一、同久田幌、同久田裕二、同久田峯興、同山本一夫、同山本志げ子、同山本広志、同磯部幹雄、同磯部つるえ、同磯部栄、同磯部智枝、同磯部好作、同浅井銕次郎、同浅井と免、同宇佐美武雄、同宇佐美資子、同宇佐美賢次、同宇佐美笑子、同宇佐美知之、同宇佐美明、同宇佐美仁、同宇佐美了、同宇佐美え、同貴船一夫、同貴船笑子、同貴船誠、同貴船みゆき、同貴船修、同野口正夫、同野口フサ、同野口正昭、同藤田な、同藤田喬、同藤田とよ子、同藤田博美、同藤田直美、同法嶋真一、同法嶋鉄子、同法嶋真弓、同法嶋伸雄、同小沢得郎、同小沢典子、同小沢一寿、同伊藤正、同伊藤スミ子、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同森岡四郎、同森岡ヒデ、同宇佐美捨秋、同宇佐美恵美子、同宇佐美はる、同宇佐美恵子、同山田兼光、同山田喜久子、同山田雪子、同山田武司、同前田慶治、同前田志子、同伴修造、同伴京子、同伴英子、同八神武一、同八神ほずみ、同八神智江子、同八神直子、同八神武子、同後藤俊浩、同後藤きみ江、同後藤順子、同後藤敏江、同横山重雄、同横山きよ子、同横山登、同佐藤与曾次郎、同佐藤きみ、同佐藤正幸、同佐藤定夫、同佐藤秀雄、同佐藤信行、同新海富夫、同新海トモエ、同新海健次、同新海幸子、同宇佐美健重、同宇佐美きぬ子、同宇佐美健一、同宇佐美夏枝、同大矢捨次郎、同大矢千恵子、同大矢逸男、同大矢敏男、同大矢みさ子、同佐藤章、同佐藤則子、同佐藤輝子、同佐藤一明、同佐藤きよ子、同岸江すゞえ、同岸江美鈴、同炭田しずえ、同宇佐美兼市、同宇佐美てる子が、別表一Ⅳ居住期間欄記載の時点から同表被害居住地欄記載の住居に居住して来たこと、現在も同所に居住していること(以下現住原告らという。)、その余の原告らは、現在同表記載の被害居住地に居住していないことは既に認定したとおりである。

(二)  被告工場から排出され、原告ら居住地内に流入した本件ばいじんがばいじんの一般的性質からいつて、また鉛、カドミウム等多量の健康上有害な物質を含んでいること、環境基準の最高30.8倍平均6.3倍という高濃度であること等からいつて、原告らの受忍すべき限度をこえた違法な侵害であること、右ばいじんによつて、原告らが昭和三六年一二月以降現在まで継続して別表七Ⅱ欄記載の生活上の利益を侵害され、同表ⅢⅣ欄記載の健康に対する侵害を蒙つて来たこと、それが被告の操業上の過失によるものであることは既に認定した。

(三)  昭和四四年三月一〇日、被告および原告ら附近住民との間において、被告工場からのばいじんの排出を現状の三分の一とすることを内容とする公害防止対策協定が成立したこと、これは原告ら居住地内におけるばいじん濃度が、右協定成立時即ちこの場合は右協定成立時に最も接近した時点である昭和四四年一月八日から一〇日にかけて行なわれた前示測定番号S―4の測定におけるばいじん濃度の測定結果の平均値1.96mg/m2の三分の一である0.65mg/m2以下の濃度を維持するように被告工場からのばいじんの排出量を制限する趣旨のとりきめであると解すべきこと、その後昭和四五年一一月二日付被告からの、昭和四五年一一月三〇日までに原告ら被害居住地内における環境汚染ばいじん量が二四時間平均値0.65mg/m2となるようにする旨および仮りに一二月一日以降も右汚染ばいじん量右0.65mg/m2をこえた時は、右値になるまで電気炉を停止する、昭和四五年一一月三〇日までは応急対策として電気炉一基を停止する、気象条件の悪化により特に環境汚染度の高い時には電気炉の操業を一ないし二基停止することを再確認する旨の書面が愛知県知事あて提出されていること、ところが被告はその後態度を変え、電気炉が全部停止したときでも右ばいじん汚染値は0.38mg/m2あるので右ばいじん汚染値が1.96mg/m2から右数値を引いた値の三分の一である0.53mg/m2に0.38mg/m2を加えた0.91mg/m2になるまでばいじんの排出を制限しなくてもよいと主張するに至り、県も被告の右態度表明をみて、昭和四六年一月ごろ方針を変更し前示のとおり築港変電所における一週間連続測定の平均値0.201mg/m2をもつて、被告工場近辺地域のバック汚染値とし、これに基いて計算した0.787mg/m2までは排出制限は必要ないという方針を打ち出すに至つたこと、その後の測定結果によつても右基準値はあまり守られておらず、前示昭和四四年一一月六日、七日および同月二五日から二七日までの測定の際も右値をこえ、昭和四五年一一月五日から翌昭和四六年三月二七日までに行なわれた測定の際も二四時間平均値が0.65mg/m2以下になつたのは一六回中一回だけで他はすべてこれを超過したこと、はいずれも既に認定した。

なお前示のとおり公害対策基本法第九条に基いて定められた浮遊粒子状物質に係る環境基準によれば、人の健康を保護するうえで維持することが望ましい基準として、大気中に浮遊する粒子状物質で、あつてその粒径が一〇ミクロン以下のものについては(一)連続する二四時間における一時間値の平均値が大気一立方メートルにつき0.10ミリグラム以下であること、(二)一時間値が大気一立方メートルにつき0.20ミリグラム以下であること、の二つの要件のいずれをも満たすべきものとされており、右0.65mg/m2をこれと比較すれば前示認定の被告工場のばいじんの粒度分布によつて、一〇ミクロン以上の粒子を最大量二〇%とみてこれを修正しても、0.52mg/m2となり右環境基準値中(一)の五倍、(二)の2.5倍となる。

(四)1  右(一)ないし(三)の各事実と前示第二に認定した各事実および<証拠>によれば、被告工場から排出されるばいじんは従前に比較し若干減少したものゝ作業方法によつては、将来にわたつて従前の量に匹敵する量のそれが排出され、右二(一)記載の現住原告らが社会生活上受忍すべき限度を著しくこえた量のばいじんが右現住原告ら居住地内に侵入し連続する二四時間における一時間値の平均値が0.65mg/m2をこえ同人らの前示平穏で快適かつ健康な生活を営む利益を継続的に侵害し、損害を生ぜしめる高度の可能性があるけれども、原告土井敏全、同土井茂、同小園尚雄、同小園昭美、同小園誠司、同宇佐美清子、同宇佐美政次郎、同宇佐美紀子、同宇佐美定子、同清水角蔵、同服部実、同服部艶子、同服部美津子、同服部隆、同高橋末夫、同高橋ふみよ、同高橋ひめ、同広内雅弘、同坂井田ちよ、同坂井田節子、同坂井田一義、同坂井田明典、同平本勝也、同宇佐美源治、同宇佐美善三郎、同山盛征逸、同山盛みち子、同山盛せつ、同久田隆子、同久田久美子、同磯部なせ、同藤田文子、同森岡照子、同内山梅子、同横山いく子、同横山錠治、同宇佐美静枝、同森下靖人、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己、同西尾信行、同高木優、同大野昇一、同青井清司についてはその可能性がないことが認められ右認定に反する証拠はない。

2  また、第一号集じん機の集煙効率が低下したゝめこれにかわる新たな集じん機の設置が計画され発注済みであることは既に認定したとおりであるが、右集じん機の性能は明らかでない上に、もともと現段階における集じん機には、出鋼時、材料装入時、および炉内で可燃性物質の異常燃焼により一時的に多量のガスが発生するときには集煙が不可能であるという現在の技術水準では克服困難な欠点があり更に従来の第一、二号集じん機がいずれも保守管理の不徹底もあつて、正式稼動後約四ケ月程度で集煙効率の低下を来たしていることも既に認定したとおりであるから、右集じん機の新設計画および発注の事実も、右侵害継続の可能性認定のさまたげとはならない。

四(一)  被告は、その製鋼工場において、スクラップを熔解し、それを建築用丸棒鋼に圧延加工する製鋼業務を行なう株式会社であることは既に認定した。

右事実によれば被告は営利企業であつて利潤の追求を第一の目的とするが、それ自体違法行為の追求を目的とするものではなく、鉄鋼資材に対する社会的、経済的な需要をみたし、そのような形で人間の社会生活に一定の便益を供給しつゝあるものであることは明らかであるが、更にすゝんで、被告の企業活動が、被告の侵害避止義務を免責する程の高度の社会的有用性を有するものと認めるに足りる証拠はない。

また右利潤の追求や便益の供給も、原告ら附近住民の平穏で快適かつ健康な生活を享受する利益を違法に侵害してまでも追求されるべき価値を有するものとは解しえない。

特に前示第二の四に認定したとおり別表七Ⅳ、Ⅴ欄記載の原告らの健康が侵害されつゝあり、その他既に認定したところから、その余の原告らの健康も侵害される危険のあることが認められるから、このことは一層明らかといわなければならない。

蓋し何人も他人の健康を犠牲にして、利潤の追求をはかることは許されないところだからである。

(二)  従つて仮りに電気炉につき操業の一部停止等を行なう必要が生じ、被告が若干の損害を蒙ることがあつても、これをもつて原告らの蒙る精神的身体的な損害との較量において、差止請求の許否を云々することは許されない。

五被告がその製鋼工場から発生するばいじんを除去するため、約二億八、四五〇万円の費用を投じて第一号および第二号集じん機を設置、稼動したこと、しかし右集じん機はいずれも、当初は所期の効果をおさめたが、約四ケ月程度の運転によつて機能が低下し所期の目的を達し得なくなつたことはいずれも既に認定したとおりである。

従つて、右ばいじんの除去について被告が最善の防止措置を講じたものとは到底いえない。

六(一)  その他、被告の右侵害避止義務を免責すべき特段の事情を認めるに足りる証拠はない。

(二) 昭和三六年一二月以降現在までの本件ばいじん汚染が専ら被告工場の操業時に発生するばいじんによつてもたらされたものであることは既に認定したが、このこと並びに前示第二および第四に認定した各事実から、被告工場内におけるばいじんの発生を抑制することによつてのみ本件被害地域、特に前示現住原告ら居住地内におけるばいじん量が一定限度をこえることを確実に抑止しうるものと推認される。

(三)  前示第二、一、(二)に認定のとおり集じん機自体からはばいじんは発生していない。

七以上の諸点を総合勘案すれば本件の場合にあつては、原告らのうち前示二、(一)記載の現住原告らには、被告に対し右原告ら各自の被害居住地内におけるばいじんについて、被告工場内の各ばいじん発生施設から連続する二四時間における一時間値の平均値が大気一立方メートルにつき0.65mg/m2をこえるようなばいじんの発生の差止を請求する権利があるが、原告らのうち原告土井敏全、同土井茂、同小園尚雄、同小園昭美、同小園誠司、同宇佐美政次郎、同宇佐美清子、同宇佐美紀子、同宇佐美定子、同清水角蔵、同服部実、服部艶子、同服部美津子、同服部隆、同高橋末夫、同高橋ふみよ、同高橋ひめ、同広内雅弘、同坂井田ちよ、同坂井田節子、同坂井田一義、同坂井田明典、同平本勝也、同宇佐美源治、同宇佐美善三郎、同山盛征逸、同山盛みち子、同山盛せつ、同久田隆子、同久田久美子、同服部なせ、同藤田文子、同森岡照子、同内山梅子、同横山いく子、同横山錠治、同宇佐美静枝、同森下靖人、同今枝史郎、同屋地幸実、同西村正己、同西尾信行、同高木優、同大野昇一、同青井清司についてはこのような権利はないものと解すべきである。

第七被告の主張に対する判断

一、家族および同居者の請求について

被告は生活環境上の不利益についての賠償請求は居住建物の所有者または占有者がその家族または同居者を代表してなすべきであつて家族または同居者にすぎない者の請求は失当であると主張するが、そもそも不法行為に基く損害賠償請求権は違法な行為により損害を蒙つた個々人について発生するものであり本件の場合も被告の不法行為に基き原告らの蒙つた精神的損害(慰藉料)の賠償を請求するものであるから右と別異に解することは許されず、被告の主張は理由がない。

二、分割責任について

被告は、被告工場周辺のばいじん汚染濃度が、被告工場の休業時にも低下しないことを理由に本件ばいじん被害に対する被告の寄与度が軽微であるとしこれに応じた分割責任を負担すれば足りる旨主張するが、被告の休業は一週間のうち一日程度であること、一日、二日程度の休業では、大気中に被告工場からのばいじんが残留している関係上、その影響を払拭しえないこと、本件被害地域周辺には、他に、被告工場に比肩すべき公害源は見当らないこと、本件ばいじん被害が、専ら被告工場の操業時に発するばいじんによつてもたらされたものであること、は既に認定したとおりであり従つて被告の右主張はその前提事実において認められない以上、その余の点について判断するまでもなく失当として排斥すべきである。

三田中勝鉄工所との和解と本訴請求について

被告は、原告ら中田中勝鉄工所附近の原告宇佐美金義、同宇佐美とう、同宇佐美千恵子、同笠原正照、同笠原鶴子、同宇佐美十一、同宇佐美正子、同宇佐美志やう、同宇佐美厚美、同宇佐美幸子、同伊藤正、同伊藤スミ子、同伊藤佳高、同伊藤彰浩、同宇佐美鉐十郎、同宇佐美かぎ、同宇佐美英雄らは有限会社田中勝鉄工所に対し騒音、振動による不法行為に基く損害賠償の訴を提起し、昭和四七年三月二八日名古屋高等裁判所において裁判上の和解をなしその生活環境上の不利益について補填を得、また右原告らと同様右田中勝鉄工所附近の原告らについても本来右原告らに準じて右田中勝鉄工所から損害賠償を受くべきものであるから被告に対する本訴請求は失当であると主張する。なるほど前示乙第三七号証と成立に争いのない同第三四号証によれば、右訴提起と被告主張の如き和解の事実を認めることができるけれども右和解による損害の補填は右田中勝鉄工所の騒音、振動による不法行為が右原告らにもたらした損害を補填したものにすぎず、それ以上他から蒙ることのあり得る生活利益の侵害についてまでその損害を補填したものでないことは明らかである。そして前示認定のとおり、右田中勝鉄工所附近の原告らも被告工場から発するばいじん、騒音、振動により生活上の不利益を蒙り損害を受けているのであるからその程度に応じ被告に責任のあることは当然である。被告の主張は理由がない。

四消滅時効について

被告は、昭和四〇年(ワ)第二、一一二号事件(以下前訴という。)の原告らについては、提訴の日である昭和四〇年八月二五日の三年前の昭和三七年八月二五日以前の損害および昭和四四年九月二五日右請求額を拡張した日の三年前である昭和四一年九月二五日以前の拡張に係る損害部分に対する賠償請求権並びに昭和四四年(ワ)第三、三三四号事件(以下後訴という。)の原告らについてはその提訴の日である昭和四四年一一月一三日の三年前の昭和四一年一一月一三日以前の損害に対する賠償請求権はいずれも時効により消滅した旨主張するので判断するに、およそ不法行為に基く損害に対する賠償請求権につき民法第七二四条に定める時効が進行するためには被害者において、加害者の行為が適法であることを「確知」する即ち確実に認識することを要するものと解すべきところ(大判大七、三、一五、民録二四、四九八)、まず前訴の原告らについて考えれば、なるほど昭和三六年二月電気炉二号炉の稼動の開始とともに既に原告らの一部のものは直接被告に苦情を申立て、同年夏には名古屋市にも陳情を行なつており、その後昭和三七年当時も、原告らは県、市、その他関係各方面に対する陳情に明け暮れていたことは既に認定したとおりであるが、右事実も、前示のとおり昭和三七年八月二五日当時はばいじんについて環境基準は勿論排出基準さえ定立されておらず、騒音、振動についても規制基準は定められておらず野放し同然の状態であつたことゝ相まつて、むしろ当時右原告らが被告の行為につき違法性の確たる認識を有しなかつたことを推認させる資料とはなつても、右違法性の認識を有したことの証左とは到底なしえない。

その他右原告らが昭和三七年八月二五日ないしこれに接近した時点において、被告の侵害行為を違法なものとして確知していたことについては何等これを認めるに足りる証拠はない。

また後訴の原告らについてみれば、昭和四一年一一月一三日当時振動については未だ何らの基準も定められていなかつたがばいじん、騒音については、既に前示各法条に基く各種の基準が定立されており、また当時、既に他の原告らによる前訴が係属中であつたけれども前示第四、二、(二)、5に認定した事実と前示甲第六号証と弁論の全趣旨とによれば当時被告工場から排出されるばいじん、騒音が右各基準に適合しているか否かについての正確なデータは右原告らには知らされていなかつたこと、右原告らにはこの点について明確な数値を入手する手段、方法もなかつたこと、を認めることができ右認定に反する証拠はなく、従つて右原告らは当時被告の行為が違法であるとの確たる認識を有していなかつたことを推認しうるのである。

右「違法の認識」はあくまで個々人についてその存否が問題となるのであり、家族ないし家団を単位として考えることは許されないから、同居の親族などによる前訴の係属があるからといつてこのことだけでは右認定を左右するに足りない。

次に原告らのうち請求額を拡張した原告らに関する拡張部分の時効消滅の点については、右拡張はいずれも右原告らがそれぞれ既に行使している被告の不法行為に対する一個の損害賠償請求権に基く請求額を増額したものにすぎず、別個の性質を有する新たな請求権を行使したものではないから、この拡張部分につき独立して時効が成立する余地はない。

従つてその余の点につき判断するまでもなく、被告の右各抗弁はいずれも失当として排斥すべきである。

第八むすび

よつて、被告は、原告らに対し、主文一番号1ないし277の各金員およびこれに対する昭和四七年四月一四日以降支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、また主文二掲記の原告らに対し、名古屋市中川区福川町二丁目一番地所在の製鋼工場内の各ばいじん発生施設から右原告らの肩書住所所在の右原告ら居宅敷地内のばいじんについて、連続する二四時間における一時間値の平均値が大気一立方メートルあたり0.65ミリグラムをこえるようなばいじんを発生させない義務があり、原告らの本訴請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、原告らのその余の請求は、いずれも失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条第九二条仮執行の宣言について同法第一九六条第一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(小沢三郎 日高乙彦 長島孝太郎)

別紙一 当事者目録

原告 福永九州男

外二七六名

原告森下靖人外五四名の訴訟代理人 原田武彦

原告森下靖人外二七三名の訴訟代理人兼原告宇佐美善三郎外二名の訴訟復代理人 小栗孝夫

榊原匠司

平野保

被告 利川製鋼株式会社

右代表者 利川秀吉

右訴訟代理人 入谷規一

浪川遊男

水野唯一郎

別紙二 証拠目録<略>

別表一

番号

世帯番号

原告氏名

年令

続柄

世帯

構成

被害居住地

居住期間

利息

起算日

請求額

疾病

1

1

福永九州男

39 世帯主

中川区外新町

四丁目

三一番地

(同町

四丁目七番地)

三六、五~四四、三

四四、 三~

九、二七

金 七〇万円

感冒、

気管支炎、

ノイローゼ、

急性結膜炎、

咽喉頭炎、

耳鳴

2

福永ミキ

42  妻

三六、五~四四、三

四四、三~

一一、二一

金 七〇万円

3

福永勇

10 長男

三六、一二~四四、三

四四、三~

一一、二一

金 七〇万円

感冒、

気管支炎

4

2

坂内忠男

61 世帯主

中川区外新町

四丁目

七番地

三六、 二~

一一、二一

金 七〇万円

咽喉頭炎

5

坂内まつ江

59 妻

三六、 二~

九、二七

金 七〇万円

気管支炎、

流行性感冒

6

3

宇佐美仙次郎

72 世帯主

中川区外新町

四丁目

二三番地

M三二、 九~

一一、二一

金 七〇万円

7

宇佐美文雄

42 長男

四、 五~

九、二七

金 七〇万円

8

宇佐美美代子

41 長男の妻

三六、 三~

一一、二一

金 七〇万円

9

宇佐美あけみ

10 長男の長女

三六、 九~

一一、二一

金 七〇万円

10

宇佐美忍

9 長男の二女

三八、 三~

一一、二一

金 七〇万円

急性上気道炎

11

4

土井一晃

40 世帯主

中川区福川町

三丁目

一番地

二二、一二~

一一、二一

金 七〇万円

12

土井節子

34 妻

三五、 二~

一一、二一

金 七〇万円

13

土井麻友美

11 長女

三六、 一~

一一、二一

金 七〇万円

14

土井雅喜

8 長男

三八、 八~

一一、二一

金 七〇万円

15

土井敏全

31 弟

二七、一二~四五、一〇

一一、二一

金 七〇万円

16

土井茂

二二、一二~四一、 七

九、二七

金 七〇万円

17

土井へ

68 母

二二、一二~

一一、二一

金 七〇万円

18

5

宇佐美由春

39 世帯主

中川区外新町

四丁目

二四番地

三二、一一~

九、二七

金 四〇万円

急性気管支炎

19

宇佐美久子

36 妻

三二、一一~

一一、二一

金 四〇万円

20

宇佐美幸治

12 長男

三四、 七~

一一、二一

金 四〇万円

急性気管支炎

21

宇佐美浩

10 二男

三六、 九~

一一、二一

金 四〇万円

急性気管支炎

22

6

小園尚雄

36 世帯主

中川区外新町

四丁目

一九番地

三九、一〇~四五、一〇

九、二七

金 四〇万円

感冒、

咽喉頭炎

(上気道炎)、

結膜炎

23

小園昭美

30 妻

三九、一〇~四五、一〇

一一、二一

金 四〇万円

感冒

24

小園誠司

7 長男

三九、一〇~四五、一〇

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

咽喉頭炎、

結膜炎、

角膜炎

25

久田竹治郎

90 世帯主

二、 二~

一一、二一

金 四〇万円

26

7

奥田久田なか

79 妻

中川区外新町

四丁目

一八番地

二、 二~

一一、二一

金 四〇万円

急性気管支炎

27

久田鎰雄

42 六男

五、 三~

九、二七

金 四〇万円

急性気管支炎

28

久田栄子

41 六男の妻

三三、 二~

一一、二一

金 四〇万円

感冒

29

久田直美

13 六男の長女

三四、 一~

一一、二一

金 四〇万円

30

久田香織

10 六男の二女

三七、 二~

一一、二一

金 四〇万円

肺結核

31

8

宇佐美義一

60 世帯主

中川区外新町

四丁目

一一番地

M四四、 五~

九、二七

金 四〇万円

感冒、

結膜炎、

高血圧、

脳動脈硬化症

32

宇佐美良一

34 長男

一二、 六~

九、二七

金 四〇万円

結膜炎

33

宇佐美政次郎

29 二男

一七、一二~四六、 五

一一、二一

金 四〇万円

結膜炎

34

宇佐美鶴子

31 長男の妻

三七、一二~四五、一二

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎、

急性結膜炎

35

宇佐美紀子

7 長男の長女

三九、 七~四五、一二

一一、二一

金 四〇万円

結膜炎

36

9

宇佐美鎌吉

67 世帯主

中川区外新町

四丁目

一二番地

M三八、 一~

九、二七

金 四〇万円

感冒

37

宇佐美ゆき

39 妻

一四、 一~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎、

咽喉頭炎

38

宇佐美松男

39 長男

一七、 九~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎、

咽喉頭炎

39

宇佐美定子

24 三女

二二、 四~四六、一一

一一、二一

金 四〇万円

感冒

40

宇佐美勝行

23 二男

二三、一二~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

咽喉頭炎

41

10

奥田幸弘

37 世帯主

中川区外新町

四丁目

一〇番地

三六、 二~

九、二七

金 四〇万円

42

奥田勝子

35 妻

三六、 二~

一一、二一

金 四〇万円

43

奥田善幸

10 長男

三七、 二~

一一、二一

金 四〇万円

44

奥田美加子

8 長女

三九、 七~

一一、二一

金 四〇万円

急性気管支炎

45

11

宇佐美鉐十郎

74 世帯主

中川区外新町

四丁目

三八番地

三二、 四~

九、二七

金 四〇万円

流行性感冒兼

急性気管支炎

兼咽頭炎

46

宇佐美かぎ

69 妻

三二、 四~

一一、二一

金 四〇万円

47

宇佐美英雄

31 二男

三二、 四~

一一、二一

金 四〇万円

48

宇佐美政義

36 世帯主

二六、 九~

九、二七

金 四〇万円

咽喉頭炎

49

12

宇佐美峰子

34 妻

中川区外新町

四丁目

三七番地

一二、 四~

一一、二一

金 四〇万円

感冒

50

宇佐美淳史

10 長男

三七、 二~

一一、二一

金 四〇万円

急性気管支炎

咽喉頭炎、

結膜炎

51

宇佐美千代子

56 養母

一一、 四~

一一、二一

金 四〇万円

52

13

宇佐美鉞一

48 世帯主

中川区外新町

四丁目

三五番地

T一二、 六~

九、二七

金 四〇万円

流行性感冒

53

宇佐美~

44 妻

二七、 三~

一一、二一

金 四〇万円

54

宇佐美浩一

19 長男

二七、一〇~

一一、二一

金 四〇万円

55

宇佐美佳代

16 長女

三〇、 三~

一一、二一

金 四〇万円

56

宇佐美ジヤウ

73 母

M三一、一〇~

一一、二一

金 四〇万円

57

14

佐藤善邦

50 世帯主

中川区外新町

四丁目

三三番地

T一一、 三~

九、二七

金 四〇万円

心臓衰弱、

低血圧

58

佐藤あや

44 妻

二八、一〇~

一一、二一

金 四〇万円

59

佐藤隆史

18 長男

二九、 三~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎

60

佐藤政史

16 二男

三一、 四~

一一、二一

金 四〇万円

結膜炎

61

佐藤清史

12 三男

三四、 六~

一一、二一

金 四〇万円

62

佐藤くに

70 母

T一〇、 一~

一一、二一

金 四〇万円

63

15

大橋平数

46 世帯主

中川区外新町

四丁目

二六番地

一七、一二~

九、二七

金 四〇万円

64

大橋峯子

43 妻

二七、 一二~

一一、二一

金 四〇万円

流行性感冒、

気管支炎

65

大橋洋子

18 長女

二八、 八~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

結膜炎

66

大橋睦平

14 長男

三二、一一~

一一、二一

金 四〇万円

結膜炎

67

大橋喜美

9 二女

三七、 四~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎

68

16

篠塚孝夫

37 世帯主

中川区大山町

五二番地

三四、一二~

九、二七

金 四〇万円

咽喉頭炎、

急性咽頭炎

69

篠塚照子

36 妻

三四、一二~

一一、二一

金 四〇万円

気管支喘息

70

篠塚泰伸

7 長男

三九、 七~

一一、二一

金 四〇万円

気管支喘息、

中耳炎流行性

耳下腺炎

71

林幹夫

37 世帯主

九、一一~

九、二七

金 四〇万円

感冒、

気管支炎

72

17

林千鶴子

42 妻

中川区大山町

五二番地

三二、一〇~

一一、二一

金 四〇万円

73

林誠

13 長男

三三、 八~

一一、二一

金 四〇万円

重症腺奪性

扁桃腺炎兼

気管支炎

74

林つぎ

75 母

T 六、一〇~

一一、二一

金 四〇万円

高血圧症

兼慢性胃炎、

白内障

75

18

山田輝子

52 世帯主

中川区福川町

三丁目

一番地の一二

二二、一〇~

一一、二一

金 四〇万円

76

山田祐治

17 養子

三二、 一~

一一、二一

金 四〇万円

77

清水角蔵

二七、 一~

九、二七

金 四〇万円

肺結核

78

清水千代

80 世帯主

二七、 一~

一一、二一

金 四〇万円

79

稲森秀子

57 同居人

三七、 七~

一一、二一

金 四〇万円

80

19

毛利賢一

65 世帯主

中川区外新町

四丁目

三四番地

三七、 二~

年 月 日

四七、四、一三

金 四〇万円

感冒、

上気道感染症、

(急性)肺炎、

皮膚炎、

肝臓、

腎臓、目、胃

81

毛利より子

58 妻

三七、 二~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

目、胃

82

毛利正雄

34 長男

三七、 二~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

不眠、

頭重

83

毛利富子

32 長男の妻

四〇、 一~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

不眠頭重、

めまい、

耳鳴

84

20

服部実

41 世帯主

中川区外新町

四丁目

三七番地

三三、 四~四六、 八

一一、二一

金 四〇万円

85

服部艶子

37 妻

三三、 四~四六、 八

一一、二一

金 四〇万円

86

服部美津子

13 長女

三三、一〇~四六、 八

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

咽喉頭炎

87

服部隆

10 長男

三六、 六~四六、 八

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

咽喉頭炎

88

21

奥田兼次郎

65 世帯主

中川区外新町

四丁目

三七番地

(同町

四丁目

三九番地)

二三、 四~三七、 二

三七、 四~

一一、二一

金 四〇万円

89

奥田はる子

66 妻

二三、 四~三七、 四

三七、 四~

一一、二一

金 四〇万円

90

奥田比呂子

57 長女

二三、 四~二七、 四

二七、 四

一一、二一

金 四〇万円

91

22

原薫

41 世帯主

中川区新外町

四丁目

一一番地

三三、一二~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎

92

原房子

33 妻

三三、一二~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎、

結膜炎

93

原清子

11 長女

三五、 四~

一一、二一

金 四〇万円

咽喉頭炎、

常時鼻血

94

原茂樹

6 長男

三八、九~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

気管支炎、

角膜炎

95

23

高橋末夫

30 世帯主

中川区外新町

四丁目

一一番地

四四、四~四五、六

一一、二一

金 四〇万円

タンがよく出て、

のど、頭も痛い。

96

高橋ふみよ

28   妻

四四、四~四五、六

一一、二一

金 四〇万円

頭痛、

のどの痛み。

かぜをひきやすい。

97

高橋ひめ

72   母

四四、四~四四、一一

一一、二一

金 四〇万円

98

24

広内利夫

37 世帯主

中川区外新町

四丁目

一一番地

三七、二~

一一、二一

金 四〇万円

99

広内ヒサ子

45   妻

三六、九~

一一、二一

金 四〇万円

100

広内雅弘

19 長男

三六、九~四六、一〇

一一、二一

金 四〇万円

101

広内豊

9 二男

三七、九~

一一、二一

金 四〇万円

102

25

小原貞雄

55 世帯主

中川区外新町

四丁目

一一番地

三六、七~

一一、二一

金 四〇万円

103

小原節子

49   妻

三六、七~

一一、二一

金 四〇万円

104

小原信司

21 長男

三六、七~四五、二

四六、六~

一一、二一

金 四〇万円

105

小原哲之

17 二男

三六、七~

一一、二一

金 四〇万円

感冒

106

26

坂井田ちよ

50 世帯主

中川区外新町

四丁目

一一番地

(同町

四丁目七番地)

三三、八~四三、一二

四三、一二~四四、一二

一一、二一

金 四〇万円

107

坂井田節子

24 長女

三三、八~四三、一二

四三、一二~四四、一二

一一、二一

金 四〇万円

感冒

108

坂井田一義

22 長男

三三、八~四三、一二

四三、一二~四四、一二

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

結膜炎

109

坂井田明典

17 二男

三三、八~四三、一二

四三、一二~四四、一二

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

結膜炎

110

27

木原利敦

43 世帯主

中川区外新町

四丁目

三三番地

三五、一二~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎、

結膜炎、

角膜炎

111

木原ナスエ

41   妻

三五、一二~

一一、二一

金 四〇万円

112

木原恵子

15 長女

三五、一二~

一一、二一

金 四〇万円

気管支炎

113

28

高田勇一

31 世帯主

中川区外新町

四丁目

一八番地

四〇、四~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

結膜炎、

のどの痛み

114

高田紀子

31   妻

四〇、五~

一一、二一

金 四〇万円

感冒、

咽喉頭炎

115

29

平本勝也

35 世帯主

中川区外新町

四丁目

一一番地

(同町

四丁目七番地)

三八、四~四一、一二

四一、一二~四五、一〇

一一、二一

金 四〇万円

116

30

宇佐美源治

中川区外新町

四丁目

五五番地

T一三、三~四四、一二

一一、二一

金 三〇万円

感冒

117

宇佐美七男

41 世帯主

三一、九~

九、二七

金 三〇万円

気管支炎

118

宇佐美昭子

34   妻

三三、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支炎、

眼病

119

宇佐美仁克

10 長男

三六、一二~

一一、二一

金 三〇万円

120

宇佐美裕子

8 長女

三八、七~

一一、二一

金 三〇万円

小児気管支

喘息

121

31

宇佐美十一

36世帯主

中川区外新町

四丁目

五三番地

一一、一~

一一、二一

金 三〇万円

122

宇佐美正子

34   妻

三三、四~

一一、二一

金 三〇万円

123

宇佐美厚美

12 長女

三四、六~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

結膜炎

124

宇佐美幸子

9 二女

三八、一~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

咽喉頭炎

125

宇佐美善三郎

養父

三、四~

九、二七

金 三〇万円

慢性気管支炎、

慢性肝炎

126

宇佐美志やう

60 養母

三、四~

四一、一一~

一一、二一

金 三〇万円

127

32

笠原正照

52 世帯主

中川区外新町

四丁目

五三番地

三四、八~

九、二七

金 三〇万円

128

笠原鶴子

41   妻

三四、八~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉炎、

ジフテリア

129

33

宇佐美金義

67 世帯主

中川区外新町

四丁目

五四番地

T三、一〇~

九、二七

金 三〇万円

狭心症

130

宇佐美とう

57   妻

一三、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉炎

131

宇佐美千恵子

25 三女

二一、一一~

一一、二一

金 三〇万円

132

34

鬼頭清助

46 世帯主

中川区外新町

四丁目

五四番地

T一三、一二~

九、二七

金 三〇万円

インフルエンザ症

133

鬼頭秋子

38   妻

二九、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

インフルエンザ症

134

鬼頭敬子

16 長女

三一、二~

一一、一二

金 三〇万円

135

鬼頭幸恵

10 二女

三六、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

136

鬼頭克代

8 三女

三八、七~

一一、二一

金 三〇万円

137

山盛実

58 世帯主

二〇、六~

九、二七

金 三〇万円

138

山盛重子

36   妻

二〇、六~

一一、二一

金 三〇万円

糖尿病

139

35

山盛征造

27 二男

中川区外新町

四丁目

五〇番地

二〇、六~四五、七

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支炎

140

山盛みち子

24 二女

二二、一一~四六、六

一一、二一

金 三〇万円

141

山盛賢司

22 三男

二四、一一~

一一、二一

金 三〇万円

142

山盛均

20 四男

二六、一二~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

143

山盛せつ

二〇、六~四六、四

一一、二一

金 三〇万円

144

36

清水豊

60 世帯主

中川区外新町

四丁目

五〇番地

二〇、九~

九、二七

金 三〇万円

145

清水富美子

52   妻

二〇、二~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉炎、

結膜炎

146

清水武

27 長男

二〇、二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

結膜炎

147

清水さち子

22 二女

二四、六~

一一、二一

金 三〇万円

148

37

佐藤春子

36 世帯主

中川区外新町

四丁目

五〇番地

一七、~

九、二七

金 三〇万円

急性胃炎

149

佐藤節子

23 二女

二四、二~

一一、二一

金 三〇万円

150

佐藤明美

20 三女

二六、八~

一一、二一

金 三〇万円

151

38

戸松七五三一

62 世帯主

中川区外新町

四丁目

五六番地

三二、四~

九、二七

金 三〇万円

急性上気道炎、

高血圧症

152

戸松千代子

57   妻

三二、四~

一一、二一

金 三〇万円

153

39

宇佐美弘

43 世帯主

中川区外新町

四丁目

五二番地

二九、一~

九、二七

金 三〇万円

154

宇佐美やえ子

40   妻

二九、一~

一一、二一

金 三〇万円

155

字佐美佳代

15 長女

三一、一一~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

急性扁桃炎

156

宇佐美巌

12 長男

三四、六~

一一、二一

金 三〇万円

感冒

157

宇佐美すえの

64   母

二、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

158

40

久田真一

58 世帯主

中川区外新町

四丁目

六〇番地

一三、四~

九、二七

金 三〇万円

159

久田隆子

30 二女

一六、一一~四六、七

一一、二一

金 三〇万円

160

久田幌

27 長男

一九、四

一一、二一

金 三〇万円

161

久田久美子

24 三女

二三、二~四六、一一

一一、二一

金 三〇万円

162

久田裕二

23 三男

二四、一一~

一一、二一

金 三〇万円

163

久田峯与

20 四男

二六、九~

一一、二一

金 三〇万円

164

41

山本一夫

50 世帯主

中川区外新町

三丁目

五番地

三二、一〇~

九、二七

金 三〇万円

165

山本志げ子

49   妻

三二、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

感冒

166

山本広志

23 長男

三二、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

167

42

磯部幹雄

47 世帯主

中川区外新町

三丁目

五番地

T一三、一二~

九、四七

金 三〇万円

感冒、

気管支喘息

168

磯部つるえ

41   妻

二八、四~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

169

磯部栄

16 長女

三〇、四~

一一、二一

金 三〇万円

170

磯部智枝

14 二女

三二、五~

一一、二一

金 三〇万円

171

磯部好作

11 長男

三六、一~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

172

磯部なせ

M三〇、一~四三、三

一一、二一

金 三〇万円

173

43

浅井銕次郎

77 世帯主

中川区外新町

三丁目

五番地

一三、五~

九、二七

金 三〇万円

腰部神経痛

174

浅井と免

80   妻

一三、三~

一一、二一

金 三〇万円

175

44

宇佐美武雄

40 世帯主

中川区外新町

三丁目

五番地

二一、四~

九、二七

金 三〇万円

176

宇佐美資子

34   妻

T一二、三~

一一、二一

金 三〇万円

177

45

宇佐美賢次

53 世帯主

中川区外新町

三丁目

七番地

一九、一一~

九、二七

金 三〇万円

178

宇佐美笑子

49   妻

T一二、三~

一一、二一

金 三〇万円

慢性結膜炎

179

宇佐美知之

25 長男

二一、七~

一一、二一

金 三〇万円

180

宇佐美明

23 二男

二三、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

181

宇佐美仁

19 三男

二七、六~

一一、二一

金 三〇万円

182

宇佐美了

17 四男

二九、八~

一一、二一

金 三〇万円

結膜炎、

パラトクコーマ

183

宇佐美え

72 養母

T九、一一~

一一、二一

金 三〇万円

不整脈

184

貴船一夫

43 世帯主

三二、八~四三、一一

四三、一一~

九、二七

金 三〇万円

気管支炎

185

46

貴船笑子

42   妻

中川区外新町

三丁目

八番地

(同町

三丁目

一九番地)

三二、八~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

低血圧症

186

貴船誠

20 長男

三二、八~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

187

貴船みゆき

14 長女

三二、一二~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

188

貴船修

12 二男

三三、二~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

189

47

野口正夫

53 世帯主

中川区外新町

四丁目

五六番地

二四、八~

一一、二一

金 三〇万円

190

野口フサ

49   妻

二四、八~

一一、二一

金 三〇万円

191

野口正昭

23 長男

二四、八~

一一、二一

金 三〇万円

192

48

藤田な

61 世帯主

中川区外新町

四丁目

六一番地

二八、九~

一一、二一

金 三〇万円

193

藤田喬

39 長男

二九、二~

一一、二一

金 三〇万円

194

藤田とよ子

37 長男の妻

三三、一一~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

195

藤田文子

23 四女

二八、九~四三、一二

一一、二一

金 三〇万円

196

藤田博美

12 長男の長女

三四、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

197

藤田直美

9 同 二女

三七、一二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

198

49

法嶋真一

31 世帯主

中川区外新町

四丁目

五九番地

三六、一一~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支喘息

199

法嶋鉄子

36   妻

三六、一一~

一一、二一

金 三〇万円

気管支喘息

200

法嶋真弓

12 長女

三六、一一~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支喘息

201

法嶋伸雄

8 長男

三八、一二~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支喘息、

角膜炎

202

50

小沢得郎

40 世帯主

中川区外新町

四丁目

五九番地

三八、三~

一一、二一

金 三〇万円

203

小沢典子

33   妻

三八、三~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

204

小沢一寿

8 長男

三八、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支炎

205

51

伊藤正

44 世帯主

中川区外新町

四丁目

五三番地

三三、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支炎

206

伊藤スミ子

36   妻

三三、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

207

伊藤佳高

12 長男

二四、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

208

伊藤彰浩

8 二男

三六、四~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

209

52

森岡四郎

69 世帯主

中川区外新町

四丁目

五三番地

三三、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

210

森岡ヒデ

59   妻

三三、七~

一一、二一

金 三〇万円

211

森岡照子

31 二女

三三、七~四三、一

一一、二一

金 三〇万円

212

53

宇佐美捨秋

45 世帯主

中川区外新町

四丁目

五九番地

T一四、一二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

213

宇佐美恵美子

40   妻

二七、一〇~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

214

宇佐美はる

79   母

M二七、七~

一一、二一

金 三〇万円

結膜炎、

ノイローゼ

215

宇佐美恵子

8 養女

三九、三~

一一、二一

金 三〇万円

感冒

216

54

山田兼光

50 世帯主

中川区外新町

四丁目

六二番地

二五、二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

気管支喘息、

角膜炎

217

山田喜久子

42   妻

二五、二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

気管支喘息、

角膜炎

218

山田雪子

24 長女

二五、二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

気管支喘息、

角膜炎

219

山田武司

22 長男

二五、二~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

気管支喘息、

角膜炎

220

55

前田慶治

66 世帯主

中川区外新町

四丁目

四五番地

一七、七~

一一、二一

金 三〇万円

角膜炎

221

前田志子

59   妻

一七、七~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎

222

56

山内梅子

54 世帯主

中川区外新町

四丁目

四四番地

一九、七~

一一、二一

金 三〇万円

気管支炎、

咽喉頭炎

223

57

伴修造

39 世帯主

中川区外新町

四丁目

四四番地

三七、一一~

一一、二一

金 三〇万円

感冒

224

伴京子

33   妻

三七、一二~

一一、二一

金 三〇万円

225

伴英子

8 長女

三八、九~

一一、二一

金 三〇万円

咽喉頭炎

226

58

八神武一

48 世帯主

中川区外新町

四丁目

四五番地

二四、八~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

咽喉頭炎

227

八神ほずみ

38   妻

二七、四~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

咽喉頭炎

228

八神智江子

19 長女

二七、三~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

咽喉頭炎

229

八神直子

18 二女

二九、一~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

咽喉頭炎

230

八神武子

15 三女

三一、一一~

一一、二一

金 三〇万円

感冒、

気管支炎、

咽喉頭炎

231

59

後藤俊浩

50 世帯主

中川区外新町

三丁目

一番地

二九、一〇~

九、二七

金 一〇万円

232

後藤きみ江

46   妻

二九、一〇~

一一、二一

金 一〇万円

慢性結膜

炎及霞粒腫

233

後藤順子

18 長女

二九、一〇~

一一、二一

金 一〇万円

234

後藤敏江

15 二女

三一、八~

一一、二一

金 一〇万円

235

60

横山重雄

48 世帯主

中川区外新町

三丁目

一番地

三二、三~

九、二七

金 一〇万円

気管支喘息

236

横山きよ子

43   妻

二〇、九~

一一、二一

金 一〇万円

気管支炎、

胃下垂、

低酸症

237

横山いく子

24 長女

二三、三~

一一、二一

金 一〇万円

感冒、

気管支炎、

咽喉頭炎、

角膜炎

238

横山錠治

20 長男

二六、一一~四三、三

一一、二一

金 一〇万円

感冒、

気管支炎

239

横山登

69   父

二〇、九~

一一、二一

金 一〇万円

感冒

240

61

佐藤与曾次郎

61 世帯主

中川区外新町

三丁目

三六番地

M四三、三~

九、二七

金 一〇万円

急性トラコーマ

241

佐藤きみ

57   妻

一四、一一~

一一、二一

金 一〇万円

242

佐藤正幸

29 二男

二八、一一~

一一、二一

金 一〇万円

243

佐藤定夫

26 三男

二〇、六~

一一、二一

金 一〇万円

244

佐藤秀雄

23 四男

二三、九~

一一、二一

金 一〇万円

245

佐藤信行

21 五男

二六、二~

一一、二一

金 一〇万円

246

62

新海富夫

55 世帯主

中川区外新町

三丁目

一番地

(同町

三丁目

一八番地)

三二、八~

九、二七

金 一〇万円

感冒

247

新海トモエ

50   妻

三二、八~

一一、二一

金 一〇万円

248

新海健次

23 二男

三二、八~

一一、二一

金 一〇万円

249

新海幸子

20 長女

三二、八~

一一、二一

金 一〇万円

250

63

宇佐美健重

60 世帯主

中川区外新町

二丁目

九九番地

(同区八劔町

一丁目

八番地)

一二、三~

九、二七

金 一〇万円

251

宇佐美きぬ子

54   妻

一二、三~

一一、二一

金 一〇万円

252

字佐美健一

32 長男

一二、三~

一一、二一

金 一〇万円

253

宇佐美静枝

24 二女

二二、七~四三、一一

一一、二一

金 一〇万円

254

宇佐美夏枝

22 三女

二四、 九~

一一、二一

金 一〇万円

流行性感冒

255

64

大矢捨次郎

55 世帯主

中川区八劔町

四丁目

四九番地

T 五、 三~

九、二七

金 一〇万円

胃及び

十二指腸潰瘍

256

大矢千恵子

54   妻

一七、 二~

一一、二一

金 一〇万円

257

大矢逸男

25 長男

二一、 六~

一一、二一

金 一〇万円

258

大矢敏男

24 二男

二二、一〇~四五、 三

四三、 九~

一一、二一

金 一〇万円

259

大矢みさ子

22 四女

二三、一〇~

一一、二一

金 一〇万円

260

65

佐藤章

48 世帯主

中川区外新町

三丁目

一九番地

二一、  ~

九、二七

金 一〇万円

感冒

261

佐藤則子

47   妻

二一、  ~

一一、二一

金 一〇万円

262

佐藤輝子

21 長女

二五、 八~

一一、二一

金 一〇万円

263

佐藤一明

20 長男

二七、 一~

一一、二一

金 一〇万円

264

佐藤きよ子

16 二女

三〇、 六~

一一、二一

金 一〇万円

265

67

岸江すゞえ

56 世帯主

中川区外新町

三丁目

一番地

一八、一〇~

一一、二一

金 一〇万円

266

岸江美鈴

20 四女

二六、一一~

一一、二一

金 一〇万円

267

68

森下靖人

35 世帯主

中川区外新町

四丁目

七番地

三九、 二~四一、 二

九、二七

金 七〇万円

268

69

炭田しずえ

0 世帯主

中川区外新町

四丁目

七番地

三五、 三~

九、二七

金 七〇万円

269

70

今枝史郎

31 世帯主

中川区外新町

四丁目

七番地

三七、 三~四一、一〇

九、二七

金 七〇万円

感冒

270

71

屋地幸実

33 世帯主

中川区外新町

四丁目

七番地

三七、 八~四一、 六

九、二七

金 七〇万円

坐骨神経痛

271

72

西村正己

34 世帯主

中川区外新町

四丁目

七番地

三六、一一~四二、 八

九、二七

金 七〇万円

急性気管支炎

272

77

西尾信行

31 世帯主

中川区外新町

三丁目

五番地

三七、 七~四四、一〇

九、二七

金 三〇万円

273

79

宇佐美兼市

64 世帯主

中川区外新町

三丁目

五番地

二一、四二~

九、二七

金 三〇万円

274

81

高木優

47 世帯主

中川区外新町

四丁目

二九番地

三二、一〇~四三、一二

九、二七

金 四〇万円

咽喉頭炎、

血液病

275

82

宇佐美てる子

50   妻

中川区外新町

三丁目

二九番地

二一、 六~

九、二七

金 三〇万円

急性上気道炎、

胃炎、

房室伝導障碍症

276

83

大野昇一

47 世帯主

中川区外新町

三丁目

二〇番地

三四、 九~四三、 九

九、二七

金 一〇万円

感冒

277

85

青井清司

45 世帯主

中川区八劔町

三丁目

七八番地の七

三三、 三~四一、一〇

九、二七

金 一〇万円

急性咽頭炎、

喉頭炎

(注) Ⅰ 被害居住地はいずれも名古屋市内である。

Ⅱ 被害居住地欄記載のかつこ内の住所は、本件被害地城内において転居が行なわれた場合の転居前の住所である。右転居の前後でAないしDの区域を異にする場合はN居住期間欄には右原告ら居住地における居住期間をそれぞれ左右に分けて記載してある。

Ⅲ 居住期間欄中Mは明治、Tは大正、その余はいずれも昭和である。

Ⅳ 居住期間欄において終期の記載のないものは現在も居住していることを示す。

Ⅴ 利息起算日は、全て、昭和四四年中の月日である。但し番号80の原告毛利賢一については昭和四七年中のそれである。

別表七 原告らの蒙つた被害

世帯番号

快適な生活に対する被害

健康な生活に対する被害

Ⅰ 被害一般・程度

Ⅱ 被害の内容

Ⅲ 被害一般

Ⅳ 疾病

1

S

洗濯物が汚れる。

部屋の中にほこりが入り、たんすの中が真黒く汚れる。

夏暑くても食事中窓をあけることができない。

ひどいときは家の中でも苦しい。

かぜをひきやすく、のどなどすぐいため病院通いが多い。

福永九州男

急性結膜炎

気管支炎

咽喉頭炎

福永勇

気管支炎

N

激しいときは話声やテレビの音が聞こえない。

夜安眠できない。

V

家具がいたみ、建具などが破損する。

夜中に目をさます。

2

S

洗濯物が汚れる。

押入の中やタンスの中の衣類まで変色して汚れる。

かぜをひくとなかなかなおらずせきがでる。

坂内忠男

咽喉頭炎

坂内まつ江

気管支炎

N

激しいときは話し声やテレビの音が聞こえない。

夜安眠できない。

V

多少の振動は常にあり、ときに大きな振動がある。

V

家具がいたみ、建具などが破損する。夜中に目をさます。

3

S

降りつもるほどで煙につつまれているようである。

S

洗濯物が汚れる。

たんすの中も汚れる。

鉄骨の建物はさびが早くぼろぼろとなる。

悪臭(鉄の焼けるような臭い)がする。

製菓工場を経営しているので煙を避けるため工場の位置を移動した。

かぜをひきやすくなおりにくい。

眼がしよぼしよぼする。

宇佐美忍

急性上気道炎

宇佐美あけみ

気管支炎

扁桃腺炎

宇佐美忍

気管支炎

扁桃腺炎

N

電気炉からのスパーク音。

おおいかぶさるような不快音。

N

十分な睡眠がとれない。

その他

従業員がやめていつた。

V

家具がいたみ建具などが破損する。

夜中に目をさます。

4

S

といにばいじんが非常によくたまる。

S

鉄(ブリキなど)のくさり方が早い。

窓をあけているとイライラして頭痛激しく疲れやすい。

物忘れがひどい。

土井雅喜はかぜをひきやすい。

土井雅喜

喘息

N

防音壁の設置後ややよくなつた。

N

窓をあけていると電話、テレビの声が聞きにくい。

庭で話すときは大声を張り上げないと聞きとれない。

夜眠れない。

V

家具が間断なくビリビリふるえている。

一番接近している部屋では腰かけていると小さい地震と区別のつかない振動が常にある。

仏壇の供えものがひつくりかえつたことがある。

仏壇内のおぼくさん(御飯を入れた供え物)がひつくりかえつていることがある。

V

屋根瓦のずれがひどい。

ノロ爆発

1昭和三六年一二月一六日。

工場の窓ガラスが一〇〇枚近く割れ尻餅をつくほどの衝撃を受けた。

2昭和四三年三月二二日。

工場の窓ガラス一二〇枚位と建具一本がこわれた。

5

S

ひどいときは二〇メートル先の家が見えず前の道路を走る車は日中でもライトを要する。

一年のうち八カ月から一〇カ月はばいじんの中で生活している。

S

洗濯物が汚れ、白い物はすぐ変色する。タンスの中の衣類まで汚れ、タタミはすぐ真黒になる。障子はすぐ張り替えないと家の中が暗くなる。

トタンがくさりやすい。

悪臭(ポリ袋を燃したような石油くさい臭い)がする。

宇佐美幸治・宇佐美浩

かぜをひきやすく熱を出し気管支をいためやすい。

宇佐美由春

かぜをひきやすい。

宇佐美久子

せきが出る。

全体として

のどが痛い。

冬期中タンが出る。物忘れが激しくおこりつぽい。夜熟睡できないので疲れる。

宇佐美由春

急性気管支炎、

結膜炎

宇佐美幸治

急性気管支炎

宇佐美浩

急性気管支炎

N

電気炉の音が耳について寝れない夜がよくある。

V

ひどいときは地震のように床もゆれる。

V

戸などの建具がガタガタする。

6

S

一日中もやの中にいる状況である。

S

洗濯物が汚れる。タンス・戸棚の中の物まで汚れる。

季節の変り目に、かぜをひきやすく、のどをすぐいためる。

耳鳴がし、いらいらする。

小園尚雄

上気道炎

咽喉頭炎

結膜炎

小園誠司

咽喉頭炎

気管支炎

結膜炎

角膜炎

N

夜中に何度も目をさまし安眠できない。

V

ガスの上のなべやヤカンが踊り夜中にも起き出して戸の開け具合を見る。

V

建具の建付が悪くなる。

7

S

向いの家がかすみ一〇〇メートル向うの信号機の赤が見えないときもある。

S

タンス・戸棚・ガラス戸などの汚れはひどい。といなどもくさりやすい。

悪臭(ポリ袋か発光スチロールを燃すようないやな臭い)がする。

かぜをひきやすくなおりにくい。

のどをいためやすい。

久田香織

頭痛・ノイローゼ、不眠。

久田直美

不眠。

久田鎰雄

急性気管支炎

久田なか

急性気管支炎

N

ときたま起こる爆発音に驚いて飛び上る。

N

夜安眠できず、一年中睡眠不足である。

V

地震のような大ゆれは月に二、三度。

ガラスがガタガタさわぐ振動は週四、五日。

小さな振動は四六時中。

V

家の傾斜がひどく建具の建付も悪くなりすき間が三〇センチメートル位あいた。

屋根のふきかえをしたのに瓦がといの先までずれてきた。

8

S

洗濯物が汚れ、白い物は変色する。タンスの中の物まで変色し汚れる。トタン板がくさりやすい。

かぜをひきやすく、のどをすぐいためる。

吐き気。頭痛

宇佐美義一

結膜炎

宇佐美 政次郎

結膜炎

宇佐美良一

結膜炎

宇佐美清子

急性結膜炎

結膜炎

宇佐美紀子

結膜炎

N

夜安眠できない。

V

瓦がずれて雨漏りがし、壁が落ちる。

9

S

西風の強いとき、家の中に煙がたちこめる。

S

洗濯物が汚れる。

障子・ガラス・タタミ・家具などが変色し、汚れる。

こまかいばいじんが家の中に浮遊する。

かぜをひきやすく、のどをすぐいためる。

宇佐美ゆき

気管支炎

咽喉頭炎

宇佐美松男

気管支炎

咽喉頭炎

宇佐美勝行

気管支炎

咽喉頭炎

N、V

深夜(一〇時以後)特にひどくガラス戸や障子がビリビリする。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

壁が落ちる。

10

S

風のない日はばいじんにすつぽりかぶさつた状態。近くの家まで見えない。

S

タンス・押入の中の衣類まで汚れる。

金属類がくさりやすい。

悪臭がする。

かぜをひきやすくなおりにくい。

のどや目をいためやすい。

夜眠れず頭痛がする。

奥田美加子

急性気管支炎

N

昭和四二年六月、集じん機の騒音はジェット機の飛ぶようなゴーという音。

N

夜安眠できない。

V

家全体が地震のような状態。

V

集じん機が目詰りしたとき家中がゆれる。

11

S

昼も夜同様視程短かい。

S

洗濯物が汚れる。

建物・家具・タタミなどタンスの中までも黒く汚れる。

金属類はくさりやすい。

吐き気。

頭痛。

のどの痛み。

せきが出る。

宇佐美 鉐十郎

急性気管支炎兼

咽頭炎

N

夜安眠できない。

V

建具などがガタガタする。

12

S

夜昼なく視程が短かい。

S

洗濯物が汚れる。

タタミは黒ずみタンスの中の衣類も黒く汚れる。

トタンやといはくさりやすい。

北側・西側の窓をあけることができない。

のどを痛めやすく、タンが多い。

せきが出始めるとなかなか治らない。

宇佐美政義

咽喉頭炎

宇佐美淳史

急性気管支炎

咽喉頭炎

結膜炎

N

夜安眠できない。

V

家中の戸がガタガタする。

13

S

ときには太陽が見えなくなる。

家全体がばいじんの中にある状態。

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類が変色して汚れる。

息苦しくなつて夜目がさめる。

被告側の雨戸は閉めている。

悪臭がする。

N

夜安眠できない。

V

家全体をゆするような状態。

V

戸がガタガタする。

ひどいときは夜安眠できない。

瓦がずれ壁にひびが入る。

家具の建付が悪くなる。

14

S

洗濯物が汚れる。

タタミなど家具も汚れる。

植木が枯れる。

トタン・といがくさりやすい。

夜息苦しいときがある。

かぜをひきやすく、すぐのどを痛める。

佐藤隆史

気管支炎

佐藤政史

結膜炎

N

夜安眠できない。

V

夜中に建具がビリビリする。

15

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中や戸棚の中の物も変色して汚れ、障子がすぐ黒くなる。

かぜをひくとすぐ気管支を痛める。

大橋峯子

気管支炎

大橋洋子

結膜炎

大橋喜美

気管支炎

大橋陸平

気管支炎

結膜炎

N

夜安眠できない。

V

建具などの建付が悪くなる。

16

S

洗濯物が汚れる。

金属類がくさりやすい。

電気器具の差込みなどがゆるむ。

夏の夜勤など昼間窓をあけて寝られず、仕事にもさしつかえる。

かぜをひきやすく、扁桃腺がはれる。

篠塚孝夫

急性咽頭炎

咽喉頭炎

篠塚照子

気管支喘息

篠塚泰伸

気管支喘息

N

深夜睡眠中目がさめ、寝つきも悪い。

V

地震のような状態。

V

建具・壁・天井板床板にもすき間ができ、瓦もずれて雨漏りする。

17

S

夏場がひどい。

S

洗濯物が汚れる。

家財道具などが汚れる。

金属類はくさりやすい。

悪臭がする。

かぜをひきやすくなおりにくい。

せきがよく出てのどが痛くなる。

睡眠不足で頭痛全身けん怠。

悪臭のため吐き気がする。

林幹夫

気管支炎

林誠

重症腺奪性

扁桃腺炎

気管支炎

N

昭和四二年六月の集じん機(ジェット機のような音)。

同年七月ころの酸素工場酸素液化機

(ズドン・ズドンという大砲のような音)、昭和四〇年八月のドロップハンマーの大音響など。

N

深夜睡眠中目がさめ、寝つきも悪い。

V

床下からつき上げられるような振動でよく目がさめる。

V

ドロップハンマーによる振動のため仏壇の位牌や神棚の花瓶がころがり落ちた。

18

S

風向によりときどき来るがたまにしか来ない。

S

といがくさりやすい。

かぜをひきやすい。

清水角造

涙とせき。

気管支を痛めやすい。

稲森秀子

慢性気管支炎

N、V

非常に気になる。昭和四四年から四五年にかけて防音壁ができてからは多少よくなつた。

N

夜安眠できない。

V

戸障子の建付が悪くなり、瓦がずれる。

建具がガタガタする。

19

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類タタミなどが汚れる。

トタン屋根、といなどがくさりやすい。

煙の出る側の雨戸はいつも閉めておく。

いつも息苦しく、ときどきせきが出る。

毛利賢一

上気道感染症

毛利より子

咽喉頭炎

気管支炎

毛利正雄

気管支炎

毛利宮子

気管支炎

N

夜安眠できない。

V

瓦・壁・戸障子などの建付が悪くなり大きなところで二センチメートルのひずみができた。

20

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類も汚れる。タタミの上がすぐざらざらする。

かぜをひくとのどが痛くせきがなかなかとまらない。

タンが出る。

服部隆

気管支炎

咽喉頭炎

服部美津子

気管支炎

N

夜安眠できない。

V

夜昼なくガラス戸などがガタガタする。

21

S

五メートル先がかすんで見えないくらい視程が短かい。

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類も変色し汚れる。

トタンがくさりやすい。

吐き気をもよおす悪臭がする。

せきが出るとのどがひゆうひゆういつて息苦しい。

息切れ。

頭重

N

夜安眠できない。

V

夜昼なくガラス戸などがガタガタする。

22

S

洗濯物が汚れる。

家の中にほこりが入つてくるので窓をあけられない。

タタミ、建具が汚れる。

かぜをひきやすく扁桃腺がはれ、特に子供は熱を出しやすい。

原薫

気管支炎

原房子

気管支炎

結膜炎

原清子

咽喉頭炎

原茂樹

気管支炎

角膜炎

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなり壁が落ちる。

23

S

タンスの中の衣類が変色し汚れる。

タタミ・建具・家具も汚れる。

金属類はくさりやすい。

かぜをひきやすく、のど・鼻の痛み、頭痛。

タンが出る。

N

夜寝つきが悪い。

安眠できない。

V

タタミ・建具・家具はいたみが早く動かなくなる。

瓦がずれて雨漏りし、壁にすきまができる。

24

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類が変色して汚れる。

のどをいためやすく、かぜをひくと気管支喘息のように苦しい状態になる。

イライラ

N

夜寝つきが悪く、

安眠できない。

V

昼はがまんするが夜はがまんできない。

V

窓などときどきビリビリする。

タタミ、建具、家具などはいたみが早い。

25

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類も汚れる。

かぜをひきやすく、なおりにくい。

のどがいつも痛い。

N

夜寝つきが悪い。

安眠できない。

V

窓などときどきビリビリする。

タタミ、建具、家具などはいたみが早い。

26

S

昼も夜のようにうす暗い。

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類が変色して汚れる。

金属類(新車の自動車)がすぐ腐蝕した。

かぜをひくとのど元がしまるようになる。

イライラ不快

坂井田一義

結膜炎

坂井田明典

結膜炎

N

夜寝つきが悪い。

安眠できない。

V

窓などときどきビリビリする。

タタミ、建具、家具などはいたみが早い。

27

S

洗濯物が汚れる。

タタミがざらざらする。

植木が枯れる。

といがくさりやすい。

息苦しく窓があけられない。

かぜをひきやすく、なおりにくい。

せきが出る。

木原利敦

気管支炎

結膜炎

角膜炎

木原恵子

気管支炎

N

夜安眠できない。

V

夜中に建具がビリビリする。

建具の建付が悪くなる。

28

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中や押入の中の衣類、ふとんが変色し汚れる。

タタミ、ジュータン、カーペットも汚れる。

金属類がくさりやすい。

息苦しく、黒つぽいタンが出る。

高田勇一

結膜炎

高田紀子

咽喉頭炎

N

夜目をさまし安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

29

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類が変色し汚れる。

かぜをひいたときのどが痛い。

頭痛。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなり、壁が落ちる。

30

S

北風のときは煙がまともに来る。

S

洗濯物が汚れるとガラス、建具なども汚れる。

植木が枯れる。

子供はかぜをひきやすく、のどを痛めやすい。

宇佐美七男

気管支炎

宇佐美昭子

気管支炎

宇佐美裕子

小児気管支喘息

N、V

夜になるとかなり気になるほど伝わつてくる。

N

夏には夜眠れない。

V

ガラス戸が振動する。

31

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類やタタミも汚れる。

トタン板やとい、アルミサッシなどがくさりやすい。

悪臭(プラスチックを燃したような臭い)のため窓があけられない。

かぜをひきやすく、のどを痛める。

せきこむことがある。

宇佐美厚美

鼻の粘膜をいためる。

宇佐美厚美

結膜炎

宇佐美幸子

咽喉頭炎

気管支炎

宇佐美善三郎

慢性気管支炎

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

32

S

家の中が汚れつぽく、悪臭がたちこめる。

かぜもひいていないのにせきこむ。

のどをいためやすい。

笠原鶴子

咽喉炎

N、V

夜間には気になるほど伝わつてくる。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

33

S

北風のときに煙が来る。

S

洗濯物が汚れる。

瓦や樹木の色が悪く、家具などは変色して汚れる。

のどかぜをひきやすい。

宇佐美とう

咽喉頭炎

N、V

夜になるとかなり気になるほど伝わつてくる。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

34

S

タンスの中の衣類が変色して汚れる。

家の中がほこりつぽい。

かぜをひき、せきが出始めるとなおりにくい。

タンが出る。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

35

S

北西の風のときばいじん被害が著しい。

S

洗濯物が汚れる。

トタン、といがくさりやすい。

息苦しいときもある。

仕事にも差つかえる。

のどの痛むときが多い。

山盛征逸

気管支炎

山盛均

咽喉頭炎

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

36

S

洗濯物が汚れる。

トタン・といがくさりやすい。

のどが痛む。

清水喜美子

結膜炎

咽喉炎

清水武

結膜炎

気管支炎

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

37

S

窓やタタミなどが汚れる。

佐藤春子

喘息

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

38

S

洗濯物が汚れる。

家具や衣類が変色して汚れる。

といなど金属類がくさりやすい。

戸松

七五三一急性

上気道炎

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

39

S

洗濯物が汚れる。

タタミも汚れる。

トタン・といなどがくさりやすい。

かぜをひくとのどが痛く、せきが出る。

普通のときでものどが強く刺激される。

宇佐美佳代

気管支炎

急性扁桃炎

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

40

S

洗濯物が汚れる。

建物のまわり、窓の木枠などが汚れる。

といがくさりやすい。

朝晩少し冷えるとすぐのどが痛くなり、なかなかなおらない。

N

真夜中でも電気炉クレーンの音が耳につく。

夜中に目がさめ、寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

41

S

洗濯物が汚れる。

とい、自動車のメッキ部分がくさりやすい。

煙の多い日は窓をあけることができない。

のどの痛み。

N

夜寝つかれないことがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

42

S

金属類がくさりやすく、自転車商なのでメツキの車輪ハンドル部分の腐蝕がひどく、営業上の(陳列もできず)売り物にならない。

かぜをひきやすく、

のどをすぐ痛める。

磯部幹雄

気管支喘息

磯部つるえ

咽喉頭炎

磯部好作

咽喉頭炎

N

夜寝つかれないことがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

43

S

シーツ・タタミ・服などが汚れる。

頭痛

N

夜中には非常に気になる。

N

夜寝つかれないことがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

44

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の紙袋などが変色して汚れる。

煙の多いときは窓をあけておくことができない。

かぜをひきやすい。

N

夜寝つかれないことがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

45

S

風向により外が見えない位になる。

S

洗濯物が汚れる。

家屋および家の中も汚れる。

金属類がくさりやすい。

ときどき悪臭がする。

家中の者が次々と医者に通いづめ。

宇佐美笑子

慢性結膜炎

結膜炎

宇佐美了

パラトラコーマ

結膜炎

N

夜苦になることがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

46

S

煙は夜の方が昼よりひどく、附近が見えないことも月に二、三回あつた。

S

洗濯物が汚れる。

家の中、タンスの中の衣類が変色して汚れる。

寝ていても息苦しく目がさめる。

悪臭がする。

かぜをひきやすく、子供達はよくのどを痛める。

貴船一夫

気管支炎

貴船笑子

気管支炎

貴船誠

咽喉頭炎

貴船みゆき

咽喉頭炎

貴船修

気管支炎

N

夜寝つかれないことがしばしばある。寝ていて目がさめる。

V

戸がガタガタ音をたてる。  寝ていて目がさめる。

47

S

北風のとき煙の中で生活する状態

S

洗濯物が汚れる。

家の中まで汚れる。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

48

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類や障子など家具、建具が変色して汚れる。

夏でも窓をあけはなつことができない。

かぜをひきやすく、気管支をすぐいためる。

朝起きたときせきが出る。

タンが出る。

藤田とよ子

咽喉頭炎

藤田博美

気管支炎

藤田直美

気管支炎

N

夜中に目がさめ、寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

49

S

洗濯物が汚れる。家の中がすすで汚れる。

といがくさりやすい。

北側の戸はあけられない。

気管支をいためやすく、タンが絶えず出る。

子供はときどき急に声が出なくなる。

法嶋真一

気管支喘息

法嶋鉄子

気管支喘息

法嶋真弓

気管支喘息

法嶋伸雄

気管支喘息

角膜炎

N

夜中に目がさめ寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

50

S

洗濯物が汚れる。

タタミ、家具などが汚れ、タタミも入れかえた。

トタン・とい・テレビのアンテナなどくさりやすい。

小沢典子

気管支炎

扁桃腺炎

小沢一寿

気管支炎

扁桃腺炎

N

夜中に目がさめ寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

51

S

冬に煙が多くくる。

S

洗濯物が汚れる。

建物のまわり、家財道具タンスの中の衣類まで汚れる。

テレビのアンテナがくさりやすい。

子供が気管支をいためやすい。

のどの痛み。

伊藤正

気管支炎

伊藤スミ子

気管支炎

伊藤佳高

気管支炎

伊藤彰浩

気管支炎

N

年中伝わつてくる。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

52

S

洗濯物が汚れる。

テレビのアンテナがくさりやすい。

風のある日は戸をあけることができない。

せきが出る。

N

夜安眠できない。

V

建具の建付が悪くなる。

戸がガタガタ音をたてる。

夜安眠できない。

53

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中や戸棚が汚れる。

テレビのアンテナ、トタン、自転車、自動車、といなどがくさりやすい。

北側の窓を開くことができず一日中暗く、不衛生である。

かぜをひきやすく、なおりにくい。

子供は気管支やのどを痛める。目を痛める。

夜間安眠できず、体がいつもだるい。

宇佐美捨秋

気管支炎

宇佐美恵美子

気管支炎

宇佐美はる

結膜炎

N

夜中に目がさめ寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

54

S

洗濯物が汚れる。

建物・造作・家具などが汚れる。

植木が枯れる。

目・のどがすぐ悪くなり、

気管支がぜいぜいいう。

山田兼光

気管支炎

気管支喘息

角膜炎

山田喜久子

気管支炎

気管支喘息

角膜炎

山田雪子

気管支炎

気管支喘息

角膜炎

山田武司

気管支炎

気管支喘息

角膜炎

N

夜中に目がさめ、寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

55

S

家具・衣類などが変色し汚れる。

目の痛み

前田慶治

角膜炎

前田志子

気管支炎

N

昼夜耳にこびりついてはなれない。

V

ガラス戸や家具のガラスがビリビリし、建具の建付が悪くなる。

56

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中まで汚れる。

のどを痛め、せきが出る。

内山梅子

気管支炎

咽喉頭炎

N

昼夜耳にこびりついてはなれない。

V

ガラス戸や家具のガラスがビリビリし、建具の建付が悪くなる。

57

S

一日中煙がたちこめる。

S

洗濯物が汚れる。

タタミ、タンスの中の衣類も変色して汚れる。

といなどがくさりやすい。悪臭がする。

かぜをひきやすく、のどが痛くなる。

子供(英子)は特に

扁桃腺をはらして熱を出し、

せきをし、目やにを出す。

伴英子

咽喉頭炎

結膜炎

N

昼夜耳にこびりついてはなれない。

V

ガラス戸や茶タンスのガラスがビリビリ絶えず振動しガラス戸が全部ぴつたりしまらずすき間ができる。

58

S

洗濯物が汚れる。

タタミ、タンスの中の衣類が変色しやすく汚れる。

トタンがくさりやすい。

外にながく出ているとのどが痛くなる。

八神武一

咽喉頭炎

八神ほずみ

咽喉頭炎

八神智江子

咽喉頭炎

八神直子

咽喉頭炎

八神武子

咽喉頭炎

N

昼夜耳にこびりついてはなれない。

V

ガラス戸や家具のガラスがビリビリし、建具の建付が悪くなる。

59

S

煙は夜中が特にひどい。

S

洗濯物が汚れる。

ほこりがひどく、トタンがくさりやすい。

かぜをひきやすい。

後藤きみ江

慢性結膜炎

V

夜建具などがガタガタする。

60

S

洗濯物が汚れる。

家財道具がいたみ汚れる。

かぜをひきやすい。

横山重雄

気管支喘息

横山きよ子

気管支炎

横山いく子

気管支炎

咽喉頭炎

角膜炎

横山錠治

気管支炎

V

夜建具などがガタガタする。

61

S

西北西の風向のときに煙が多く、ひどいときは前の家がかすむ。

S

洗濯物が汚れる。

夏でも戸をあけて寝ることができない。

かぜをひきやすい。

目を患う。

佐藤与曾次郎

急性トラコーマ

V

夜中には気になる。

V

夜障子などがガタガタする。

62

S

ほこりがひどく、トタンやといなどがくさりやすい。

かぜをひきやすく、のどが痛い。

V

夜建具などがガタガタする。

63

S

特にひどいのは一〇月から四月にかけてで、ひどいときはもやがかかつたようになる。

S

二階の窓の手すりやテレビのアンテナ、といなどの金属類がくさりやすい。

悪臭(鉄を焼いたような臭い)がする。

かぜをひきやすい。

せき、タンが出る。

のどの痛み。

V

体にこたえるほどのものはないが気になる。

V

夜建具などがガタガタする。

64

S

秋から春にかけて北風のときまともに煙が来て、附近がうすぼんやりして見にくい。

S

煙が下をはつているときは悪臭がある。

植木も元気がない。

かぜをひきやすく、のどが痛く、タンが出る。

目の痛み。

V

一日中あり、地震と思うことがあつた。

V

ときどき建具がガタガタと音をたてて揺れる。

夜ゆつくり眠れない。

65

S

西風のとき煙が来て近くがうすぼんやりとして見にくい。

S

洗濯物が汚れる。

タンスの中の衣類などが変色して汚れる。

悪臭がする。

かぜをひきやすく、のどが苦しくタンが出る。

目の痛み。

V

瓦がずれて雨漏りする。

67

S

洗濯物が汚れる。

家財道具がいたみ汚れる。

かぜをひくとせきが出るようになつた。

のどの痛み。

V

夜家具などがガタガタする。

68

S

洗濯物が汚れる。

押入の中やタンスの中の衣類まで変色して汚れる。

真夏でも戸を開け放つことができない。

のどが痛む。

森下靖人

気管支炎

N

激しいときは話し声やテレビの音が聞こえない。

夜安眠できない。

V

家具がいたむ。

69

S

洗濯物が汚れる。

押入の中まで黒くなりふとんなども汚れる。

雨どいがくさりやすい。

せきが出るようになり頭痛がする。

N

激しいときは話し声やテレビの音が聞こえない。

夜安眠できない。

V

多少の振動は常にあり、ときどき大きな振動がある。

V

ときどき夜中など目をさますことがある。

窓ガラスなどが破損する。

70

S

洗濯物が汚れる。

室内はいつもほこりつぽくて家具の中、着物などもうす黒く汚れる。

真夏でも戸を開け放つことができない。

かぜをひきやすく、すぐのどが痛み、子供は高熱を出し、せきがひどい。

黒つぽいタンが出ていつも鼻がつまりかぜの状態

N

ときに大きな音がする。

N

ときに大きな音で驚いて外に出る。

寝ていて目をさます。

V

多少の振動は常にあり、ときに大きな振動がある。

V

家具がいたみ、建具などが破損する。

夜中に目をさます。

71

S、N

非常にひどい。

S

洗濯物が汚れる。

室の中はいつもほこりつぽくタンスの中まで入り、真夏でも窓を開け放つことができない。

悪臭で吐き気がするようになつたり気管がはれ、息が苦しくなる。

N、V

激しいときは、夜二、三〇分おきに起きる。

(激しい音や振動で夜は、二、三〇分おきに目がさめる。)

72

S

洗濯物や家具が汚れる。

押入やタンスの中の衣類まで変色して汚れる。

真夏でも戸を開け放つことができない。

かぜ、気管支炎などにかかりやすい。

西村正己

急性気管支炎

気管支炎

N

激しいときは話し声やテレビの音が聞こえない。

夜安眠できない。

V

地震と感ちがいすることがたびたびあつた。

V

家具がいたみ建具などが破損する。

夜中に目をさます。

その他

テレビのうつりが非常に悪い。

77

S

洗濯物が汚れる。

家具、建具やタンスの中の衣類まで変色して汚れる。

子供は病院によく通つた。

N

夜中に目がさめ、寝つかれない。

V

ガラス戸のガラスがビリビリする。

79

S

風向により煙が多く来る。

S

タタミ、タンスなど家具が変色し汚れる。

風のひどいときは家中ざらざらする。

気管支をいためやすい。

毎日タンが出てのどが痛い。

N

夜寝つかれないことがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

81

S

洗濯物が汚れる。

タタミ、建具、タンスの中の衣類も汚れる。

自動車やといがくさりやすい。

高木優

咽喉頭炎

N

夜中に大音響がたびたびあつた。

N

夜安眠できない。

V

小さな振動は毎日夜中に大音響とともに振動を伴うことがあつた。

V

瓦がずれて雨漏りがし、建具などの建付が悪くなる。

82

S

洗濯物が汚れる。

家の中がざらざらする。

かぜをひきやすくなおりにくい。

宇佐美てる子

急性上気道炎

N

夜寝つかれないことがある。

V

戸がガタガタ音をたてる。

83

S

洗濯物が汚れる。

家具、建具、タンスの中の衣類まで汚れる。

かぜをひきやすく、風向によりばいじんの多いときは息苦しい。

V

夜建具がガタガタする。

85

S

風の強いときは煙につつまれる。

近所の家が霧のかかつたようになる。

S

洗濯物が汚れる。

金属類がくさりやすい。

悪臭がする。

かぜをひきやすく、なおりにくい。

のどがえがらくなつて痛い。

鼻には黒いススがたまる。

子供の扁桃腺がよくはれる。

目の痛み。

青井清司

急性咽喉頭炎

V

ときたま爆発音がして振動があり、地震かと驚く。

(注) ○Sはばいじん、Nは騒音、Vは震動による各被害を示す。

○ⅠないしⅢ欄において特に氏名を掲げてないものは世帯員全員に共通する被害である。

○Ⅰ、Ⅲ欄において煙とあるのはすべてばいじんを意味する。

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